ぷかぷか日記

一矢さんの物語

  • 一矢さん
    たまたまYouTubeで、昨年7月の放映されたEテレの一矢さんの映像を見つけました。 www.youtube.com  あのころは一矢さん、頻繁にぷかぷかに来ていて、ぷかぷかに来るとこんないい顔していました。 かずやさんの大声に2階の方から苦情が出ているという話を聞き、「友達大作戦」を展開しよう、とかいろいろやっていました。「一矢さんの物語」と題して、25本もブログを書いています。3ページ目が出ますので、2ページ、1ページと読んでみて下さい。結構なボリュームですが、一矢さんの巡る様々な物語が展開しています。 www.pukapuka.or.jp  ところが肝心な一矢さんが、会議が嫌になったのか、ぷかぷかに来なくなり、なんとなく関係が途切れた感じです。「友達大作戦」も、どんな風に展開していったのかよくわかりません。昨年の段階ではホームページを作って、いろいろ情報を発信する予定でしたが、それも進んでいないみたいですね。せっかく地域で暮らし始めたので、もっともっといろいろ情報を発信して欲しいですね。今日晩ご飯は何食べたとか、大声が出てしまったとか、日々のどうでもいいいろんなことを発信して欲しいです。  「尾野一矢、ここにあり!」というメッセージです。そのメッセージが地域社会を耕します。  8月27日(土)の上映会に来て欲しいですね。最近の様子、みなさんにお知らせして欲しいです。 www.pukapuka.or.jp 参加希望の方はこちら、下記サイトの「チケット情報」をクリックして下さい。 www.facebook.com
  • 「かずやしんぶん読んでぷかぷかまで行ってきましたよ」って、歯医者さん
     かずやさん、歯医者に行ったら「かずやしんぶん読んでぷかぷかまで行ってきましたよ」って、歯医者さんがおっしゃったそうです。ただ夏休みでぷかぷかさんたちには会えなかったけど、場所はわかったので、機会見つけてまた行きます、みたいな話をしたようです。                                 うれしいですね。小さな「かずやしんぶん」が、相模原から横浜まで人を動かしたのですから、もうびっくりです。小さなしんぶんとはいえ、侮れないチカラを持っているのだと思います。  ぷかぷかまできた、というのは多分かずやしんぶんの最後のページに書いたかずやさんとぷかぷかのつながりを読んだからだろうと思います。        これはもうコーヒーカップ、プレゼントせねば、と思いました。「よっしゃ、わかった」と、かずやさん作ってくれるといいのですが、そこがむつかしいところ。でも、なんとか作ってもらいます。    小さな「かずやしんぶん」がこうやってかずやさんを軸に新しい出会いを作り、関係を広げていきます。これからが楽しみです。地域社会が少しずつ変わって変わっていきます。
  • かずやさんの自立生活を、福祉とは違う視点で語る
    2019年8月のぷかぷか上映会の時、こんな感想がありました。  《 4年前に霧ヶ丘に引っ越してきました。毎朝、ぷかぷかのパンを食べています。娘は保育園でもぷかぷかのパンを食べています。この街にぷかぷかのパン屋があることが、この街の価値を何倍にも上げています。映画を見て、それをますます感じました。霧ヶ丘の街が、ぷかぷかが、ますます好きになりました。》 「この街にぷかぷかのパン屋があることが、この街の価値を何倍にも上げています。」 ぷかぷかという福祉事業所が、福祉ではないところで新しい価値を生み出している。そこがいいなと思いました。  7月31日の上映会&トークセッションで、かずやさんの自立生活も、それが街の価値を何倍にも上げている、というような評価が出てくるといいですね、という話をしました。   数年前、緑区で障害のある人たちのグループホーム建設に反対する動きがあって、運営する業者からどうしたらいいか相談がありました。説明会に行って話をしようと、最初に『Secret of Pukapuka』の映画を上映しました。ところが始まって5分もたたないうちに 「障害者のいいところばかり撮った映画なんかやめて欲しい。もっと問題行動がわかるようなものをやるべき」 といった意見が出され、泣く泣く上映を途中で中止したことがあります。  その意見を出された方は障害のある方とおつきあいして何か困ったことがあった、というわけではなく、おつきあいのないが故に怖い、というところだけで意見を言っていました。要するに偏見です。たかが偏見ですが、こうやって上映ができなくなるようなチカラを発揮します。