ぷかぷか日記

「支援」という関係から自由になる

 福祉事業所で働く人たちの集まりで上映会と私の話をしました。映画も話もとても興味を持って聞いてくれました。話を聞くときの集中の度合いがすごかったですね。

 映画の中で笑顔が多いことにみんなびっくりしているようでした。この反応は、一般の上映会ではなかなか見られないことです。ということは福祉の世界ではこういう笑顔がなかなか見られないのかもしれません。

 「こんな笑顔にするにはどうしたらいいですか?」

というストレートな質問も出ました。

 みんなが笑顔でいるのは、いろんな要素があると思うのですが、とりあえず三つくらいあげました。

 

   ①仕事が楽しいこと、

   ②彼らのありのままの姿で働けること

   ③フラットな関係であること

 

 ①はほかのお店に負けないくらいおいしいパン、お惣菜、お弁当を作っています。「障がいのある人が作ったから買ってあげる」という関係ではなく、「おいしいから買う」という関係こそ大事にしています。その関係を維持するために、日々おいしいものを作る努力をしています。

 区役所でほかの事業所と弁当販売の日が重なったことがありました。「じゃあ、お互い競争すれば、もっとおいしいものができるんじゃないの」と私は考えたのですが、相手は「いや、うちは福祉だから競争しません」などといいました。

 本気でいいものを作ろうという気持ちがないのだと思いました。それを「福祉」という言葉でごまかしている。

 いいものを作ろう、という気持ちがなければ、いいものは生まれません。いいものが生まれなければ、売り上げも伸びず、職場の活気も生まれません。当然、笑顔も生まれません。

 笑顔は「職場の活気」を表現する一番のバロメーターだと思います。

 「うちは福祉だから競争しません」」という言葉は、仕事をする場として、何かとても大事なものをはじめから放棄しているように思います。

 福祉の世界も、もっとビジネスに力を入れるべきだと思います。いい商品を作り、それが売れれば、仕事が楽しくなります。みんなの仕事のモチベーションが上がります。みんなの笑顔が自然に増えます。笑顔が増えるとお客さんも増え、更に売り上げが増える、という好循環が生まれます。

 

  ②障がいがあってもなくても、自分らしく働けること、それは笑顔の一番の源泉です。

 「障がいのある人たちは社会に合わせなければいけない」という社会の圧力の強い中で、彼らのありのままの姿ををどこまで大事にできるか、です。私自身は社会に無理に合わせようとするぷかぷかさんたちの姿が気色悪かったので、社会に合わせることをやめました。社会の圧力を押し返すような大事な決断をするとき、自分らしく働くことを大事にしよう、といった美しい理念だけでは負けてしまいます。「気色悪い!」といった泥臭い感覚の方が、こういうときはかえって強い気がします。結果的には、「ああ気色悪、もうだめ!」というところで出てきた決断をたくさんのお客さんが支えてくれました。そのままの姿で働くぷかぷかさんが好き!と。これは全くの想定外でした。

 

 ③障がいのある人たちと私たちはどこまでフラットな関係を築けるか、は私たちの生き方が問われる問題だと思います。彼らの前に、どのように立つのか、ということです。上から目線で立つのか、それともフラットな目線で、フラットな関係で立つのか。

 立たれる側から考えれば、上から目線で目の前に立たれると、あんまりいい気分ではありません。笑顔になれる気分ではありません。相手がフラットな目線であれば、それは仲間の一人であり、当然笑顔でおつきあいします。

 彼らとフラットな関係を築いて何が一番いいかというと、彼らと新しいものをいっしょに生み出すクリエイティブな関係になるからです。創造する喜びをいっしょに分かち合うことができます。表現の市場の舞台は、その創造する喜びが満ちあふれていると思います。

 ぷかぷかのお店も、パンやお惣菜、お弁当だけでなく、毎日新しい価値をいっしょに創り出しています。

「障がいのある人たちは地域を耕し、地域を豊かにしている」というのはぷかぷかのお店が創り出した今までにない新しい価値です。パン、お惣菜、お弁当だけでなく、文化という面でもクリエイティブな活動をやっているのです。

 

 

 今回の集まりで気になったのは、何かにつけ「支援」という言葉が出てくることです。障がいのある人たちと「支援」の関係にあることから、なかなか自由になれないのだと思いました。「支援」という関係にいる限り、フラットという関係はあり得ないし、クリエイティブな関係もあり得ません。目の前に素敵な人たちがいるのに、クリエイティブな関係が切り結べないなんて、もったいない話だと思います。その気になれば1+1=5くらいの価値が生まれるのに、1+1=1にとどまってしまうのは、実にもったいないです。

 1月8日のブログに

 

 映画『Secret of Pukapuka』の中で、近所のオーヤさんが、

「前はぷかぷかさんを上から目線で見てたかもしれないけど、ぷかぷかさんとおつきあいするようになってから、自分の方がえらいと思わなくなりました」

というようなことをおっしゃってますが、まさにこの感覚です。フラットな関係はここから生まれます。誰かに言われてやるのではなく、自分からそのことに気がつくこと。

 

 福祉事業所の人たちも、そのことに気がつくとき、ようやく「支援」という関係から自由になるのだと思います。もっともっと楽しいことをいっしょにやることです。心の底からいっしょに笑う、ただそれだけです。

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