ぷかぷか日記

なくてはならない存在

  先日のワークショップのふり返りの時、発表会で舞台監督をするナルさんが

「ワークショップは障がいのある人たちを支えているように見えるが、ほんとうは、彼らこそが、舞台を支え、スタッフはじめ、みんなを支えていることが見えてくるといい」

と話していました。

 ナルさんは30年ほど前、瀬谷で養護学校の生徒たちと地域の人たちでワークショップをやっていた頃、劇団「黒テント」から進行役の一人としてきていました。進行役も、企画した私も、地域の参加者たちも、最初は障がいのある人たちを支える、といったことをワークショップの一番の目的としていました。

 ところが実際にワークショップを始めて見ると、支えているはずの彼らが、逆に私たちを支えていることにみんな気がつき始めました。彼らがいるからワークショップの場が楽しいし、楽しいから人が集まってきました。

「彼らを支えているつもりだったけど、支えられてるのは、こっちじゃん」と、気づいた頃から、彼らとの関係が変わってきたのでした。

 あれができない、これができないと社会から邪魔者扱いされている彼らが、ワークショップの場では、邪魔どころか、いないと困るような存在になっていたのです。ぜひ一緒にいてほしい、あなたが絶対に必要、と参加者みんながごく自然に思えるような、そんな関係が知らない間にできあがっていたのです。ここが痛快というか、おもしろいところだと思います。

 なくてはならない存在。ワークショップの場では、そんな風に彼らのことを受け止めていました。社会とは全く逆です。社会の中で、彼らが「なくてはならない存在」になったとしたら、社会は大きく変わります。

  ワークショップは、ですから、私たちが考える以上に、社会を変えていく、何かすごい力を持っているのではないかと思うのです。

 ぷかぷかの『障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がいいよ』というメッセージは、この頃から私の中でむくむくと頭を持ち上げていたんだと思います。

楽しい躍動感に満ちていて

ワークショップに参加した方から感想が届きましたので紹介します。

土曜日は、ワークショップに参加させていただきまして、ありがとうございました。

部屋に入った瞬間、楽しい躍動感のある気に満ち満ちていて、一緒に気分が高揚しました。

短時間の参加でしたが、帰宅後、高崎さんが意図されていることをもう一度感じたくなり、ワークショップの企画書を再読いたしました。

私自身は、はじめての場所、すでに形となりつつある空間に入ることで、多少の緊張感や、自分自身を監視する自分の視線に、まだまだ、ぎくしゃくしていました。そして、高崎さんと、みなさんが創り出そうとしている「何か」をキャッチして、それに沿いたい、という思いでいました。

 

企画書を再読して、私自身が意図しようと感じたことは、

一人ひとりが自然体で、豊かな素のままでいること、そして、どんな表現もジャッジしないことです。まずは、自分から。

とても、当たり前なことですが、

こちらが開いていなければ、共に居る人も開かない、個性あふれるみなさんの、自由な表現、発想力を、十分に待ち、一緒に楽しんでいきたいと思います。

高崎さんが、おっしゃていた、ぷかぷかさんのテーマ。命との向き合い方。

まさに、様々な個性を持った命が集い、どのような化学反応が起こるのか、今から楽しみです。

 

また、舞台監督の方が、おっしゃっていたこと、

「障がいのある人たちを支えているが、その方たちこそが、舞台をつくり、スタッフを支えている場面が見えているといい」

という言葉に共感します。

そして、ぷかぷかスタッフの小田さんが、メンバーさんが職場とまた異なる姿を見せていて驚いた、とありますが、

誰しもが、今ある姿は、その人の一部であり、すべてではない、無限の可能性を秘めていることを改めて感じ、みなさんの一部をもっともっと感じていきたい、と思いました。

まーさんを舞台に立たせた心の動き

  ぷかぷかの4周年のイベントでやったデフパペットシアターのマキノさんのパフォーマンスが「かっこいい!」と絶賛し、ぜひ弟子入りしたいと言っていたまーさんが、ワークショップに参加しました。ワークショップはデフパペットシアターにいろいろ協力をお願いしていて、マキノさんのパフォーマンスがあるからです。