こちらの言い分を聞く耳も持ちませんでした。  社会は、障害のある人たちも含め、いろんな人がいることが社会の豊かさであり、面白さです。上映会の感想にあった「街の価値」というのは、まさにそのことを言っています。感想を書いた人は、パンを食べることでぷかぷかさんたちと出会い、そんなぷかぷかさんたちのいる霧が丘の街が好きになったというのです。  おつきあいすることもなく、一方的な偏見だけで障害のある人たちを排除してしまうと(グループホーム建設反対運動はまさにこれです)、社会が持っている豊かさや、いろんな人がいっしょに生きていく上での大事な苦労を失います。  「いろんな人がいっしょに生きていく上での大事な苦労」というのは、たとえばかずやさんの大声を巡って、今、まわりの人たちがどうしたらいいんだろうって、色々悩んでいますが、そういった苦労は、私たちの人間を鍛え、磨きます。それは社会の豊かさとして蓄積されていきます。苦労の蓄積は街の価値を少しずつあげていくのです。  先日NHKおはよう日本で紹介されましたが、地域で一矢さんを受け入れていこうという人たちも現れています。  いつも買い物に行くスーパーで「かずやしんぶん」を渡すと 隣の自転車屋さんのおじさんは  かずやさんの自立生活は、すでにこういう人を生み出し、周りの人は苦労を蓄積しています。かずやさんの自立生活は、こんな風にして街の価値を少しずつ上げているように思うのです。  かずやさんの自立生活を、福祉とは違う視点で語ること。それは今までにない新しい豊かさを生みます。
  • 「一緒にいてもええよ」というような、こちらを和ませるオーラが…(相模原障害者殺傷事件5年目に思うこ...
     7月31日(土)桜木町駅前の横浜市健康福祉センターホールでぷかぷか上映会とトークセッションやります。あの悲惨極まりないやまゆり園事件から5年、あたらめて今、私たちにとってあの事件はなんだったのか、事件を超えるために、今私たちに何ができるのか、といったことを考える集まりです。事件を超える社会を本気で作っていくために。     映画『いろとりどりの親子』予告編 www.youtube.com  社会にはいろんな人がいた方がいい、ということが感動とともに伝わってくる映画です。 『Secret of Pukapuka』予告編 www.youtube.com  彼らと一緒にいると心ぷかぷかになることが伝わってくる映画です。  2本の映画を見ての気づきを元に、事件を巡るトークセッションをおこないます。  抽象的な話ではなく、具体的に今問題になっていることにどう私たちは向き合っていけばいいのか、といった話をします。  事件で重傷を負った尾野一矢さんが自立生活を始めてそろそろ1年がたちます。かずやさんは時々大声を出します。その大声に対し、近所の方から苦情が来ました。かずやさんの大声は、結構うるさいので、苦情は、ま、しょうがないなという気はします。でも、しょうがない、ですませてしまうのではなく、大声出すような人と共存するにはどうしたらいいのかをみんなで考えてみたいと思うのです。それをしないと、これからも多分大声を出し続けるかずやさんは地域でのびのびと安心して暮らせません。  そこで考えたのが「友達大作戦」。苦情をよこした方に、ただ謝罪してすますのではなく、これを機会に地域の中でたくさんの友達を作っちゃおう、という作戦です。大声をおおらかに受け止めるというか、「地域に、大声出すような人がいても、ま、しょうがないじゃん」って思える人をたくさん作ることが目標です。  まずはかずやさんがどういう人で、どうしてここで自立生活をしているのかを伝える「かずやしんぶん」を作り、地域で配り始めました。配り始めたらすぐにこんな反応がありました。(NHK「おはよう日本」)  近くのスーパーの店長さん  家のすぐそばの自転車屋さん  「かずやしんぶん」を読んで、かずやさんの作ったコーヒーカップが欲しい、という人も現れました。 www.pukapuka.or.jp  こんな風にして事件を超える社会が、まだ小さいけれど、少しずつ始まっています。  桜美林大学では「地域で重度障害の人といっしょに生きていくために…」といったテーマでオンライン授業をおこない、かずやさん、大坪さん、それに私が参加しました。53人もの学生さんが授業の感想を書いてくれました。それぞれいい感想でしたが、数があまりにも多いのでそのうち2つだけを紹介します。 「今日の授業を受けて、障害のある方を身近に感じることができたし、特別 感が薄まったように感じる。