ぷかぷか日記

4万円からはじまった物語

  区役所の区政推進課の職員Kさんが、異動になりますと挨拶に来ました。Kさんは採用1年目でぷかぷかを相手に仕事をやったので、ま、いろいろ大変だったようです。

 区政推進課とのおつきあいは、地場の野菜を使う地産地消を通した関係でした。Kさんが来たときも秋の区民まつりでぷかぷかのおからを出す費用の打ち合わせでした。おからの費用が6万円で、区役所が用意している予算が10万円でした。差し引き4万円が残ります。それはもったいないと、その4万円で地産地消ブースのデザインをやらせてくれませんか、とその場の思いつきで提案しました。この時の思いつきが、アートを通したおつきあいの始まりでした。

 突然の提案でKさんも係長も即答はできず、区役所に帰ってから課長と相談したようで、2日ほどたってOKの返事。ぷかぷかが日々やっていることをみての判断だったと思います。多分おもしろいものを作ってくれるんじゃないか、と。下の写真のような。

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 さてどういうデザインにしようかと考えながらぶらぶら歩いているときに、ヨッシーの描いた歯医者に行って虫歯だらけの口をガバッと開けている絵を見つけました。あっ、これをブースの入り口にしたら絶対おもしろい、と思いました。で、その絵をアート屋わんどのコンドーに見せ、段ボールで入り口をデザインしてもらいました。

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 ブースの入り口の装飾だけでなく、テントの屋根に段ボールで作った直径1メートルくらいのカボチャ(地産地消のシンボル)をのせたいと言い出したので、Kさんは

「え〜〜!」

とびっくり。心配になって総務課に相談したら、

「そんなあぶないことはいかん!」

といわれたそうで、すぐ私に「だめみたいです」と電話がありました。

「絶対に落っこちないようにするから」

と、絵を描いて説得しました。

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 実際屋根にのせてからは落ちなかったのですが、のせる途中で落っこちてきてちょっと大変でした。下の写真の直後、真っ逆さまになって落っこちたのです。

 

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 区民まつりで配るチラシもデザインすることになり、地産地消をやっているお店の情報を入れてくれるように頼まれました。Kさんから送られてきたお店のデータはお店の名前、営業時間、電話番号などのテキストデータで、新人のKさんとしては一生懸命作ったデータでした。それを

「あの〜、こんなの見ても、誰もお店に行こうって思わないんじゃないですか。」

って、私が正直に言ったので、えらくめげたみたいでした。

「テキストじゃなくて、楽しい絵地図で行きましょう。ぷかぷかさんが描くと、絶対楽しい絵地図になります。お店のシェフの似顔絵も入れると、あっ、こんな人がつくるんだ、ってわくわくしてお客さんはいっぱい来ますよ」

と丁寧に説明し、Kさんは納得したようでした。

 ここから絵地図の物語がはじまります。

 似顔絵も入れるとなると、チラシには入りきらないので、もっと大きなスペースが欲しいと言い、KさんはA1サイズの大きなパネルを用意してくれたのですが、似顔絵は原寸大で入れたい、とまたわがままを言い、結局テントの横の壁いっぱいに貼り出すことにしました。 

 シェフの似顔絵を描きに行きました。

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そうやってできあがった絵地図がこれ

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 予想をはるかに超えた楽しい絵地図ができあがりました。

 区民まつりの朝、通りかかった区政推進課の課長に

「これ、一日で捨てちゃうの、もったいないですよ。一週間くらい区役所のロビーに貼り出しませんか?」

という提案をしました。

 しばらくして課長から連絡があり、絵がヨレヨレになっているので、きれいにパネル張りにして展示したい、見積もりを取って欲しい、ということでした。

 知り合いの額縁屋さんに連絡。見積もりを取ったところ10万円。そんなお金出してくれるのかなぁ、と思いながら課長に電話。これがあっさりOK.

 ヨレヨレになった絵地図をパネル張りにしました。

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 できあがったパネルを区役所に持って行ったら、Kさんと係長は「ひゃ〜すごい!」とびっくり。せっかくなのでロビーに飾る前に除幕式をやりましょう、ということになりました。

 区長が出席しての除幕式でしたが、途中でぷかぷかさんが踊り出し、はずみでパネルにかぶせてあった白い幕が落っこちてしまうというハプニングがありましたが、ま、ぷかぷからしくていい、とみんな大笑い。

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 この一連の仕事でできた信頼関係の中で、区役所で行われる人権研修会の講師を依頼されました。私一人で行ってもなんかつまらない感じがしたので、人権問題の当事者であるぷかぷかさんを三人ほど連れて行って講師をやってもらいました。ぷかぷかさんが行けば、今までにないおもしろい人権研修会になるという確信がありました。まとまった話はむつかしいので、いろいろ質問してもらいました。「給料は何に使いますか?」「仕事で何が一番楽しいですか?」「休みの日は何をしていますか?」といった質問に答えました。それでもみんな新鮮な印象を持ったようで、たくさんの人がアンケートを書きました。人権研修会はいつも硬い話でアンケートはほとんど書かないそうです。こんなにたくさんアンケートが集まったのは初めてです、と担当の方はびっくりしていました。

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 これが4万円からはじまった物語です。そもそも地産地消の打ち合わせに私は出たことがなかったのですが、たまたまあの日時間が空いていて、打ち合わせにでて、思いつきで4万円でブースのデザインやらせてくれませんか、と提案したのです。そこからこんなにもいろいろな物語がはじまったのです。

 これがきっかけで区役所とのおつきあいの幅がグンと広がりました。区民まつりの地産地消ブースのデザインは毎年のように依頼されます。

 新人のKさんにとっては本当に大変な1年だったと思います。でも大変だったからこそ、人生の幅がグンと広がったのではないでしょうか。その広がりを新しい職場でも生かしてもらえたら、と思っています。本当にお疲れさまでした!

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