看護学校の精神看護学の授業で「地域における精神看護」というテーマで講義をします。ぷかぷかの話の予定でしたが、送られてきた講義スケジュールにはこんなタイトルが入っていました。精神障害の方の勉強はほとんどしたことがないので、どうしようかと思いましたが、断るのももったいないので、そのまま引き受けることにしました。娘が精神を病んでいて、色々大変だったので、そのあたりの話をしようかなと思っています。
娘は鬱がひどく、調子が悪いと一日中布団をかぶって寝ています。色々やりたいことがあっても、体が動かないので、思いを断念する日々だったと思います。そんな中で何度も不満が爆発し、家の中で大暴れしました。もう手がつけられなくなって、警察に連絡し、夜中に何度かパトカーが来たこともあります。
家の壁に何カ所も穴が開いています。娘が思うようにならない人生に対し、怒りを思いっきり壁にぶつけました。壁の穴を見るたびに娘のイライラ、欲求不満のすさまじさが見えるようで、とても辛くなります。
自殺願望もあったので、外に飛び出すたびにかみさんと二人で追いかけました。階段を駆け上ったときは、上から飛び降りるのではないかと、ほんとうにハラハラしました。
病院も4箇所くらい変えました。でも、何の改善もありませんでした。3年ほど前から中規模の病院に代わり、今はそこの院長先生に見てもらっています。いつも笑顔のやさしい女の先生で、つい昨日も受診した際、娘は彼氏が見つかった話をし、
「ええ、すごいじゃない!」
と喜んでくれたりする先生です。そのおかげで症状はずいぶん落ち着きました。
でも一番よかったのは、病院よりも、たまたま出かけたボクシングジムとの出会いです。兄に勧められて恐る恐る出かけたのですが、ボカスカ殴ることでストレスが発散できるのか、すっきりした顔で帰ってきます。
ジムがきっかけで、あらゆる活動が活発になりました。それまでほとんど引きこもり状態で、エネルギーのはさん場所がなかったのですが、それが一気に解放された感じ。
娘にとっては病院の治療よりも、はるかに効果があった感じがします。ボクシングが精神障害を改善するわけではありません。でもたまりにたまったストレスを発散するにはとてもいい場所だと思います。
ボクシングジムという地域にある資源によって救われたと思っています。地域と様々な形で関わりを持つこと、そのことが病院に行くこと以上に大事なことのように思います。