私は今まで障害者と関わったことがなく、私 達とは全く違う人で全く違う生活をしている人だと思っていた。しかし、 今日の授業で、私たちとやり方は違っても自分を表現することができ、そ れを理解することができる人がいることが分かった。私たちは一つの社会 で生活していく中で、人と人の間の違いを見つけ壁をつくってはいけない と思った。私の考え方や意識が変わった授業だった。」 「高崎さんが、障がいのある人と一緒 に生きていった方が得だ、と仰っていましたが、一矢さんの姿を見て、そ の意味がなんとなく分かりました。Zoomの画面を俯瞰して見た時、なんだ か一矢さんが一番人間らしいな、と思ってしまったのです。私たちは本当 に社会に縛られまくっていて、喜怒哀楽を公で表現できず、感情を押し殺 しているときもあります。その一方、自分を自由に表現している一矢さん を見て、これが本当の人間の姿だなあ...これで良い、この姿が良いな、と思いました。」  たとえオンラインであっても、かずやさんが参加するというのは、こんなにも意味があるんだと思いました。「自分を自由に表現している一矢さん を見て、これが本当の人間の姿だなあ...これで良い、この姿が良いな、と思いました。」とありましたが、かずやさんはさりげなく振る舞いながら、生きることの一番大事なところをきっちりと伝えているんですね。  事件の犯人にはどうしてこういうことが見えなかったんだろうとあらためて思います。  女子栄養大学では「社会科学入門」の授業で「私の考える友達大作戦」を学生に描いてもらったそうです。なんと114人もの学生さんが友達大作戦のアイデアマップを描いてくれました。こちらもおもしろいアイデアがたくさんありましたが、数が多いので2つだけ紹介します。  重度障害の人とどうやって地域で一緒に暮らしていくのか、という大変な問題を、ひるむことなく一生懸命考えてくれたことがすごくうれしいです。一生懸命さがビリビリ伝わってきます。こうやって考えることが、事件を超える社会を作っていくことにつながります。学生さんたちにとっては素晴らしい経験だったと思います。   トークセッションの時は、ぜひ参加者のみなさんの考える「友達大作戦」を聞かせて下さい。  先日のハートネットTVのなかのかずやさんの自立生活を追った部分です。 www.youtube.com  かずやさんの笑顔がすごくいいですね。  でも 《笑っていないときも「一緒にいてもええよ」というような、こちらを和ませるオーラを出してくださることがあり(本心は図りかねますが…)、取材中幾度も救われました。》 と番組ディレクターの坂川さん。  介護の大坪さんは、かずやさんのそばにいるとくつろぐそうですが、このオーラをいっぱい浴びているのだと思います。  神奈川新聞の成田さんは、かずやさんちに行くといつも色々と考えさせられるそうです。やっぱりこのオーラを浴びているのでしょうね。  トークセッションにはかずやさんも参加しますので、ぜひこのオーラを感じ取ってみて下さい。トークセッションに登場するのはかずやさんのほかに介護者の大坪さん、神奈川新聞の成田さん、それにぷかぷか代表の高崎です。司会は先日のハートネットTVの番組ディレクター坂川さんです。会場のみなさんからもご意見お伺いします。  参加してよかったね、なんだかちょっとトクした気分だね、心がほっこりあたたくなったね、とリアルに思えるような集まりにしたいと思っています。  参加希望者はぷかぷかホームページの「問い合わせ窓口」からお願いします。 www.pukapuka.or.jp
  • かずやさんの作ったコーヒーカップが欲しい(相模原障害者殺傷事件5年目に思うこと−④)
    「かずやしんぶん」を読んだ方から、 「かずやさんの作ったコーヒーカップが欲しい」 というリクエストがあったそうです。すごくうれしい反応です。  かずやさんの陶芸は、かずやさんの自立生活に彩りを添えられたら、と思って始めたものです。暮らしの中に自分で作ったコーヒーカップや、植木鉢、花瓶などががあったら、ちょっと素敵な雰囲気になります。                 そんな思いで陶芸をやっていたのですが、友達大作戦がスタートし、「かずやしんぶん」に 「かずやさんの作ったコーヒーカップ、ご希望の方にはおわけしますよ」 と書き込んだところ、すぐに反応が出てきたというわけです。  「欲しい人がいっぱい出てきたらどうしましょうか」 と、介護に入っている大坪さんは心配していました。かずやカップはそんなに数がありません。これから頑張って作るにしてもかずやさんの気分次第のところがあるので、そんなにたくさんはできません。  