ぷかぷか日記

やまゆり園事件から4年

 もうすぐやまゆり園事件が起こってから4年になります。裁判があり、被告に死刑が宣告されましたが、どうしてあのような事件が起こったのか、何一つ解明もされず、なんのための裁判だったのかと思います。裁判が終わるとマスコミが取り上げることもなくなり、人々はどんどん忘れていきます。

 あれだけひどい事件だったので、社会はきっといい方向へ変わって行く、と私は事件当時思っていました。でも、この4年を振り返ると、いい方向へ変わるどころか、どんどんひどくなっている気がします。

 

 やまゆり園では相変わらず虐待が続き、つい先日、北海道の老人施設では介護職員がお年寄りの耳を引きちぎるという信じがたい事件が起きました。

 川崎では普通学級で学びたいという障がいのある子どもを、あろうことか教育委員会が排除するということもありました。かながわ憲章に「私たちは、障がい者の社会への参加を妨げるあらゆる壁、いかなる偏見や差別も排除します」と書いてあるにもかかわらず、です。

 障がいのある人たちのためのグループホームを建てようとすると

「他所でやってください!この地域は普通の家族で住む事しか認められません。そんな施設が近くにあったら、家で安心して寛げない。怖い。」

と反対運動が起こります。その地域には「障害者はいない方がいい」とやまゆり園事件の犯人と同じことを言っているのです。

 

 あの忌まわしい事件から4年たっても、結局社会は何も変わっていません。

 その変わらない社会について、あーだこーだ言っても、社会は変わりません。あーだこーだ言うにも、それなりのエネルギーがいるので、言うだけソン!だと最近は思っています。

 結局は、私たち自身が事件を超える新しい社会を作っていく。それが一番だと4年たった今しみじみ思うのです。

 

 ぷかぷかは事件のはるか前から

「障がいのある人たちとはいっしょに生きていった方がいいよ」「その方がトク!」

と言い続け、そういったことを実感できるお店を作り、お店の外でもパン教室や演劇ワークショップ、上映会、講演会など、ぷかぷかのメッセージに共感できる様々な活動をおこなってきました。

 そういった中で、

 「ぷかぷかさんが好き!」

と思うファンがたくさん現れました。

 「障害者はなんとなくいや」

と思う人の多い社会の中で

 「ぷかぷかさんが好き!」

という人たちが現れたことは画期的なことだと思います。

 「彼らといっしょに生きていこう」

という新しい社会の始まりと言っていいと思います。事件を超える社会です。

 しかも「ともに生きる社会」を作ろうとか、「共生社会を作ろう」なんて言葉をひとことも言わず、そういう社会が始まったところがおもしろいところです。そこにぷかぷかのチカラを感じます。社会をいい方向に変えるチカラです。

 

 彼らといっしょに生きると何が生まれるのか、といったことも、お店を運営する中で目に見える形で表現してきました。

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 こういったものは、社会を豊かにします。だから彼らは社会にいた方がいいのです。

 

 やまゆり園事件の犯人は「障害者は不幸しか生まない」とか「生きている意味がない」といいました。これらの言葉には、彼が働いていた現場での障がいのある人たちとのおつきあいの貧しさが露骨に表れています。

 「障害者はいない方がいい」などと言った彼は障がいのある人と「いい一日だったね」ってお互い言えるような日々を過ごしたことがなかったのだと思います。

 そういったことを考えていくと、事件は障がいのある人たちとどういう関係にあったのか、ということが大きく影響しているように思います。

 犯人がぷかぷかで働いて、写真のような関係を作っていれば、事件は決して起きなかったはずです。

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 ぷかぷかは演劇ワークショップにも力を入れています。ぷかぷかさんと地域の人たちとの芝居作りです。

 一緒に芝居を作っていくと、ぷかぷかさんたちの発想の自由さ、豊かさが際立ちます。彼らが演劇ワークショップの面白さ、豊かさを支えていることがだんだん見えてきます。

 彼らに向かって「あなたが必要」「あなたにいて欲しい」と“切実に”思うようになります。彼ら抜きでもうワークショップはできない、というか、そんな感じです。

 そんな思いで作った芝居を舞台に上げます。決して整った芝居ではありません。どちらかといえばごちゃごちゃした芝居です。それでも、彼らとはいっしょに生きていった方がいい、という思いはストレートに伝わります。

 やまゆり園事件への、明確なメッセージです。

 

 7月25日(土)、26日(日) 第6期演劇ワークショップ記録映画をYouTubeで公開します。ぜひ見て下さい。

 

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