ぷかぷか日記

『むっつり』の中にもの悲しさが

 谷川俊太郎の詩《生きる》の朗読から始まった今期のワークショップも今回で5回目。「みんなの《生きる》」世界をつぶしてしまうものとして「むっつり大王」を考えたのですが、ワークショップをやる中で、「むっつり大王」は実は自分の中にあることがわかりました。社会の閉塞感とか窮屈さは、実は自分自身が作りだしていることの発見はとても大きいものでした。その「むっつり」をどう乗り越えていけるのか、が今回のワークショップの大きなテーマになりました。

「むっつり」が広がっていく様をワークショップの中でやったとき、その「むっつり」に感染しない人たちがいるんじゃないか、という意見がぽろっと出ました。ぷかぷかのメンバーさん達のことです。

 前回のワークショップの記録からその部分を再度記載します。

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 終わってからの反省会。「むっつり大王」を消滅させるためには何をすればいいのか、がなかなか見えてきません。クジラを登場させるにしても、それが「むっつり大王」をやっつける魔法の杖になってはワークショップをやってきた意味がなくなります。

 「むっつりに感染しない人たちもいるんじゃないか」という意見が出ました。ぷかぷかのメンバーさん達のことです。「むっつり」は様々な不満、欲望から生まれます。慎ましく自分の人生を楽しんでいる彼らには、そういう気持ちがほとんどありません。彼らこそ、この「むっつり」に覆われた世界からみんなを救い出すんじゃないか、というわけです。

 ワークショップの中で、いらいらした気分でどうしようもなくなったときや落ち込んだとき、ぷかぷかに行くとなぜか救われた気分になるんです、とおっしゃった方がいました。「ぷかぷかが好き!」という人がどんどん増えているのも、社会の中で生きづらさを感じている人が多いからではないのかという気がします。

 「むっつり」がどんどん増えていって、「むっつり大王」がグワァ〜ンと最大限大きくなって暗転した舞台にスポットライトが当たります。そこにはぷかぷかのメンバーさん。

 コヤマさんはワークショップが終わると必ずお母さんに電話します。

「もしもし、ショウヘイです、きょうは、♪ おひさまーが りんごのー はっぱをとおして ひーかる おひさまーが りんごのー はっぱのかげをつーくるー ♪ と歌いました。たのしかったです」と、電話口で歌うのです。

★★

 このメッセージを芝居の中で、どう表現するのか、がむつかしいところです。

 

 「むっつり」の感染が広がって、社会全体がどうしようもなく息苦しく、恐ろしくなった時をこんなふうに表現します。

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 仮面をかぶったみんなが一斉に振り返ります。ここからオペラ『飢餓陣営』(宮澤賢治作、林光作曲、黒テントの赤い教室「オペラの学校」)のなかのバナナン大将の歌の一節を歌うのですが、そのイントロの最初のピアノの音で一斉に振り返ったときの迫力、恐ろしさはすごいものでした。そのまま舞台の前まで歩き、お客さんに迫ります。

 

 

 ピアニストのあみちゃんが気合いを入れて指導してくれました。

どこかもの悲しさの漂ういい歌です。「むっつり」の広がる世界は恐ろしいのですが、その一方で、一人ひとりに中にはどこかもの悲しさが漂っているのではないかと思いました。その部分があるからこそ、「むっつり」に感染しない人たちに共感するのだと思いました。

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 「むっつり」に感染しない人たちに共感し、人々が自分を取り戻す、というところが、芝居として今ひとつうまく表現できてない気がしていて、本番まであと2回のワークショップで、どこまで作りきることができるか、いちばん苦しくて、いちばん楽しいときです。

 

 

 全体の流れとしてはこんなふうになります。

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 谷川俊太郎の詩『生きる』の朗読は、エリックサティのピアノをバックに一人一行ずつ読み進めます。

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一行読んだら、次の人に詩を渡し、体で形を作ります。次の人はその形につながる形を作ります。そうやってできたのがこれ。

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 たとえば辻さんを出発点にこんなことができるということと。これがワークショップのおもしろいところです。

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ひととおり通して発表したので、全体のイメージがみんなで共有できました。むっつり大王の世界からみんなを救い出すぷかぷかのメンバーさん達の台詞がうまくお客さん達に届くかどうか、そこがいちばんの勝負所です。

 

 

読売新聞の方が取材に来ていました。

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なんともとんちんかんなやりとりに、みんな笑ってしまいました。どんな記事になるのでしょうね。

 

 ワークショップの発表会は2月14日(日)『表現の市場』の中でやります。ぜひ来て下さい。

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