ぷかぷか日記

《得!》という言葉は侮れない

 「障がいのある人たちとは一緒に生きていった方が《得!》」といつも言っています。この《得!》という言葉が、この業界(?)にあってとても新鮮でした、と先日お会いした方に言われました。

 この業界とは要するに福祉の業界ですが、誰かのために何かをやってあげる、ことの多い業界であり、それを《得!》だからこの仕事を始めた、という人は今までいなかったのではないか、というわけです。

 だから「すごい」、とも言ってましたが、何で「すごい」のかはよくわかりませんでした。

 《得!》という言葉は、自分の素直な感覚から出ているので、障がいのある人たちとのおつきあいに無理がありません。一昔前は「障がいのある人たちとは共に生きねばならない」とか「共に生きよう」という言葉がはやっていましたが、言葉の上では共感できても、実感としてついて行けないというか、かなり無理がある気がしていました。

 そういう意味で《得!》という言葉は、養護学校で彼らと毎日おつきあいする中で実感した言葉です。以前にも書きましたが、養護学校の教員になって1年目、小学部の6年生を受け持っていました。クラスのみんなで1週間くらいかけて紙粘土で大きな犬を作ったことがあります。毎日毎日「大きな犬ができるねぇ」「楽しみだねぇ」「できあがったら名前つけてあげようね」とか言いながら、少しずつ犬ができあがってきました。

 そうして完成した日、「ところでけんちゃんさぁ、これ何を作ったんだっけ?」と犬を指先ながら聞きました。こういう質問も養護学校では大事な勉強になります。

 けんちゃんは一生懸命考えていました。

「え〜とね」「え〜と」「え〜と」…とものすごい時間かけて考え、

「そうだ、わかった、おさかな!」

と満面の笑みを浮かべて答えたのです。

もう笑っちゃったというか、大あたりぃ!かんかんかんかん…と鐘を100回くらいならしたいくらいでした。

 彼らと過ごす日々には、そういったことがいっぱいありました。いつしか、彼らとは一緒に生きていった方がいいよな、得だよな、とごく自然に思うようになりました。

 彼らと一緒に生きていく場として「ぷかぷか」を始める原点は、彼らと一緒に過ごしたこんな楽しい日々があります。

 人生が楽しくなりました。人生が豊かになりました。生きることが自由になりました。そういったことを考えると、彼らとは一緒に生きていった方が《得!》というときの《得》の中身は天文学的といっていいくらいの《お得感》があるのではないかと思ったりするのです。彼らとは、ほんと,つきあわなきゃ損!ですよ。

 

 そんなふうに言い続けて5年、「ぷかぷかが好き!」「ぷかぷかのファン」という人がだんだん増えてきました。「ぷかぷか」はそうやって地域社会を豊かにしているのだと思います。社会から疎外されている人たちのことを好きになるなんて、考えてみればすごいことだと思います。そういう人が増えることで地域社会は豊かになっていきます。

 すべては《得!》という言葉から始まったものです。《得!》という言葉はだから侮れないなと思います。

 

料理しながらこんな遊びができてしまう彼らとは一緒に生きていった方が絶対に《得!》です。普通の人ではこんなことできません。ま、こんなこと突然始めたボランティアの木下さんも偉いのですが、それにすぐ乗ってきた彼らがいたからこそできたステキな時間だったと思います。これ昨日の料理教室です。

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