テラちゃんはお客さんが来ると、前置き抜きで、いきなり友達になってしまいます。「はじめまして」ではなく「Facebookやってますか」「友だち申請していいですか」とスマホを借りて、自分でFacebookのページを開き、あっという間に友達になってしまいます。ふつうに見ると、かなり乱暴なやり方です。でも、たいていの人は「あっ、何、この人」と、びっくりしながらも、なぜか友達になってしまいます。テラちゃんの人柄ですね。
そんなテラちゃんとの出会いを上映会の日の午後のトークセッションでゲストの松井さん(NHKデスク)は、こんなふうに語ってくれました。
〈 はじめてぷかぷかを取材した日、いきなり「Facebookやってますか」とかなんとか早口でいろいろいわれ、ちょっとどぎまぎしてしまったんですが、テラちゃんのやわらかい手でぎゅっと握られたり、テラちゃんのあたたかいからだがぴったり寄り添ってきていろいろ話しかけられたりする中で、「ああ、障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がいいんだ」って、実感しました。〉
相模原障害者殺傷事件のことであちこち飛び回りながらも、事件に対してどういうメッセージを出せばいいのか悩みながらの取材だったのではないかと思います。そんなときにテラちゃんと出会い、「あ、これだ!」って思うような発見があったとおっしゃってました。
「障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がいい」というメッセージは、障がいのある子ども達、青年達との出会いから生まれた言葉です。ですからなんとなく理屈で理解するだけでは、言葉にリアリティがありません。
言葉にリアリティがないと、犯人の言う「障害者はいない方がいい」に対し、「それはちがう」と自分の言葉で言い切れません。借り物の言葉ではなく、自分の体から発する自分の言葉で「それはちがう」と言っていかないと、犯人の言葉に負けてしまいます。
そういう意味で、相模原障害者殺傷事件を取材中の松井さんがテラちゃんと出会い、「障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がいい」と実感した、というのはとても大きな意味があったと思います。
松井さんにそう実感させたのは、テラちゃんの特異なキャラクターによることが大きいのですが、そのキャラクターが自由に発揮できるぷかぷかの環境がやはり大きいと思います。
ぷかぷかではテラちゃんに限らず、みんな自由に振る舞っています。その方が彼らの魅力が伝わると考えるからです。私たちが思う規範で縛ってしまうと、彼らは彼らでなくなります。せっかくの魅力を見えなくしてしまいます。社会の宝が見えなくなるなんて、もったいない話です。
彼らの魅力は社会に潤いをもたらします。社会をやわらかく耕します。
区役所の外販でいつも行列ができるのは、お客さんたちが彼らの魅力に気がついているからだと思います。
先日のぷかぷか上映会のアンケートは、そういう人がどんどん増えていることがよく見えます。これだけたくさんの人が、こんなにもステキなアンケートを書いてくださったことは未来に向けての大きな希望だと思います。ぷかぷかさん達と一緒に「いい一日だったね」って言いあえる日々を黙々と作り続けてきたことの結果だったと思います。
相模原障害者殺傷事件を超える社会は、こうやって彼らの魅力に気づく人を増やすことで少しずつ実現していくのだと思います。
テラちゃんと出会った松井さんは、NHKおはよう日本でぷかぷかの活動を紹介する映像を2本作ってくれました。その一本が「19のいのち」というサイトで見られます。
事件に向き合う人たちとして高崎の紹介も載っています。
障がいのある人たちと出会うこと、それは社会を、お互いにとってよりいいものにするための出発点になります。
小さな子ども達がこうやってテラちゃんと出会うことの意味を考えるとき、ステキな未来が想像できます。
テラちゃんはhanaちゃんにとても優しいです。テラちゃんもhanaちゃんも、まわりにたくさんのファンを作っています。二人ともそうやって社会を耕しているのです。
テラちゃんとリエさんに囲まれて幸せそうな顔の松井さん。取材に来て、こんないい顔ができるのがぷかぷかです。
テラちゃんとFacebook友達になってしまった朝日新聞の船崎さん。この時の取材が2017年7月25日の記事になりました。