ですから欲しい人は少し待ってもらうことになります。かずやカップは待たないと手に入らないことになります。待ってでも手に入れたいカップになれば、かずやカップの価値は何倍にもなります。  そうやってかずやさんが街にいることの意味が広がっていきます。  「障害者はいない方がいい」といって起こした相模原障害者殺傷事件。でも、かずやさんの活動は、 「かずやさんの作ったコーヒーカップが欲しい」 と思う人を作り出しました。そう思う人が増えていけば、かずやさんが街にいることの意味がたくさんの人と共有できます。 「かずやさんがこの街にいてよかったね」 と思う人が増えて行くことになります。こんな風にして、事件を超える街ができ上がっていきます。
  • たかがしんぶん、されどしんぶん(相模原障害者殺傷事件5年目に思うこと-②)
     昨日NHK「おはよう日本」で相模原事件5年目の関連でかずやさんの自立生活が紹介されました。昨年の映像との違いは、地域社会とのつながりができはじめたこと。施設を出て地域で暮らす、というのは、ただ単にアパートで好きに暮らすのではなく、地域社会との様々な関わりの中で暮らすことです。その関わりがほんの少し見えたかな、という映像でした。  「かずやしんぶん」が、いい働きをしていましたね。「かずやしんぶん」は、かずやさんの大声に近所の方から寄せられた苦情に対し、ただ謝罪しただけで終わるのではなく、これを機会に地域の人たちといい関係を作っていこうとスタートした「友達大作戦」の中の1つです。  A5版6ページの小さなしんぶんです。          www.pukapuka.or.jp  その小さなしんぶんが映像を見ていると、かずやさんの周りでとてもいい働きをしていました。  いつも買い物に行くスーパーに持っていって店員さんに渡すと こんな関係が生まれました。ただ買い物をするだけでなく、しんぶんを渡すことで、ちょっとだけ前に進んだ会話ができたのです。ここから今までと少し違う関係が始まります。 かずやさんのすぐ近所の自転車屋さんに持っていくと   後日、介護の方から「先日しんぶんを渡した隣の自転車屋さんの若いスタッフの男性が、チョコレートとコーヒーを差し入れに来てくれました。お子さんが、やはり障害をお持ちとの事で、ハートネットTVなども見て感心していたとの話をしてくれました。地域関係少しずつ前進中!」と連絡が入りました。  「かずやしんぶん」は小さなしんぶんです。でもこうやって、人を動かすチカラを持っています。 「たかがしんぶん、されどしんぶん」 なのです。しんぶんがなければ、こういった関係は、多分生まれなかったと思います。小さいながらも、いい働きをしてくれているのです。  「かずやしんぶん」がこれからもっと地域に広がっていけば、もっといろんなおもしろい反応が出てくると思います。  重度障害者の自立生活が地域社会を豊かにすることが目に見えるかも知れません。  苦情が来たというピンチが、地域社会が変わるチャンスになるかも知れません。  相模原障害者殺傷事件から5年、あの時「障害者はいない方がいい」「障害者は不幸しか生まない」などと排除された重度障害者が、今、地域のアパートで自立生活を送る中で、地域社会を豊かに変えていこうとしているのです。あの忌まわしい事件を、こんな風にして超えようとしているのです。
  • 遅ればせながら「引っ越しのご挨拶」をご近所に
     友達大作戦の打ち合わせがありました。  介護をやっている方から素晴らしい提案がありました。遅ればせながら「引っ越しのご挨拶」をご近所にやりましょう、という提案です。  かずやさんの家には毎日介護の方が日替わりで入っています。  「日替わりで得体の知れない介護者たちが出入りしている様子を不安に感じているかも知れません」  とあって、なるほどなと思いました。大声とそういった様子が重なると、近所の方の目にはどんな風に写るんだろうと思いました。  なので、遅ればせながらですが、かずやしんぶん、かずやクッキーなどを持って、ご近所にあいさつに行きましょう、というのは、今この時期に必要なとても大事な提案だと思いました。  かずやさんもいっしょに行くことになるので、かずやさんに「いっしょに行きますか?」と聞きました。  かずやさんの返事は 「やめとく〜」 でした。  「じゃあ、和尚さんだけで行ってもいい?」(丸刈りの人は、かずやさんにとってはみんな和尚さんだそうです)と聞くと、それはいい、という返事でした。  