 マキノさんは「演技がうまいとか、おもしろいとか言われたことはありますが、かっこいい!と言われたのは初めてだったので、とてもうれしい」と言ってました。

 ワークショップが始まってからも、なんとなく壁際で「俺はいいよ」という感じで、帽子を深くかぶり、マスクをしてうずくまっているまーさんに、マキノさんはこまめに声をかけ、何とか中に引っ張り込んでくれました。

 「あれは、声をかけて下さい、と言うポーズですよ」とマキノさんは言っていましたが、マキノさんが声をかけると「待ってました」という感じでうれしそうな顔してみんなの中に入ってきました。

 一緒に人形作りを始めてから、まーさんに笑顔が出始めました。作っている人形は『森は生きている』に登場する12月(月)の神さまの一人5月の神さまです。

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 このあと季節毎に簡単なお話を作ったのですが、まーさんは5月の神さまを持って登場し、鯉のぼりがはためいていました。

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  まーさんはマキノさんに弟子入りするために、まずはマキノさんの稽古を見に行くことにしました。デフパペットシアターの稽古場は川崎の外れにあって駅からも遠く、とても不便なのですが、それでもまーさんは行ってみる、と言ったので、一緒に行くことにしました。

 これでようやく気持ちが前向きになり、仕事にも来るかな、と思っていたのですが、今日は休んでしまいました。今まであの手この手でぷかぷかに何とか来てもらっていたのですが、今回はもうやめました。ぷかぷかを辞めても、何か新しい展望があるわけではありません。ただ気持ちが仕事に向かないだけなのです。

 マキノさんと一緒に人形を作り、舞台に立って動き回った、と言うことは、仕事では決して見られなかった心の動きがあったのだと思います。まーさんを舞台に立たせた心の動きこそ、今信じたいと思うのです。明日まーさんと連絡とって稽古場に行く日にちの約束をしようと思っています。

 

 

人形に魂を入れて 第2回ワークショップ

 第2回、「みんなでワークショップ」をやりました。今回は12月(月)の神さまの人形を作りました。こういうものつくりは場がものすごく集中して、ワークショップらしい、とてもいい雰囲気でした。

 直径15ミリの丸棒に新聞紙を丸めて芯にした頭にじぶんの好きな布を巻き付けて人形を作っていきます。いろんな布があって、その中から自分の好きな色、柄の布を選んで人形を作る作業は、ふだんの仕事にはない楽しさがあって、ぷかぷかの利用者さんにとっては、新鮮な体験だったようです。

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 人形に魂を入れるのがむつかしかった、と言った方がいましたが、それでも一生懸命思いを込めて作ると自然に魂がこもるのか、人形を横たえるとき、まるで赤ん坊を横たえるように、丁寧に丁寧に横たえていました。

 できあがった人形を手に持ってお披露目するとき、デフパペットシアターのスタッフの方が、人形の口から息を吸い込むように息をしましょう、とおっしゃっていましたが、人形と一体化するというのはそういうことかと思いました。

 人形と一緒に楽しそうに歩いたり、悲しそうに歩いたり、怒って歩いたり、ジュンベの音で支えてもらいました。

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  春、夏、秋、冬の四つのグループに分かれ、それぞれの季節の「はじまり」「中程」「終わり」を入れたお話を作り、発表しました。

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  次回は今回作った季節のお話に、マツユキソウやわがままな王女様のお話を入れていく予定です。

 次回は8月16日(土)です。いっしょにやってみたい方、連絡下さい。 

 電話453-8511(NPO法人ぷかぷか 高崎)もしくは

  メール pukapuka@ked.biglobe.ne.jp でお問い合わせ下さい。

 

 

 

 

 

 

おひさまの台所 順調にスタート

 「おひさまの台所」が順調にスタートしました。パン屋よりもたくさんお客さんが来ています。

 お総菜屋のアイデアは、1年ほど前に給食の担当になったイモさんの料理がすばらしくおいしくて、なんだか自分たちだけで食べるのはもったいない気がしていました。あるとき、

「おかずを多めに作って、お惣菜屋をやったらはやるんじゃないかなぁ」

と言い出したのがそのそもの始まり。それにパン屋の隣の空き店舗がくっついて「ぷかぷか三軒長屋」の構想が浮かびました。

 その後、イモさんの昔の仲間のタギさんがカフェに入り、ランチの味がぐんとアップし、お客さんがずいぶん増えました。このタギさんの作るお惣菜もおいしくて、マザーズの社長が絶賛していました。イモさんの作る給食も気に入って(社長はぷかぷかの雰囲気を知りたいとわざわざ給食を食べに来ました)、この味は飲み屋に出しても恥ずかしくない、とべたほめでした。

