ぷかぷか日記

相模原障害者殺傷事件を超えるために

  • 「楽しい!」と言って、こんないい顔
    やまゆり園事件で重傷を負い、この9月からやまゆり園を出て自立生活を始めた尾野一矢さんがマイカップとソーサーを作りに来ました。粘土はほとんどさわったことがない感じで、介護の人に手伝ってもらいながらなんとか形を作りました。  ウォーミングアップでお地蔵さんを作りました。 一矢さんがヘラで目をあけると、味のあるお地蔵さんができました。  マイカップを作るところは残念ながら写真が撮れなくて、気がついたら形ができあがっていました。ちょっとうまくできすぎた感じなので、次回はもう少し味のあるマイカップを目指して一矢さん自身に作ってもらおうと思っています。  このあとソーサーを作りました。マイカップやソーサーは自立生活に彩りを添えます。朝、飲むお茶がおいしくなります。  次回は自立生活に使うお皿や鉢も作ってもらおうと思っています。お皿や鉢には絵付けもします。花を飾る花瓶や一輪挿しも作ってもらう予定です。一矢さんがくつろぐ部屋に、一輪の花があると、それだけで一矢さんの自立生活がちょっと華やぎます。そういったお手伝いをぷかぷかはやります。  一矢さんの似顔絵をぷかぷかさんたちが描きました。すごく楽しい似顔絵です。 顔を少しアップにしたもの 顔を少しアップ お父さん、お母さん、一矢さん、介護の人で、絵と文字のデザインを選びました。 そうやって決まったのがこの2種類。マスコミなどの取材が多いので、2種類200枚を注文。 似顔絵Tシャツもできました。肩書き、名前も入ります。 似顔絵作者のアヤさんがTシャツの絵の説明  自立生活を応援する人たちはこれを着て街を歩くと楽しいですね。「みんなで楽しく自立生活始めようぜ」なんていいながら。  一矢さん、ぷかぷかがとっても楽しかったようで、帰りがけ、「楽しい!」と言って、こんないい顔しました。   前回来た時は緊張してか、ご飯も食べられなかったのですが、今回は陶芸をやったり、ご飯食べたり、できあがった似顔絵Tシャツ着たり、名刺を注文したり、何よりもぷかぷかの楽しい雰囲気をいっぱい感じ取って「楽しい!」って言ってくれたのだと思います。  マイカップ、ソーサーの素焼きができあがったら絵付けに来てもらう予定です。こうやって世界がどんどん広がるといいなと思います。  11月14日(土)の上映会にも来る予定です。名刺を持っていきますので、名刺交換する人はぜひおいで下さい。Tシャツも着ていきます。ひょっとしたら販売もするかも。
  • ぷかぷかさんの発想は、自分には思いつかないことばかりで刺激的でした。
     先日、創英の学生さんたちとぷかぷかさんで簡単な演劇ワークショップをやりました。表現活動を通しての出会いです。笑い顔を少しずつ膨らませて次の人に送ったり、デライラというすっごい美人になってみたり、ムンクの叫びをやってみたり、ある朝、平野先生が大学の門のところでムンクの叫びをやっていました、どうしたんでしょう、というお話をグループで四コマ漫画のような感じでまとめたり、といったことをやりました。表現というのはそれぞれが出てすごく楽しい時間でした。  「ムンクの叫び」         この顔をやりました。  普段、こんな顔はできません。でも、演劇ワークショップの場では、こんな顔もできてしまうのです。それが、「自由になる」ということです。そして「自由になる」中で、いつもとちがう出会いがあります。それが今回の演劇ワークショップで目指したものでした。その結果、こんな素敵な感想が出てきました。 ・ぷかぷかさんの発想は、想像の斜め上をゆくくらい豊かで、私では考えつかない内容を思いつくので、こんな考えもあるんだと驚きました。すごく楽しかったです。 ・一人で作るのではなく、4,5人で物語を作るというのは難しかったですが、様々な考えや発想があって驚くばかりでした。 ・どんなことにもキラキラ笑顔。 ・すべての人を笑顔にできる力を持っていて、とってもあったかい空間に癒やされました。  泣きの顔を送る ・ぷかぷかさんの発想力はすごいなと思いました。自分には思いつかないことばかりで刺激的でした。ぷかぷかさんの思いついたことに意見を加えたりして、一緒に劇を作りました。