とはいえ、介護に入っている方はなかなかゆとりがないと思いますので、ここは応援団の方で時間のゆとりがある方がいれば、ぜひお手伝いに入って欲しいですね。  お米はスーパーで買うのではなく、お向かいの米屋で買うようにしましょう、という提案もありました。これは生活の中で関係を広げていく素晴らしい提案だと思いました。                                   お米は定期的に買います。定期的に顔を合わせる関係が自然にできます。量は少なくても、とにかく定期的に買いに行けば、お店の人は顔を覚えてくれます。そのうち、かずやさんを笑顔で迎えてくれます。お米買いながらいろんな話をしましょう。しっかり自己紹介もしましょう。顔と名前を覚えてくれます。「かずやしんぶん」も渡しましょう。「かずやしんぶん」を読んでくれれば、話の話題がグンと広がります。こんな風に買い物を通しておつきあいが自然に広がっていきます。  近所のお店で「かずやしんぶん」を置いてくれるところを探す、という提案もありましたので、まずは米屋さんから始めましょう。やっぱりはじめてのお店で「かずやしんぶん」の話をするよりも、何度か買い物に行って、顔見知りになった段階で「かずやしんぶん」の話を持ち出す方が受け入れてもらえる確率が上がります。お店に「かずやしんぶん」を置いてもらえれば、ポスティングとは違う広がり方をします。何よりもお店に「かずやしんぶん」を置いてくれるというのは、多少ともこちらがやっていることに共感したからだと思います。お店の方のその思いを大事にしたいですね。地域はこういったところから少しずつ変わっていくのだと思います。  街を歩けば「かずやさん元気?」って声をかけてくれる人が少しずつ増えてきます。「しんぶん、読みましたよ」って声をかけてくれる人も出てきます。  地域で生活する、というのは、こうやって生活を通して関係が広がっていくこと。その関係の広がりこそが重度障害者の自立生活の一番大事なところだと思います。この関係の広がりが、かずやさんを、そして地域の人たちを豊かにしていきます。
  • 堅くドアを閉じてしまった人の心を想像する
     先日、介護者の方が大声のことで苦情を言ってきている二階の部屋へあいつに行きました。かずやさんは行きたがらないので部屋で待機。ドアをノックしても、全く反応がなかったそうです。「下の部屋の尾野です」と言っても、ドアは閉まったまま。何度かトライしたものの、反応がないので、手紙、かずやしんぶん、かずやさんの作ったコーヒーカップ、かずやクッキー、植木鉢をドアの前に置いてきたそうです。  ある程度は予想されたこととは言え、実際に閉じたドアを見てしまうと(固く閉じたドアは、そこにいる人の心そのもの)、やっぱり心が萎えてしまいます。閉じてしまった心を開いてもらうにはどうしたらいいんだろう。  でも、ここからが本当の勝負だと思います。本気で閉じたドアと向きあう。どうしたら心を開いてもらえるのか、考えて考えて考え抜く。堅くドアを閉じてしまった人の心を想像するのです。そこからしか解決の道は見つかりません。  ズームのオンラインで参加した学生さんが「共感マップ」というツールを提案してくれました。ユニバーサルデザインを勉強している方ですが、相手を理解するうえでとてもいいツールだと思いました。  お二階さんがどんな思いでいるかを俯瞰できるようにマップ化することで解決の糸口が見つかるかも知れません。共感マップの要素は次の6つです。 1,お二階さんが見ているもの→   →かずやさんの家の看板、ドアに貼りだしたかずやさんの絵     2,お二階さんが聞いていること→   →かずやさんの大声 3,お二階さんが考えていること、感じていること→   →うるさいな、と思っている。フラストレーションがたまっている。 4,お二階さんが言っていること→   →多分「かずやさんの大声がうるさい」 5,お二階さんの痛みやストレス→   →夜、休みたい時間に大声が聞こえると、それは辛いこと。ストレスがたまる。   現時点では大声を出す人がどんな人かわからないので、やっぱり怖い。  6,お二階さんが得られるもの、欲しいもの→   →大声の聞こえない静かな夜  かずやさんの家の看板、ドアに貼りだしたかずやさんの絵を、お二階さんが見たらかずやさんに対し、どういうイメージを持つんだろうと想像してみましょう。大声に対してうるさいなぁ、と思っている印象はどう変わるでしょう。そこを想像してみる。こういった想像こそが問題解決に向けての具体的な手がかりを見つける気がするのです。何もないままどうしたらいいのかを漠然と考えるより、はるかに問題の解決方法が見えてきます。  