 このイモさん、タギさんに、この春、マクロビ料理を作る若いアイさんが加わって「おひさまの台所がスタートしたのですが、毎日毎日新しいメニューが登場し、三人の実力を見た気がしました。

 とにかく材料さえあれば、チャッチャッと作ってしまう感じで、未だにレシピなどといったものは見たことがありません。アイさんは毎日野菜から元気をもらいます、といっていましたが、三人とも料理をしているときは本当に元気です。

 イモさん、タギさんの料理は昔からの日本の味、お袋の味で、どこかホッとします。アイさんのマクロビ料理は今まで味わったことのない絶妙なおいしさで、この二つのコラボが「おひさまの台所」です。

 「今日のおすすめお惣菜」としてホームページに毎日写真とコメントをアップしています。「おひさまの台所」のページには、そのお惣菜の写真が毎日4,5枚増えていきますので、1年後にはすばらしい記録ができあがると思います。

 

http://pukapuka-pan.xsrv.jp/index.php?おひさまの台所

 

 

 

 

 

しんぶんがにぎやかに

 ぷかぷかしんぶん7月号ができあがりました。今までA4の紙を両面印刷して半分に折り、4ページのしんぶんでしたが、今月から「おひさまの台所」と「アート屋わんど」のページが増え、全部で6ページになりました。それぞれの担当が書いているので、ページ毎に雰囲気が違い、とてもにぎやかなしんぶんになりました。

 ぷかぷかは2010年の4月からスタートし、8月から「ぷかぷかしんぶん」がスタートしました。月一回、1000部くらいからスタートし、今は5000部印刷して配布しています。今月で48号になります。紙面作りは、ほとんど一人でやってきましたが、1年ほど前から、パン屋とカフェのページを担当者に任せるようになり、しんぶんの雰囲気にも幅が出るようになりました。そして今回は私を入れて5人で作っていますので、本当ににぎやかな紙面になりました。

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賭場で壺をふる男が取り戻した豊かさ

 ある助成金の贈呈式で、障がいのある子どもたちの支援をしているグループの発表がありました。個別支援計画をしっかり立て、支援目標もきちんと設定していて、とてもまじめに活動しているグループでした。ただ、支援、支援で、途中で、「もういいよ」という気分になりました。

 人は誰かを支援するのが好きなんですね。生き生きとした表情で語れば語るほど、この人は支援することで自分を支えているんだと思いました。(この業界にはそういう人が多いですよね)

 とてもいいことだとは思いますが、支援というのはやっぱり上から目線の関係で、一緒に生きていく関係とは少し違う気がします。ですから一緒に生きていくところから生まれる豊かさもどこかへ行ってしまいます。

 

 藤沢周平の「暁のひかり」という小作品があります。窖(あなぐら)のような賭場で壺ふりをやっているやくざの男の小さな物語です。

 明け方、賭場から出ての帰り道、足の不自由な少女に出会います。少女は竹の棒をついて一生懸命歩く練習をしていました。足がよろけ、倒れてしまいます。男は助けようとしますが、

「私にかまわないで、一人で歩く稽古をしているんだから」

と、断ります。その拒絶が男の胸に快く響きます。明るく澄んだ声音。

からだも竹もぶるぶる震えるほどの力を振り絞って少女は立ち上がろうとします。

「ほら、もうちょっとだ」

と、男は思わず声をかけます。倒れそうになったらいつでも抱き留められるように両手をさしのべます。

 ついに少女は一人で立ち上がります。竹に縋って立つと、少女は額の汗を拭いて、男を見て笑います。

「よかったな」

男も笑います。

 そんなやりとりが、やくざの世界に身を置く男のすさみきった心にあたたかな、幸せな気持ちを呼び起こします。少女に鏡を作ると約束し、堅気の世界に戻ろうとしますが、甘い結末はありません。

 