自分の意見や気持ちをしっかり持っていて、なかなか曲げなかったため、どのように意見をまとめたらよいか、難しかったです。 ・ぷかぷかさんと関わると、自然と笑顔になれて、すごいなと思いました。終始明るい雰囲気で授業をすることができて、これがぷかぷかさんの力なのだと思いました。 ・一つの活動をいっしょにやることで、みんな笑顔になれる。表現力豊かなぷかぷかさん。 デライラというすっごい美人をやってみる ・とても楽しい時間を過ごせました。表現力がすごくて驚きました。じゃんけんゲームの「サムソンとデライラ」の時は「これをこう!」と言ってみんなに教えてくれたり、グループで3連勝することができてうれしかったです。 ・物語作りでは、文にあわせた顔のマークを描いてくれたり、漢字を見ながら用紙に書いてくれたり、ポーズを一緒に考えてくれたり、楽しい時間でした。 ・ぷかぷかのみなさんと楽しい物語作り。ニコニコマーク、悲しいマークを描いてくれて、ニコニコ、泣き泣きの表現がたくさんのムンクストーリーの完成。とっても楽しい表現の時間が過ごせました。 モナリザをやってみる ・一緒に体を動かして、前回(すごろくワークショップ)よりも距離が縮まったように感じた。発想力がとても豊かで、学ぶことがたくさんあると思った。この社会には、障がいのある人は重要で、人の考えを変える力があると思った。こんな考えや、こんな表現があるんだと学ぶことができて、本当によい経験ができたと思う。 ・表現力、発想力が豊かなぷかぷかさん  いっしょにいるだけで心がぽかぽか  笑顔がいっぱいあふれる空間 ・距離感の縮め方が上手で、会うのは2回目なのに、こんなに素直に感情を表現してくれたり、ハグしてくれたり、とてもうれしかったです。 ・距離感の縮め方がナチュラルで、超上級者。  ぷかぷかさんは物語の絵をどんどん描いていき、発想の豊かさにちょっとびっくり。学生さんたちはちょっと手が出ない。  ここをこうすればいいんだよ、とアドバイス。学生さんはタジタジ。  芝居もぷかぷかさんが仕切る。すっごく楽しい!  わずか30分くらいで、こんなにいい出会いがありました。ぷかぷかさんたちの持っているチカラに学生さんたち、ちょっと驚いたようでした。フラットに向き合う、というのはこういうことです。  「何かやってあげる」とか、「できないことをできるようにしてあげる」とかではなく、「一緒に何かをする」「一緒に何かを作り出す」という関係の中で、いろんな新しい気づきが生まれます。学生さんたちの感想を見ればそれがよくわかります。  こういった気づきは、彼らとの関係の中で豊かなものを生み出します。   感想に「ぷかぷかさんの発想力はすごいなと思いました。自分には思いつかないことばかりで刺激的でした」というのがありましたが、だからこそ、彼らと一緒に何かをすると、そこから生まれるものは、私達の想像を超える面白いものです。それは今までにない新しい価値といっていいと思います。新しい価値は社会を豊かにします。  この「社会が豊かになる」ということ、それが彼らと一緒に生きる意味です。  11月14日(土)の上映会には学生さんたちも参加します。授業の中での気づきも発表してもらおうと思っています。学生さんたちの気づきこそが事件を超え、社会を豊かにしていくものだと思います。  
  • 実際に会って、ぷかぷかさんのこと、いっぱいわかった気がする。
    10月15日、創英大学でぷかぷかさんと学生さんですごろくワークショップ。  サイコロを転がして、目の数だけ進み、そこの問いにひとりひとりが答えるだけで、自然に笑顔が生まれ、関係ができていきます。  すごろくワークショップを40分くらいやって、その時の気づきを5行くらいの詩に書き、発表してもらいました。ごちゃごちゃ書くのではなく、5行くらいの詩にまとめるところがポイントです。自分の内面に集中できます。  みんなの前で発表してもらったのは、それぞれの気づきをみんなで共有したかったからです。人の気づきを聞くことで、気づきの幅が広がります。  それぞれのぷかぷかさんとの新鮮な出会いが感じられました。授業後に書いてもらった感想と併せて学生さんたちの素敵な言葉たちを紹介します。   ・素直なキモチは伝えづらいけど、スラスラ言えるって 素晴らしいな。 ・映像(前回の授業で『Secret of Pukapuka』と共生社会をテーマにしたEテレの映像を見た)だけだとわからなかったことが、実際に会って、ぷかぷかさんのこと、いっぱいわかった気がする。 ・いっぱいいっぱい笑えたよ。 ・質問の中で自分の性格や家族について思うことなど、答えることが難しかったり、恥ずかしいなと思ってしまうことも、はっきり、しっかり教えてくれた。カッコいい。 ・目を見て話しを聞いてくれて、とてもうれしい気持ち。 ・自分自身を強く持っていてかっこいい。 ・じぶんの好きなこと、好きなものを笑顔いっぱいで話してくれて、キラキラしていて  素敵。 ・映像だけではなく 、実際に会って話してみると、やさしさなどの気持ちの面だけででなく、笑顔などの姿を見ることができて、すごい学び。 ・自分の得意なことや好きなことなど笑顔で話してくれて、こっちまで笑顔に。 ・新しい出会い 新しいつながり 一つの空間に明るい風が吹いてきた  ぷかぷかの人の不思議な力 いつの間にか明るい気持ちになっていた。 ・自分自身をわかっているのもすごいし、かっこよかった。 ・どの話も聞いていてわくわく、どきどき。 ・素敵な笑顔と優しさでもっとたくさん話していたいな。人柄に惚れます。来週も話せると思うととても楽しみ。 ・話を聞いていると自然と笑いが出て、みんな笑顔になっている。  ・手作りの心のこもったすごろく ・サイコロコロコロ 心はドキドキ ・いつの間にか 会話も心もはずんでる。 ・お話し上手な利用者さんや、一生懸命話しているところ、楽しそうに話す姿を見て もっと知りたくなりました。 ・一生懸命話してくれたり、友達の分をフォローして伝えてくれたり、本当の話か、妄想の話かわからないけど、おもしろい話を聞かせてくれて、想像力も豊かになれた気がしました。 ・たくさんの笑顔を見ることができて、とても心があたたかくなった。 ・初めてちゃんと関わってみて、知らなかった面を見ることができて、とてもうれしかった。 ・自分のことを一生懸命話す姿や、楽しそうに話す姿を見て、聞いている側も笑顔になれた。 ・すごろくが終わったあとには、何人も寄ってきてくれて、いろいろな話をしてくれて、とてもうれしかった。 ・好きな歌のグループが同じでびっくり。グループの中でも好きな人が一緒でうれしかった。 ・初めてで恥ずかしがっている友達のことも教えてくれるやさしさを見ることができました。 ・ロサンゼルスにダンスをしに行ったこと、ブラックコーヒーが飲め、楽しい休日を過ごしていること、鹿児島県に行ってみたいことなど、ひとりひとりとたくさんお話ができて、とてもよい経験ができました。 ・話してみると、すごく気さくで、お話し上手で聞き上手 ・いっしょにいると自然に笑顔になるようなパワーを持った人たち。 ・自分の話をたくさんしてくれて、性格が少しおっちょこちょいだったり、好きなアーティストの話をしたり、少しずつぷかぷかさんの魅力がわかってきました。 ・ひとりひとり、思い考え異なり 人の個性ができあがる。  みんなちがってみんないい とはこういうことだろうか。 ・私たちに一生懸命自分の気持ちを伝えようとする姿に心動かされた。 ・楽しかったこと、悲しかったこと、自分の思い出を話するのが楽しそう。話を聞いて応答することでまたまたどんどん話ができて止まらない。  ●●●  たかがすごろくのゲーム。でも、そのすごろくを通してのぷかぷかさんたちとの出会いが学生さんたちからこんなにも豊かな言葉を紡ぎ出します。そしてこの言葉たちこそが、障がいのある人たちといっしょに生きていく居心地のいい社会を作っていくのだと思います。  やまゆり園事件を超える、などというと、すごく大変なイメージがありますが、すごろくワークショップをやって、楽しい時間を一緒に過ごすだけで、事件を超える関係ができるのです。感想の中に「たくさんの笑顔を見ることができて、とても心があたたかくなった。」というのがあります。ぷかぷかさんたちの笑顔を見て、ただそれだけでとても心があたたかくなった、というのです。なんて素敵な関係だろうと思います。  やまゆり園で、障がいのある人たちとこんな関係ができていれば、事件は起きませんでした。どうしてそんな関係がなかったのだろうと思います。  11月14日(土)横浜ラポールで、映画を手がかりにやまゆり園事件を超える社会を作って行くにはどうしたらいいのかの話し合いをします。創英の学生さんたちからぷかぷかさんたちとの出会いの話も聞きます。彼らとはやっぱり出会った方がトク!です。おつきあいした方がトク!です。トクすることが事件を超えることです。トクして事件を超えるなんて、なんだか一石二鳥。こりゃもう上映会に来るしかないです。
