障がいのある人たちのこと

障がいのある人たちのこと

 ぷかぷかは、代表の高崎が養護学校で働いていたとき、毎日「格闘」していた重い障がいのある子ども達に、どういうわけか惚れ込んでしまった(出会ってしまった)ことがそもそもの始まりです。

 トイレの始末ができなかったり、しょっちゅう逃げ出したりの大変な子ども達でしたが、それでもよぉくつきあってみると、いろいろできないことを超える「人としての魅力」を持っていました。そばにいるだけで心がなごみました。キュンとあたたかな気持ちになりました。毎日が笑いに包まれていました。彼らとそんな日々を過ごすうちに、彼らに惚れ込んでしまったのです。そして彼らとずっと一緒に生きていきたいなぁ、と思うようになったのです。

 養護学校の定年退職を機に、彼らと一緒に生きる場、一緒に働く場「ぷかぷか」を立ち上げました。接客の仕方がわからなくて、講師を招き、講習会を開きました。接客マニュアルというのがあって、その通りにやればうまく接客ができるというのです。でも実際にぷかぷかさんが接客マニュアル通りやると、うまい接客どころか、私にとってはただただ気色悪かったのです。私が惚れ込んだぷかぷかさん達が、自分を押し殺し、マニュアルにあわせればあわせるほど、気色悪かったのです。講習会は一回でやめました。 

 気色悪い接客マニュアルはやめて、自分たちでやることにしました。お客さんに不愉快な思いをさせない、という一点だけ約束して、あとはもうぷかぷかさんにまかせました。「なんだ、ここは接客の仕方も知らないのか」とお客さんが帰ってしまうかも知れません。ですから、リスクほぼ100%ではじめたのです。

 ところが想定外のことが起きました。なんと「ぷかぷかさんが好き!」というお客さんが次々に現れたのです。どこへ行っても接客マニュアル通りの接客に慣れきったお客さんにとっては、ぷかぷかさん達の、決してうまくはないけれど、気持ちのこもった接客に心が洗われるような気持ちになったのだと思います。

 接客マニュアルに合わせない、というのは、社会に合わせない、ということです。障がいのある人たちは社会に合わせないと生きていけない、などといわれる中で、ぷかぷかは社会に合わせないことを選んだのです。そのままのあなたでいいよ、と。

 彼らの自由にふるまう姿は、なにかにつけ息苦しい世の中にあって、ホッと一息つけるような空間を生み出しました。

 接客マニュアルを使わず、彼らが好きなように接客する中で、「ぷかぷかさんが好き!」というファンがどんどん増えてきました。

 ファンの人たちはぷかぷかさんといい出会いをした人たちです。ぷかぷかさんと出会うことで、人は人間としての幅を広げ、豊かになっていきます。
ファンを作ることは、ですから、地域社会をやわらかく耕すことになります。そしてファンが増えることは、地域社会が豊かになることです。ぷかぷかさん達は、地域社会を耕し、地域社会を豊かにする、というとても大事な仕事をやっているのです。
 障がいのある人たちは、あれができないこれができない、社会のお荷物、社会の負担、効率が悪い等々、マイナスの評価が圧倒的に多いのが現状です。でも、ぷかぷかにあっては、彼らは地域社会を耕し、地域社会を豊かにする存在です。障がいのあることが「プラスの価値」を生んでいるのです。

 どうしてこうなるのか。それは彼らとの関係が、一緒に生きる関係、フラットな関係だからです。私は彼らに惚れ込み、彼らと一緒に生きていきたくてぷかぷかを始めました。ですから彼らとの関係はフラットなのです。「支援」という「上から目線」の関係は、私たちはとりません。どこまでも「一緒に生きていく」フラットな関係です。
 私たちが生み出す価値を「1」,ぷかぷかさん達が生み出す価値を「1」とすると、1+1が5になるほどの価値を、気がつくと生み出していました。私たちはぷかぷかさんといっしょにパン屋をやっています。ただそれだけなら「1+1=2」のお店です。ぷかぷかのパン屋にはたくさんのファンがついているというのは、ただパンを買うだけではない、プラスの価値をファンが見つけているからです。ファンを作ることで地域社会を耕し、豊かにしています。そういったことを考えるとぷかぷかでは1+1=5になるほどの価値を生み出しているというわけです。