 足の不自由な少女との出会いが人にもたらす豊かさを、窖のような賭場で壺を振るやくざの男の心の微妙な変化を通して、鮮やかに描き出しているように思いました。

  障がいのある人たちと一緒に生きていく、というのは、私たちが見失っている豊かさをもういっぺん取り戻すことなのだと思います。そして、ぷかぷかはこういう豊かさの種を少しずつ街に蒔いて、街を耕していこうと思うのです。

 

 

 

マキノさんがかっこよかったです

 まーさんは仕事がとてもよくできる方で、戦力としてとても期待をしているのですが、いまいちモチベーションが上がらないというか、仕事がおもしろいと感じてないようです。言われたことはよくやるのですが、そこから先を自分で考えて前へ進むと言うことがありません。

 パンの「焼きの仕事」は焼き上がったパンを見る楽しさがあり、一番おもしろい仕事なのですが、それを任されながら、もっとやってみよう、という気持ちがなかなか出てきません。

 仕事に前向きになる気持ちは、自分でおもしろい仕事をたくさん経験し、その中で培っていくしかないと思うのですが、そのおもしろい仕事を経験しながら、なおもそういう気持ちが出てこない方はどうすればいいんだろうと思います。

 朝になると、毎日のようにまーさんは暗い顔して

「もうぷかぷかをやめます」

とか言ってきます。ぷかぷかを辞めて何かもっと楽しい仕事をする、というわけでもありません。ですからぷかぷかを辞めてほかのところへ行っても、何も変わりません。

「まーさんが今一番やりたいことは何?」

「なにもありません」

「最近おもしろいなって思ったことは?」

「4周年の記念イベントでやったデフパペットシアターのマキノさんのパフォーマンスです」

「あの聾唖の人のパフォーマンス?」

「そう、すごくかっこよかったです」

「ああいうのやってみたいんですか?」

「はい」

「じゃぁ、マキノさんに弟子入りしますか?」

「僕にできるかなぁ、多分だめですよ」

「そんなことやってみなきゃわからないよ。はじめからだめだ、なんて言ってたら何もはじまらないよ。電話して頼んでみるから、とにかく一緒にマキノさんの事務所に行ってみよう」

ということで、すぐにデフパペットシアターに電話。あいにくマキノさんは種子島に公演に出かけていて、今月末でないと帰ってきません。それでもデフパペの制作の方が取り次いでくれて、何とか会いに行けそう。

 マキノさんに会って弟子入りを申し込むにしても、かなりハードルは高いのですが、それでもまーさんの心が少しでも前向きに動いてくれれば、と思っています。

 そのマキノさんのパフォーマンスが22日(日)午後7時からNHK Eテレの「みんなの手話」で紹介されます。そのマキノさんは6月から始めた「みんなでワークショップ」で進行役の一人として活躍しています。

http://www.nhk.or.jp/heart-net/syuwa/calendar/20140622.html#contents

おひさまの台所 開店しました。

 おひさまの台所が開店しました。おとぎの国の赤い扉から王子様とお姫様が登場し、開店のお知らせをし、お惣菜のメンバーさんで「あさ」という詩を朗読しました。ま、こんなことは別にやらなくてもいいようなものですが、メンバーさんたちは緊張しながら一生懸命朗読していました。ふだんの暮らしの中に「詩を朗読する」時間が持てるなんてすてきだと思います。

 写真は詩の朗読が終わったあと、店長あいさんがあいさつしているところです。「おひさまの台所」の看板の文字はあいさんが書きました。

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 お客様が次々にやってきて、慣れない量り売りのレジが大変でした。

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 商品ケースの横の棚にマクロビの本がさりげなく置いてあったりして、なかなかいい雰囲気です。

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おひさまの台所を作ってくださった小林さんからのプレゼントです。すばらしい!のひとことです。このセンスでおひさまの台所を作ってもらいました。商品ケースの下に河原の石が埋め込まれていますが、パン屋でもこの石が使われています。

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おひさまの台所 看板ができました。

 

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 左側の赤い扉からは、明日、王子様とお姫様が出てきて、

 「おひさまの台所、今日、はじまります!」

と、宣言します。そのすてきな「今日」に「おはよう」ってあいさつする詩をメンバーさんが朗読します。

 店長あいさん(写真の青いシャツを着た女性)のあいさつがあり、いよいよお総菜屋さんスタートです。

 みんなわくわくしています。みんながわくわくするようなお店にしたいなと思っています。どうぞよろしくお願いします。

 

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