  • こういう言葉が少しずつ社会を変えていく
     毎日新聞の上東さん、頑張ってまたやまゆり園事件を問う連載記事を始めました。 mainichi.jp mainichi.jp  書いても書いてもやまゆり園自体は何も変わらなくて、読んでてむなしくなります。それでもあえて書き続ける上東さん、尊敬します。  ほかの新聞社がやらない中では、書き続けること自体に素晴らしい意味があり、価値があります。  裁判が終わってしまい、何もしなければ、事件はどんどん忘れられていきます。そういった中でのこの連載記事は、多分歴史に残るほどの価値ある記事になると思います。  福祉の現場にいる者として、やまゆり園事件に関するメッセージを発信し続けねば、とあらためて思いました。  事件を問うことは、社会のありよう、私たちひとりひとりのありようを問うことでもあります。障がいのある人たちと、この社会の中でどんな風につきあっていくのか、どんな風にいっしょに生きていくのか、と問い続けること、それが「障害者はいない方がいい」「障害者は不幸しか生まない」というメッセージを発信した事件を超えることだと思います。  事件を問うだけでなく、事件をどうやって超えていくのか、を実際にやってみること。考えるだけ、あーだこーだ言うだけでは社会はちっとも変わりません。大事なことは、やまゆり園事件を引き起こすような社会を本気で変えることを実際にやってみることです。  つい三日ほど前、ぷかぷかの近くにある創英大学でぷかぷかさんと一緒にすごろくワークショップを通して新しい出会いを作る授業をやってきました。サイコロを転がしてすごろくゲームをやり、お互いのことを知る授業です。  すごろくには「旅行に行きたいのはどこ?」「自分てどんな人?」「好きな歌手は誰?」といった問いがあり、それにひとりひとりが答えていくます。たったそれだけのことなのに、普段障がいのある人たちとのおつきあいのない学生さんたちにとってはとても新鮮な体験だったようです。  その時に出てきた学生さんの気づきのひとつがこれ。    新しい出会い 新しいつながり    一つの空間に明るい風が吹いてきた。    ぷかぷかの人の不思議な力    いつの間にか明るい気持ちになっていた。  ぷかぷかさんと一緒にちょっと動けば、こんな素敵な言葉が学生さんから出てくるのです。こういう言葉が少しずつ社会を変えていくのだと思います。  私たちがとにかく社会に出て行き、ちょっとアクション起こせば、こういった反応が出てきます。そういうことをやるのかどうかだけです。やらなければ、社会は変わりません。  福祉事業所には魅力ある方がたくさんいます。そういう人は社会に出していかないともったいないです。  11月14日(土)、横浜ラポールで映画を手がかりに事件を考える集まりをやります。でんぱたで先日稲刈りをしたのですが、そのお米を使ったおにぎりが出ます。これはもう来ないとソン!です。創英大学の学生さんも参加します。ぷかぷかさんとの出会いの話もしてもらう予定です。
  • いっしょにいたいなぁって思うこと
    11月14日(土)横浜ラポールで映画を手がかりに、やまゆり園事件をどうやって超えていけばいいのかを考える集まりをやります。と書くと、なんだか重い雰囲気の集まりを想像してしまうのですが、チラシにもあるように、  《 いつもの月夜に 米の飯 みんなで一緒に こめまつり 》 なんて、でんぱたで採れたお米の握り飯ほおばって、ま、楽しく行きましょう。  考える手がかりになる映画として、第6期演劇ワークショップ記録映画『どんぐりと山猫ーぷかぷか版』を上映します。演劇ワークショップの記録映画はぷかぷかさんと地域の人たちが一緒になって6ヶ月かけて芝居作りをした記録です。それを1時間程度の映像にまとめています。  障がいのある人たちに「こうしなさい、ああしなさい」といろいろ教えながら作った芝居ではなく、彼らに支えられながら芝居を作った記録です。