6の「大声の聞こえない静かな夜」を目標にするのは、かずやさんの大声が止められない以上、無理な目標です。でも、大声が聞こえた時、 「ったくうるせーなー」 と思いながらも、 「ま、しょうがねーか」 というあたりに落ち着くのは、多分可能です。こうなれば、大声を出すかずやさんとも、同じアパートでなんとか暮らすことができます。  その着地点を目指すためにはこれからどうしたらいいのか、ということです。実際に動くのは現場の人たちですが、私たちも色々アイデアを提供したいと思うのです。  この問題をテーマに大学での授業、もしくは自主セミナーが開けるといいなと思っています。  大声に対して苦情が出た問題をどうやったら解決できるのか、それを考える授業、セミナーです。重度障害者の自立生活が生み出す地域社会との摩擦の解決方法を考えることは、重度障害者とどんな風にすればお互い気持ちよくいっしょに地域で暮らしていけるかを考えることです。これは社会全体の問題であり、社会を構成する自分自身の生き方にもふれてくる問題です。誰にとっても生きやすい社会を実現するための最初の一歩です。  「共生社会を作ろう」とか「ともに生きる社会を作ろう」という抽象的な話ではなく、かずやさんというおじさんとどうやったらお互い気持ちよくやっていけるのかを考えます。そのため、授業、セミナーにはかずやさんもいっしょに行き、かずやさんのことをまず知ってもらいます。かずやさんはお話ができないので、介護の方からいろいろ聞くことになりますが、それでも実際にかずやさんに会うことはすごく意味のあることだと思います。かずやさんはこんな人です。         可能なら大声も出してもらいましょう。その大声を聞いて、もし自分が二階に住んでいて、ときどき下の部屋から大声が聞こえたらどんな気持ちになるだろう、と想像します。あるいは介護者としてかずやさんのそばにいる時、大声を出し始めたらどんな気持ちになるか想像してみます。若い介護者の一人は、また二階に響いているのではないかとハラハラしながらもかずやさんの大声はなかなか止まらなくて、もう泣きたいくらいの気持ちだったと話してました。  で、その大声に対し、二階の方から苦情が来ました。どうしたらこの問題が解決できるか、が授業、セミナーのテーマです。実際に大声を聞くことで、問題の深刻さをリアルに考えることができます。目の前のかずやさんを見ながら考えましょう。  いいアイデアが出てくれば、実際にやってみます。もしそのことで少しでもいい方向に動いていけば、 「あっ、社会って、こうやって自分で変えていけるんだ」 っていう成功体験になります。若い人たちが社会に希望を持つことができます。 6月22日(火)、友達大作戦の打ち合わせをします。固く閉じてしまったドアを開けてもらうにはどうしたらいいかを考えます。大学の授業、セミナーの企画の話もします。  zoomのオンライン参加もOKです。ぜひいろんなご意見お願いします。 2021年 6月 22日 (火) 午前10:30~ 午後12:00  参加希望者はぷかぷか問い合わせ窓口から申し込んで下さい。URLとミィーティングID、パスコードをお送りします。 www.pukapuka.or.jp
  • 想定外のことが起こり…
     6月8日(火)友達大作戦の打ち合わせがありました。      参加者は、かずやさんほか7名、マスコミの取材3名でした。  内容はホームページのコンテンツなどの確認、早稲田大学での授業ができなくなった件など。 かずやさんちの看板ができました、という報告。絵はヨッシーです。                        早速かずやさんちのドアのそばに置きました。         このドアにかずやさんの似顔絵をパネルにして貼り付けます。どんな人がここに住んでいるのか、少しイメージできると思います。           この前を二階の人は毎日通ります。ほんの少し、気持ちが柔らかくなるかな、と期待しています。  そうして今度の日曜日6月13日(日)に、いよいよあいさつ、謝罪にかずやさんと介護者が行きます。かずやさんがどんな人で、なぜここにいるかを簡単に説明します。「かずやしんぶん」もこの時渡します。   二階の方がかずやさんの顔を知り、どんな人かを知ること。それができれば、今回は最初の一歩達成!だと考えています。お互い顔を知れば、近所で会った時、あいさつができます…  と、甘いストーリーを考えていたのですが、木曜日、想定外のことが起こり、先が見通せない状態になりました。   発端は私の提案 高崎:「かずやしんぶん」を事前に二階の家のポストに入れておいたらどうでしょうか。