全日本印刷工業組合連合会のCSRマガジン『shin』の「障害者雇用」の特集号にぷかぷかしんぶんの記事が載りました。少し長いですが、「障害者雇用」の動きの中で、ぷかぷかの活動をどのように位置づけているかが見えます。
こちらはPDFできれいに見えます。
http://www.aj-pia.or.jp/csr/img/shin_№13.pdf
2ページから5ページにかけてぷかぷかのことが紹介されています。9ページから11ページにかけて企業の障害者雇用の取り組みが紹介されています。 すごくがんばってるなぁ、という印象です。
中央官庁が障害者雇用数を水増ししたという恥ずかしい話が飛び交っている中で、こんなふうに真剣に障害者雇用に取り組んでいる業界があるというのは、大きな希望です。こういう業界こそ、豊かな社会を作っていくのだろうと思います。
これを書いた方とお話しする機会があったのですが、生産性が求められる企業の現場で、生産性が低いとされる障がいのある人たちを雇用するには、彼らが働きやすい環境を整えるだけでなく、生産性とは違う価値観を確立しないと、やはり難しいだろうとおっしゃってました。そういう文脈の中で「生産性のない人が社会に必要な理由」というコラムを取り上げてくれたようでした。
コラムを取り上げることはできても、コラムの中で話題になっているセノーさんを実際に企業の中で雇用できるか、と考えると、かなり厳しいものがあるなぁ、とつい思ってしまいます。この、つい思ってしまう、ところこそが問題だろうと思います。つい思ってしまうくらい、私たちの考え方、発想が生産性に支配されているからです。
考え方を変える、発想を変える。そこから障害者雇用が始まるのだと思います。
前にも書きましたが、セノーさんはまわりの人と同じように働かない、生産性がない、と前にいた作業所で居場所をなくしてぷかぷかに来ました。ぷかぷかに来ても、やっぱりあまり働きませんでした。でもぷかぷかは前にいた作業所のように排除しませんでした。どうしてか。
セノーさんは働かなくても、人を癒やす雰囲気を持っていたのです。彼がそこにいるだけで、まわりの人たちを癒やすのです。この「人を癒やす雰囲気」を「一つの価値」として認める雰囲気がぷかぷかにはありました。働くことと同じぐらいの価値です。
セノーさんは飲んでいる薬の影響もあって、しょっちゅう居眠りをします。そんなとき、それを見て、
「セノーさん、居眠りするな!」
と、たたき起こすのではなく、
「あ、また寝てるよ、セノーさん、起きなよ、給料減らされちゃうよ」
みたいないい方をします。寝てるときも、みんなを癒やす雰囲気を醸し出しているからです。それをみんな認めているから、あまり強く言いません。
お客さんもその雰囲気がよくわかっていて、セノーさんの寝ている写真をFacebookにアップするだけで、ものすごいアクセスがあります。見学に来た方がセノーさんを見つけ、
「きゃー、セノーさんがいる!」
なんて騒いだりすることもあります。セノーさんは寝ながらお客さんを増やし、収益を上げていることになります。
働くことだけでなく、「人を癒やす雰囲気」も働くことと同じくらい価値あるものとしてみていく、というのは発想の転換です。
そうすることで、ぷかぷかの働く環境がすごくよくなったと思います。いつも楽しい雰囲気で、みんなの笑顔が絶えません。結果的には生産性がそのことでアップしているのかも知れません。でも、それはあくまで結果であって、生産性のアップを目標にして「人を癒やす雰囲気」を大事にしたわけではありません。
こういったことはもちろん生産性をそれほど重視しない福祉事業所だからできた、とも言えます。でも、生産性がいつも問われる企業の現場であっても、「人を癒やす雰囲気」は大事だと思います。心を癒やすような音楽が流れているとか、柔らかい光で満たされているとかは職場環境を考える上でとても大事な要素だと思います。職場環境は生産性に大きく影響します。
そこを大事にしようと考えている企業なら、生産性はいまいちだけれど、人を癒やす雰囲気を作ることに関しては誰にも負けない障がいのある人も働くことができます。その人がいることで職場の雰囲気がやわらかくなります。その人がいることで、たくさんの笑顔が生まれます。楽しくなります。
今まであれができない、これができないとマイナス面ばかり考えていた障がいのある人が、実はこんなすてきな人だったんだ、っていう発見があります。その発見はみんなの心を豊かにします。企業そのものを豊かにします。
考え方を変える、発想を変える、というのはそういうことです。そうすれば今までにない、障がいのある人との新しい物語が始まります。