彼らがいることで、ワークショップの場が、とても楽しく、自由になります。彼らに助けられているのです。そういう場で、とんでもなくおもしろい芝居ができあがります。  彼らがいるからこそ、こんなにも楽しい、ダイナミックな舞台ができます。  事件の時、社会にばらまかれた「障害者はいない方がいい」とか「障害者は不幸しか生まない」といった言葉を、あーだこーだ理屈を言わずに、ひょいと乗り越えてしまう舞台です。それって、すごいことじゃないかと思うのです。これが彼らがいっしょにいることで生まれるチカラです。ひょいと乗り越えてしまうチカラ。  事件を乗り越える、障がいのある人たちを排除しない社会を作る、というのは、こんな風に障がいのある人たちと一緒に楽しいことをやり、新しいものを創り出し、彼らといっしょにいたいなぁって思うことです。彼らを社会から排除するなんて、もったいないことです。社会の損失です。
  • 自分の人生の物語を自分で作っていく
    昨日ぷかぷかに遊びに来た尾野一矢さんが自立生活を始めるまでの記録映像です。 www.youtube.com  昨日その一矢さんがぷかぷかに遊びに来ました。 www.pukapuka.or.jp  その時に注文した似顔絵が1枚だけですができていました。  似顔絵を描く画伯が5,6人いるので、みんなが描き終わった頃、一矢さんに来てもらって、どの似顔絵がいいか選んでもらいます。似顔絵を描いてもらうなんて多分初めてだと思いますので、一矢さん、どんな表情をするのか楽しみです。  一矢さんの選んだ似顔絵を使って名刺を作ります。Tシャツも作ります。似顔絵の入った「かんちゃんTシャツ」です。  できあがった頃、一矢さんに来てもらって、「かんちゃんTシャツ」を着て、片手にはできたての名刺を持って写真を撮ります。名刺の肩書きは「神奈川自立生活実践者第1号」。  ひょっとしたら、ここから一矢さんの人生の新しい物語が始まるかも、と思ったりしています。自立生活、というのは、いろんな人たちの介護の手を借りながらも、自分の人生の物語を自分で作っていく、ということだと思います。今まで誰かに任せっきりだった人生を、自分の手に取り戻すことだと思います。  昨日ぷかぷかに見えた時、介護の方から、テレビのリモコンを自分で操作する、といった当たり前のことが施設での生活ではなかった、という話を聞きました。大きな部屋にテレビはあるのですが、自分でリモコンを操作し、好きな番組を見る、といったことはありません。ただぼんやりテレビの方を見てる、という感じ。  でも、今、自立生活が始まり、自分でリモコンを操作し、大好きな「笑点」を見て笑っているそうです。好きな番組を自分で選び、それを見てけらけら笑う。たったそれだけのことですが、一矢さんにとっては人生が変わるほどの大きな大きな出来事です。  これからは自分の人生の物語を自分で作っていきます。一矢さんはどんな物語を作っていくのだろう。ぷかぷかもそのお手伝いができれば、と思っています。
  • 尾野一矢さんが遊びに来ました。
     やまゆり園事件で重傷を負った小野一矢さん、8月から自立生活を始め、今日ぷかぷかに遊びに来ました。初めての場所で、かなり緊張している様子でした。  アート屋わんどで紙と色鉛筆を用意し、 「よかったらどうぞ絵を描いて下さい」 と誘ったのですが、全く乗ってきません。困ったなと思っていたのですが、ぷかぷかの雰囲気の中で少しずつ気持ちがほぐれてきたのか、自分からまわりの人たちと「一本橋こちょこちょ」をやり出しました。これをやる時は機嫌のいい時だそうです。介護の人やぷかぷかさんだけでなく、取材に来ていたNHKのカメラマンともやっていました。  お昼、ぷかぷかさんのお昼ご飯で、突然大きな声を上げ始めました。「せりがやなんとか」って言ってて、芹が谷帰りたくない、そこの仕事したくない、と言ってるのだと思います、と介護の人。よほど悪い思い出があるのだろうと思いました。それが何かの拍子でわ〜っと吹き出してくる感じでした。顔もかきむしっていました。  お昼ご飯はなぜか全く食べず、パン屋でカレーパン、コロッケパンを買って食べました。  暖かな日差しの中、ぷかぷかのまったりした時間を過ごしました。普段なかなか経験できないいい時間だったと思います。