読むかどうかわかりませんが、ひょっとして読んでくれれば、ラッキー!という感じです。住所を手書きで部屋番号まで入れておけば、下の部屋の人のことなんだということがすぐにわかります。  10日木曜日、大坪さんはかずやさんと二人で行こうとしたようです。 大坪:一応今日、ポスティングを一矢さんと一緒にと試みましたが、本人やはり嫌だったらしく、大声を出されまくって挫折しました。日曜日本当に一緒に行けるのかなぁ…ちょっと気掛かりです。 高崎:そうでしたか。かずやさん、どうして嫌だったんでしょう。 大坪:やはり今日の一矢さんの反応を見て、もう少し慎重にやらないとマズいかなと思いました。 大きな声について介護者が二階に響くのではないかとハラハラしていて、本人も声を出さないように努力をしていると思いますが、それがなかなかできない。 その辺の葛藤、ストレスもかなりギリギリの所に今いると感じます。  そうした中で「謝罪」に行くというのは、本人にとって、かなりツライ経験である事は間違いないと思います。  先日の会議のように皆さんが一矢さんに好意的な場面であれば、様子を見て「一本橋」も出て来るけど、本人に部が悪い場面である事は肌身で感じ取っているのだと思います。  そこで本人が、納得して二階に行くという手続きを取るのはかなり難しい…本人にそれをどう伝えるか。 「障害」を、自己責任論で本人が克服しなければならない問題とするのではなく、環境や関係を変えて行く事で解決して行こうというのが、「社会モデル」の考え方だと思いますが、やはり今、そのギリギリの所が問われているのだと思います。  なので、とりあえず日曜日は、慎重に様子を見ながら二階に行くかどうかを判断したいと思います。  二階にあいさつに行く時、かずやさんは大坪さんに素直についていくものとばかり思っていました。かずやさんの気持ちを丁寧に想像してなかった、ということです。  《そうした中で「謝罪」に行くというのは、本人にとって、かなりツライ経験である事は間違いないと思います。 》  という大坪さんの言葉で、かずやさんの気持ちに初めて気がつきました。情けない限りです。  「大声に対する苦情」という問題を、《環境や関係を変えて行く事で解決して行こう》としたのですが、肝心なかずやさんの気持ちを取りこぼしていたのです。  本人が納得して二階に行くという手続きを取るにはどうしたらいいのか、またまた難題を抱えることになりました。  6月15日(火)の友達大作戦はその「どうしたらいいのか」を考える集まりになります。大学での自主セミナーの企画も。  zoomのオンライン参加もOKです。ぜひいろんなご意見お願いします。 2021年 6月 15日 (火) 午前10:30~ 午後12:00  参加希望者はぷかぷか問い合わせ窓口から申し込んで下さい。URLとミィーティングID、パスコードをお送りします。 www.pukapuka.or.jp  早稲田大学でやる予定だった「友達大作戦」に関する授業は、外部講師の依頼は半期に一度だけ、という規則に引っかかって(担当教員がすでに一人申請していたので)不許可になりました。映画「道草」の続編の撮影も予定していたのですが、それも不許可。  ちょっとがっかりしましたが、授業でなければいい、ということなので、自主的なセミナーみたいな形でやろうかなと考えています。会場は早稲田大学です。大学の枠も超えてたくさんの人に呼びかけ、友達大作戦を展開していこうと考えています。  どういう言葉で呼びかければ学生さんたちが集まってくるのか思案中です。小難しい話ではなく、 「あっ、これ、なんだかおもしろそう」 って軽い気持ちで乗ってきてくれるような言葉を探しています。  友達大作戦に、軽いノリで 「こうやったらおもしろいんじゃない」 という提案をしてもらい、その提案で 「あ、おもしろい、おもしろい」 と、人が動き始めるかも知れません。その動きの中で、かずやさんと様々な形で出会う人も増えます。 「かずやさんのような大声出すような人もいていいか」 っていう人が地域に増えれば、地域社会は受け入れる人の幅が増えることになります。 かずやさんの周りの小さな社会が、ほんの少し居心地がよくなります。みんなにとって居心地のいい社会が、こうやって実現するのです。  「自分の手で社会が変えられる!」 若い人たちがこんな風に思える体験をすれば、社会に希望が持てるようになります。  大学で若い学生さんたちを相手に「友達大作戦」の授業をやるのは、そんな思いがあるからです。今までにない新しい提案が出てくるかも知れないし、学生さんたちも変わります。  重度障害者の自立生活は、社会を豊かに変えていくのだと思います。  「友達大作戦」はこちら www.pukapuka.or.jp
