ぷかぷか日記

彼らとの関係が、全くちがうものになれば、みんながすごい「トク!」

 第一期演劇ワークショップ記録映画のDVDを見たから感想が届きました。今までにない新しい角度からの感想です。

 

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DVDを拝見して、高崎さんがおっしゃっている

「一緒に生きた方がいい」という言葉の意味がストンと胸に落ちました。

過程こそに意味のある映画だったので、時間が長くなるのも納得です。

映画を通して、わたしも一緒にワークショップを受けているようなきもちに。

辻さんの最後のヨイトマケのうたも、良かったなぁ。

 

ここのところ『けんぽうBOOK』の続きを作っていて、

その中で、個人主義と全体主義のことを書いているのですが、

映画を見ながら何度もそのことを思い出しました。

 

一人ひとり違うって当たり前のことなのだから、

それを一色に染めてしまおうとする全体主義は、支配者にとっての効率性でしかない。

それに、役に立つとか生産性という言葉も、支配や管理する側の言葉なのだと思います。

でも悲しいことに、

日本って全体主義ととても親和性の高い国なのではないかと感じることがよくあります。

 

移民が多く住む国では、肌の色や言語、文化、価値観、暮らし方など、

人それぞれ違って当たり前、という前提が共有されています。

だけど日本では、みんな同じ、ということが前提になっている気がします。

だから、ちょっと自分とは違う人と出会った時に、すごく戸惑ってしまったり。

 

人ってみんな違うことが当たり前なのだから、

同じだ、からはじまるより、違うよね、からはじまる方が、ずっと生きやすいはず。

あのワークショップは、みんなそれぞれ違うよね、

というところからスタートしている場だと感じました。

 

平和学において、対立を解決するためには、

とりあえず共通の目標をもって一緒にやってみる、という方法が

有効だと考えられています。

一緒に何かに取り組む過程で自然と関係がよくなり、

そうなってはじめて、対立解決のために動き出せる、ということのようです。

 

もちろん、ワークショップに参加している人たちの間に対立はありませんが、

舞台という共通の目標に向かって時間を共有することで、

自然とそこに信頼や共感や親密さが生まれていく。

高崎さんの言っていた、「どう共に生きるか」なんて難しく考える前に、

とりあえず友達になっちゃえばいい、ということの証明を

目の前で見せてもらったように思いました。

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 演劇ワークショップは、演出家が書いた台本をやるのではなく、みんなでアーダコーダと言い合う中で創っていきます。このアーダコーダ言い合うことで、新しい出会いがあったり、お互いの関係が深まったりします。第一期演劇ワークショップ記録映画の中では最後の結末をどうするかで、ずいぶん時間をかけてみんなで話し合いました。映像にもそれが記録されています。

 私が演劇ワークショップにこだわるのは障がいのある人たちとの関係をなんとかしたい、という思いがあります。彼らとは「対立」ではありませんが、あれができない、これができない、社会のお荷物、負担、効率が悪い、生産性が低い、何かやってあげるしかない、といった蔑み目線の「マイナス評価」の関係がほとんどです。

 でも、養護学校の教員になって、彼らとおつきあいを始めてわかったことは、蔑み目線の「マイナス評価」の関係を飄々と超えてしまうような、なんとも言えない人間的な魅力を持った人たちだ、ということです。彼らのそばにいるだけで、心がキュ〜ンとあたたかくなるようなことがいっぱいありました。気持ちが安らいで、ずっとそばにいたいと思いました。そんな彼らの魅力をみんなで共有すれば、彼らとの関係は、全くちがうものになるし、何よりもみんながすごい「トク!」するように思いました。

 たまたま出会ったのが演劇ワークショップの手法でした。これはフィリピンや中南米で行われていた識字教育のメソッドでしたが、その中で

「自分自身が自由になれること」「お互いの新しい出会いがあること」

などが気に入って、障がいのある人たちと一緒にやれば、きっと何か面白いことが起こるんじゃないか、という予感がありました。

 当時(1980年代はじめ)、そのメソッドを日本に取り入れた黒色テントに相談に行き(東京練馬の事務所まで本当に何度も何度も通いました)、1985年3月に始めて障がいのある人たちと一緒に演劇ワークショップをやりました。それがすごく面白くて、その後半年単位で、10年ほど続けました。

 で、何ができたのか。

 障がいのある人たちに向かって「あなたにいて欲しい」「あなたが必要」と自然に思えるような関係ができたのです。「あれができない、これができない」というマイナス方向の関係ではなく、「あなたにいて欲しい」「あなたが必要」という積極的な関係、プラス方向の関係ができたことはものすごく大きなことでした。それまでの関係をひっくり返した、といってもいいくらいでした。

 そういう関係の中で創り上げる芝居は、これは新しい文化じゃないか、と当時いいまくっていましたが、誰も振り向いてくれませんでした。振り向いてくれたのは、あれから30年もたってからでした。2015年読売福祉文化賞を受賞し、ようやく新しい文化として認められたのです。やっと時代が追いついた、というか…

 演劇ワークショップは、障がいのある人たちのよさが、そのまま生かせる場です。社会には様々な規範があって、お互いがとても不自由です。でも、演劇ワークショップの場はお互いがとても自由に生きられる場です。

 明日から第5期演劇ワークショップが始まります。今回はどんなことが起こるのか、わくわくしています。

 

 

 感想の中に出てくる『けんぽうBOOK』、ぷかぷかでも販売しますので、欲しい方は注文して下さい。もう一つ、『ほめ言葉のシャワー』も販売します。いずれもコンパクトなかわいい本です。内容については、感想を書かれた方のサイトに紹介されています。

mai works WEBSHOP – てのひらブックと紙モノ雑貨

 

  著者の水野スウさんはこんな方です。

www.facebook.com

 

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