日中活動をする場所を決めていないので、毎日どこに行くか決めるのが大変だそうです。  ぷかぷかで毎日働くことは難しいですが、このまったりした雰囲気に浸りに週一回でも遊びに来てくれればと思います。管理されないぷかぷかの心地よい世界に浸ることで、大声を出すほどに傷ついている心が少しずつ回復するといいなと思います。「楽しかった人?」って聞くと「は〜い」と手を上げていたので、多分また来るのではないかと思います。  帰りがけ、わんどで写真を撮り、似顔絵名刺を注文しました。一矢さんはやまゆり園での生活のあと、自立生活を始めたというので、いろいろ取材が入ります。そんなときに渡す名刺です。肩書きは「神奈川自立生活実践者第1号」。なんだかカッコいい!  似顔絵の入るTシャツも注文しました。取材に来た記者に名刺を渡し、似顔絵の入ったTシャツを着て対応します。
  • 上映会やります。「いつも月夜に 米の飯 みんなでいっしょに こめまつり」
    11月14日(土)横浜ラポールでの上映会のチラシができました。すごく楽しいチラシです。   映画を見て、やまゆり園事件のことをみんなで話そうと思っているのですが、いつものことながら、チラシを見ると全くそういう感じがしません。つまり、やまゆり園事件の重いイメージがどこにもないのです。  「いつも月夜に 米の飯 みんなでいっしょに こめまつり」 とか一番目立つところに書いてあって、どうしてこれがやまゆり園事件につながるの?なんて、つい思ってしまうのですが、それがいつの間にかつながってしまうのがぷかぷか。  昨年、事件の遺族の方がぷかぷかに見えました。私はどういう言葉で話しかければいいのかわからず、「こんにちは」といったきり、後に続く言葉がなかなか出てきません。事件に関するブログを150本以上書きながら、事件で一番辛い思いをした遺族の方にかける言葉が出てこないのです。  遺族の方を前に本当に困りました。その時周りにいたぷかぷかさんたちが 「あれ、どこから来たの?」「お名前はなんて言うの?」 と、いつもの調子で質問攻め。 「ぷかぷか、頑張ってます」 なんていう人もいました。  そんなぷかぷからしい対応に、遺族の方はみるみる笑顔になり、いろんなお話を楽しそうにされていました。遺族の方を前に、半ば固まってしまった私は救われた思いでした。  「ぷかぷかさんのお昼ご飯」で食事された時、その日のメニューは唐揚げだったのですが、亡くなった娘さんの大好物で、娘さんと一緒に唐揚げを食べている気分でした、とお話しになっていました。一ヶ月後に誕生日を迎えるという話も聞き、それならぷかぷかで誕生会やりましょう、という話になりました。  「ぷかぷかさんのお昼ご飯」は誕生日を迎える方のリクエストで誕生日メニューが決まります。ですからその日は唐揚げにすることになりました。お母さんひとりで食事するのは寂しいと思い、亡くなられた娘さんの写真見ながらぷかぷかさんが等身大の「分身くん」を段ボールで作り、隣に並んで食事してもらいました。帰りの会でささやかな誕生会をやりました。小さなステージに娘さんの分身くんに座ってもらい、みんなで「ハッピーバースデー」を歌いました。娘さんの好きだった音楽をガンガンかけ、みんなで思いっきりダンスをしました。誕生日カードもぷかぷかさんが描いてプレゼントしました。お母さん、本当に大喜びでした。  遺族の方はそっとしておいた方がいい、とよく言われます。でもぷかぷかさんたちは違いました。そっとしておくどころか大歓迎し、誕生日会までやってしまったのです。お母さん、たくさんの元気をもらえたようでした。  事件を超えるって、こういうことではないかと思います。事件で一番辛い思いをした遺族の方が元気になる。これはすごく大事なことです。今まで、多分誰もやっていなかったことです。それをぷかぷかさんが、何か特別なことではなく、いつもどおりの感じで、さらっとやってしまったのです。  ぷかぷかさんといっしょに生きていく中にこそ、事件を超えていく鍵があるような気がしています。  昨年の上映会に参加した方が、ぷかぷかさんもいっしょにいる上映会の賑やかな雰囲気の中で 「とがった心が丸くなる」 と感想を書いていましたが、一番のキーポイントを言い当ててる気がしました。  事件を考える集まりで、お互いの考え方のちょっとした違いで、とても険悪な雰囲気になってうんざりしたことがあります。