ぷかぷか日記

もったいない話

 

 障がいのある子どもを持ったお母さんとお話しする機会がありました。子どもは普通級に通っています、

 同じクラスの子どもが、障がいのある子どものふるまいでいろいろ迷惑している、なんとかしてください、と子どもの親から言われることがとても辛いとおっしゃっていました。

 なんとかしてください、といわれても、お母さん一人の手でなんとかできる話でもなく、お母さんは返す言葉もないまま、辛い思いで聞くばかりです。「なんとかしてください」と、この問題をお母さんに丸投げするだけでは、なんの解決にもなりません。

 以前、ぷかぷかに、朝のバス停で横入りしたり、奇声を上げたりする人がいて迷惑している、通勤の時間をずらしてくれないか、と電話が入ったことがあります。目の前で起こっている問題を、自分で向き合うことなく、誰かに任せてしまうという意味で、お母さんに、なんとかしてください、といってきた親と全く同じ発想です。

  朝のバス停で横入りする人がいたり、奇声を上げる人がいて、迷惑だと感じるなら、その場で注意すればすむ話のような気がします。もちろん障がいのある人たちとあまりおつきあいの経験のない方であれば、注意するのも勇気のいることですが…。

 注意すれば、そこで障がいのある人とささやかな「おつきあい」が生まれます。注意した側も、された側も、それぞれの世界がほんのちょっと広がります。今度また横入りするようなことがあれば、そのときはもっと普通に注意できます。この、障がいのある人にも普通に声がかけられる関係が生まれることが大事だと思います。ここからひょっとしたら新しいおつきあいが始まるかも知れません。毎朝、バス停で顔を見かけたら「おはよう!」ってあいさつしたり、「今日も元気?」って言い合えるような関係になればお互い毎日が楽しくなります。休んだ日には「あれ?、今日はどうしたのかな?」って心配したり、「今度機会があれば彼が働いているパン屋に行ってみようかな」なんて思うようになれば、すばらしいことだと思います。

 これをぷかぷかに電話し「通勤時間をずらしてください」という形で問題を丸投げしてしまうと、今書いたような物語は生まれようがありません。自分が豊かになれるチャンスを自分で放棄するようなもので、実にもったいない話だと思います。

 冒頭に書いた「なんとかしてください」と言ってきたお母さんも、「どうやったらその子と気持ちよくおつきあいができるんだろう」って、ちょっとでも考えたら、そこから今まで経験したことのない、いろいろなことが始まります。

 自分たちの子どもと全く違う子どももいるという発見は親の子ども観を大きく広げてくれます。その子たちとどうつきあったらいいんだろう、と考え、悩むことは、人を豊かにします。その子が仲間に入ることで、集団の幅が広がり、集団が豊かになっていきます…

 そういったことを考えていくと、みんなと違う子どもがそこにいることは、そこに関わる人たちの世界を豊かにすることが見えてきます。「なんとかしてください」と、その子の親に言うことは、問題が何も解決しないばかりか、自分たちが豊かになるチャンスを自ら放棄することになり、とてももったいない話だと思います。

 

パンを買いに来て、不思議なパフォーマンスをするお兄さんと出会います。ここからまた新しい物語が始まります。ぷかぷかはこうやって地域社会を耕し、豊かにしています。 

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