ぷかぷか日記

「くそ〜!」は創造のエネルギー

 新しいものを作るときはふだんとちがうエネルギーが必要です。ふだんと同じであれば、新しいものは生まれません。

 一昨日、「ぷかぷか」のはんこがもう使いすぎて壊れてしまったので、消しゴムで新しいはんこを作ってくれるように依頼がありました。はがき大の消しゴムを渡され、こんなの簡単、と引き受けました。

 ところがこの消しゴムがくせ者で、版木を彫るときとは全く感じが違います。版木はナイフで切った跡がくっきりと残ります。それを見ながら反対方向から刃を入れ、形を彫っていきます。それと同じように切れ込みを入れたのですが、消しゴムは弾力があって切れ込みが元に戻ってしまうので、その切れ込みのあとが全く見えません。目を近づけたり、消しゴムの角度を変えたりして、何とか切れ込みのあとを探すのですが、なかなか見つからなくて「くそ〜!」って思いながら仕事を発注したセクションに電話、

「だめ!これ、できない!」

 正直、怒り狂っていました。何でこんな仕事よこすんだよ、って。

 お茶飲んで、少し落ち着いて、「でも、これやらなかったら、誰もやらないよな、いや消しゴムだから、和紙に丁寧に下書きして、それを裏返しにして消しゴムに貼り付けて、それに添って彫っていけば簡単にできちゃうし、でも丁寧に下書きなんかすれば、おもしろみのある字なんか彫れないし、そんなの耐えられないし…やっぱり自分でやろう!」って、思い直して彫り始めたものの、切った跡は相変わらず見えなくて、「くそ〜!」って思いながら、ほとんど怒りにまかせてナイフで切れ込みを入れていきました。

 そうこうしているうちに、気がつくと(怒りで夢中になっていました)、何とか彫り上がっていて、スタンプ台でインクをつけてみたら、それなりに味のある字になっているじゃないですか。

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消しゴムを彫るコツが少しわかってきたので、気をよくして「おひさまの台所」にも挑戦。ところがわかったつもりで彫り始めたものの、やっぱり切れ込みはどう工夫しても見えなくて、またしても「くそ〜!」といらいら。

「だめ!この消しゴム、もういらいらしてだめ!もうやめる!」

と、また電話。お茶飲んで、ちょっと落ち着いて、考え直して、また「くそ〜!」と思いながら挑戦。字数が多いので、「くそ〜!」の度合いもどんどんアップ。怒りにまかせてナイフにも力が入り、消しゴムが切れてしまうくらい深く彫ってしまうところも出てきて、ますます「くそ〜!」って思いました。怒り心頭に達したあたりで気がつくと彫り上がっていました。インクをつけたら、それなりにおもしろいじゃないですか。

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「くそ〜!」って思いながら彫るのもどうかと思いましたが、彫り上がってみると、「くそ〜!」って思うエネルギーこそが、この文字を彫ったんだと思いましたね。「くそ〜!」も捨てたもんじゃないですね。

 

 「くそ〜!」って思いながら電話した相手が、Facebookに「高崎が心をこめて彫ってくれました」なんて書いていて、「そうか、《くそ〜!》は心か」、と思いました。

 

 

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