事件を考える集まりなのに、みんなの心はとがったままだったのだと思います。心がとがったままでは、事件を超える社会を作るとかいっても、人に優しい気持ちになれる社会なんだろうかと思ってしまいます。  その心をゆるっとしてくれるのがぷかぷかさんです。とがった心を丸くしてくれるのです。11月14日の上映会にはぷかぷかさんもたくさん参加します。彼らのチカラを借りて、事件を超える社会がどうやったらできるのか考えたいと思うのです。  「でんぱた」が初めて収穫したお米で作ったおにぎり食べて、 「いつも月夜に 米の飯 みんなでいっしょに こめまつり」  なんてつぶやきながら、楽しくやりたいと思っています。
  • 猫の目
    アマノッチの描いた猫  何を思っているんだろう。  いくつもの哀しみと、  怒りと、  悔しさを、  数え切れないくらい経験し、  それをもう通り越してしまったような目  諦めてはいるわけではない。  ただそこにうずくまって  こうやって 深い目で  世界を、じっと見つめている。  押し殺した思いが、静かに渦巻いている。  アマノッチの思いに、初めて出会えた気がする。  こんな目で見つめられたら、ちょっとたじろいでしまう。  でも、本当はいつもこんな目で彼らは私たちを見つめているに違いない。  それに私たちが気がつかないだけ。  だから、上から目線で彼らを見る。  彼らを見下す。  でも、この目に気がつくと、私たちの振る舞いは、とても恥ずかしい。 mainichi.jp  虐待が何度指摘されても、延々と見苦しい言い訳をするやまゆり園。  あなたたちを見つめているたくさんの、この深い目に気がつかないのか。  恥ずかしくないのか。  謙虚にこの目と向き合いたいと思う。  この目を見つめていると、  自分の生き方を問われている気がする。  この目の語る物語に、静かに耳を傾けたい。
  • いかに一緒にくつろぐか
    やまゆり園事件で重傷を負った尾野一矢さんがやまゆり園を出て地域で暮らし始めました。 mainichi.jp その取材をしている毎日新聞の上東さんのFacebookにいい言葉がありました。 重度訪問介護ヘルパーの極意は「いかに一緒にくつろぐか」だそうです。 長い時間一緒に過ごす介助者の仕事。 「仕事というよりただ、いっしょに生きること」〔大坪さん) 素敵な関係だなぁ。  「いかに一緒にくつろぐか」いい言葉だなと思いました。多分そういう感覚でいかないと、長い時間一緒に過ごす介護の仕事は辛くなると思います。というか、長い時間一緒に過ごす中で、大坪さんが見つけたんだと思います。ただ仕事だからでは、相手といい関係はできません。くつろぐ感覚があるから、この人といっしょにいよう、と思えます。そこから人としてのおつきあいが始まります。その気持ちは相手にも伝わります。だから、一矢さんも「かずやんち」の暮らしを楽しめるのだと思います。  自分の写真で恥ずかしいのですが、『support』という知的障害福祉研究の本の表紙を飾ったことがあります。          まさにお互いがくつろいでいる写真です。「至福の時」です。こういう時が、彼らと過ごしているといっぱいあります。それを大事にするかどうかで、彼らとの関係が変わってくるのだと思います。(養護学校の教員をやっている時、障がいのある子どもたちと出会い、彼らといっしょにいると心安らぐ時間、くつろぐ時間がたくさんあって、こりゃぁもう彼らとはいっしょに生きなきゃソン!だと思いました。その時の思いがぷかぷか設立の思いにつながっています)      福祉の現場の人たちが、みんなこんな感覚で仕事やりだしたら、この業界は介護する側もされる側もお互いがもっと居心地のいいものになるだろうな、という気がします。    尾野一矢さんがいたやまゆり園の人たちが、こういう感覚で働いていたら、やまゆり園はお互いにとって居心地のいいところになっていたと思います。そんなふうになっていれば、事件は起きませんでした。こういう感覚を排除してしまうものがやまゆり園にはあったのだろうと思います。それは何なのだろうと思います。 
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