  • かずやさんが大学で授業やります。
     知り合いの大学の先生が「ボランティアとNPO・NGO」という授業をやっていて、先日の入管法改悪の動きと市民による阻止行動など、社会運動についていろいろ話をしているようです。  その中で学生さんから、署名運動をいくらやっても社会はなかなか変わらない、といった社会に希望が持てないような感想がFacebookで紹介されていました。こりゃいかんなと思い、書き込みをしました。 「議論も大事ですが、まずは具体的に動いてみてはどうでしょうか。いろんなことが見えてくること間違いなしです。」 「抽象的な議論ではなく、具体的な問題に対し、どうしたらいいかをみんなで考え、それをとにかく実際にやってみる。たとえそれがうまくいかなくても、抽象的な議論よりははるかに収穫があるはず。」  この書き込みがきっかけで実際に大学で授業をやることになりました。かずやさんも参加し、友達大作戦をテーマにした授業をします。    かずやさんは昨年夏、施設を出て、アパートで自立生活を始めました。かずやさんはときどき大声を出します。二階に住んでいる方から、その大声に対して苦情が来ました。  介護者を派遣している事業所の方でとりあえず謝ったそうですが、かずやさんは 「大声を出さないで下さい」 といっても、 「はい、わかりました」 と聞いてくれる人ではありません。これからも大声を出します。  ならば大声と共存する方法を考えないと、この先、お互いが辛いことになります。そこでスタートしたのが「友達大作戦」。要は、ただ謝るだけでなく、 「友達になっちゃおう」 というわけです。  大声が聞こえて、 「うるさい!」 と怒鳴り込むのではなく、 「ったくしょーがねーなー」 とブツブツ言いながらも、なんとかそこで踏みとどまれる関係。  街で会えば 「よう、元気?」 って声をかけられるような関係。  「かずやんちカフェ」を開く時は、一緒においしいコーヒー飲みながら、いろんな話ができる関係。  餅つきをやる時は、かずやさんと一緒に餅つきを楽しんだりする関係。  そんな関係になるにはどうしたらいいかを考えるのが「友達大作戦」。    授業では実際にかずやさんの大声を聞いてもらい、どうしたらいいかを学生さんに考えてもらいます。そこで出てきたアイデアは、実際に現場で試してみます。うまくいくかどうかはやってみないとわかりません。  この「実際に現場で試す」というところが大事です。あーだこーだ言うだけで終わらないところが今回の授業。ほんの思いつきのアイデアであっても、それがおもしろいものであれば社会は反応します。 「自分の手で、社会が変えられるんだ」 って、そんなことに気づくかも知れません。  その気づきは、これから長い人生を生きていく上で大きな自信になります。社会に希望が持てます。若い人たちが社会に希望が持てるって、なんかすごいじゃないですか。    「友達大作戦」の対象は二階の人だけでなく、地域社会全体の人です。地域の人たちみんなといい関係を作ること、それが地域に暮らすことの意味だと思います。  街を歩くと、 「こんにちは」「元気?」 って、いろんな人から声をかけられる関係があることは、とても大事なことです。こういった関係がお互いを豊かにします。重度障害者の自立生活が地域社会を豊かにしていくのです。    問題は授業の時にかずやさんが大声を出してくれるかどうかわからない、ということです。先日もかずやさんの陶芸教室をテレビが取材に来たのですが、その日はかずやさん陶芸に全く乗ってこなくて、本当に困りました。そういうことが十分に予想されるのです。なので、アパートで大声出した時に映像で記録していただいて、一応それを持っていく予定でいます。  いずれにしても、そういうかずやさんのわからなさと、頭抱えながらつきあっていくところにこそ、かずやさんとのおつきあいの奥深さというか、面白さがあるような気がします。    6月14日(月)早稲田大学で授業をやります。どうなりますか。また報告します。    機嫌がいいと下の写真のような感じですが、授業の日、こんな顔をしてくれるかどうかは全くわかりません。そのわからなさの中での授業です。           友達大作戦はこちら www.pukapuka.or.jp
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