ぷかぷか日記

はずむ心 バンバンバン

  今朝の早朝書いたぷかぷか日記に、ミヒャエルエンデの「モモ」に出てくる「笑顔ドロボー」のことを書きましたが、「モモ」に出てくるのは「時間どろぼう」で、「笑顔ドロボー」は私が昔学校で作った芝居に出てくるキャラクターでした。申し訳ありませんでした。大分ぼけてきたようです。

 

 当時三ツ境養護学校にいたのですが、毎年文化祭の初日にする芝居を全校生で1年かけて作っていました。最初にみんなからテーマを募集し、それを元に芝居を作ります。その年のテーマは「おいしい笑顔」でした。全校生から笑顔の絵を描いてもらって廊下に張り出したり、笑顔コンテストをやったりしながら少しずつお話を作っていきました。

 このときに思いついたのは、あるとき、街の中から笑顔が少しずつ消えていき、街がどんどん暗い雰囲気になっていって、どうやって街の明るさを取り戻すか、といったお話でした。このときに登場したのが「笑顔ドロボー」。笑顔ドロボーが暗躍すると、街からどんどん笑顔がなくなっていきました。

 笑顔ドロボーたちは山の洞窟に盗んだ笑顔を隠していました。その笑顔を取り戻そうと、「笑顔取り戻し隊」が結成され、その隊長はかわいい女の子でした。歌を歌いながらその洞窟に向かいます。

 芝居は体育館のフロアを舞台にし、全校生がぐるっと輪になって座り、その真ん中が舞台でした。「笑顔取り戻し隊」は、全校生が歌う中を、その真ん中の舞台をゆっくり回ります。芝居は配役だけでやるのではなく、舞台を取り囲む全校生がさまざまな形で芝居に参加します。

 山の洞窟に着き

「笑顔を返せ!」「返さない!」

のやりとりが続きます。隊長のかわいい女の子が前に出て、ドロボーのボスに向かって

「笑顔を返してください」

とお願いします。

「馬鹿いうな、笑顔は返さない!」

といいながら隊長を見たドロボーのボスは、あろう事か、その隊長に一目惚れ。いつもムスッとしていたボスが、今まで見たこともないようなすばらしい笑顔を浮かべます。ニカ〜ッと笑顔を浮かべながら、

「笑顔はいいねぇ、人生が明るくなったみたいだ。今までの暗い人生はもうおしまいだ!」

といい、街の人たちの笑顔を返すことにしたのでした。

「よし、この笑顔をみんな返そう!」

とボスが高らかに宣言すると、全校生に渡しておいたジェット風船がピュ〜ンと甲高い音を立てながら飛び上がり(体育館の中を100個くらいの風船が飛びました)、ブルーハーツの「風船爆弾(バンバンバン)」をガ〜ンと流したのでした。

   

  Oh!恋は風船爆弾   Oh!恋は風船爆弾

  いまにもはじけそう  Oh!恋は風船爆弾

  ……

  はずむ心 バンバンバン

  あなただけに見つけて欲しい

  いつだってどこだって

  遠くまで飛んでいけるさ

 

と、全校生で歌ったのでした。

 

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笑顔ドロボーの逆

 おひさまの台所のレジ担当のスタッフと話をしたとき、利用者さんといっしょにお店に立つと、お客さんの笑顔が違うんですよ、という話を聞きました。それを伝えるのがこの写真。スタッフが同じように品物を渡しても、多分笑顔の質が違うんじゃないかと思います。これはなんなんだろうな、と思うのです。

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 やはり彼らに手渡されると、ただそれだけでうれしいし、心癒やされるものがあるように思います。相手がスタッフだと、お礼は言うにしても、なかなかそこまでの気持ちにはなれません。

 写真のミズキさんは作業的なことはちょっと苦手です。接客もそれほどスムーズにやってるわけではありません。どちらかといえばぎこちなくやっています。でも、そのぎこちなさが、お客さんの心を優しくするのかも知れません。

 ミズキさんはいつも一生懸命です。一生懸命さが全身からあふれ出ます。それをお客さんは感じるのだと思います。だからこんなすてきな笑顔が出てくるんだと思います。

 ミズキさんは「おひさまの台所」の店頭に立って、お客さんたちの数え切れないくらいの笑顔を作って来ました。そうやって街を耕してきたのだと思います。

 ミヒャエルエンデの「モモ」という作品に「笑顔ドロボー」が出てきます。街の人たちから笑顔を盗むドロボーです。ドロボーたちが暗躍する中で、街がどんどん暗くなっていきます。

 ミズキさんはこの笑顔ドロボーの逆をやっています。彼が店頭で仕事をするとお客さんの笑顔が増えます。笑顔が増えることは、街が明るくなることです。

 ミズキさんはぎこちなく仕事をしながら、実は誰にもできない大変な仕事をやっているのだと思います。

 

 

 

 

 

ひとりでぷかぷかへ行こう!

 昨日はエミちゃんの29歳の誕生日でした。朝の会で小さな花束を贈って、みんなでお祝いしました。29歳の抱負は?と聞くと、毎日元気に通ってくることです、と恥ずかしそうにいいました。

 エミちゃんは発作があるので、毎日行き帰り介護する人がついています。ところがこのところ発作がほとんどないので、先週から朝はひとりで電車、バスを使って通勤しています、と昨日、本人から聞きました。いつ発作があるかわからないエミちゃんにとって、ひとりで通勤するのはほんとうに大冒険に近いものではないかと思います。

 発作で倒れたときのエミちゃんを何度も見ているので、そのリスクを抱えたままひとりで電車に乗ったりバスに乗ったりするのは、私だったら多分怖くてできないだろうと思います。それを考えると、ひとりで「ぷかぷか」に来ると決めたエミちゃんの気持ちは、ほんとうにすごいなと思うのです。

 そのくらいの気持ちで「ぷかぷか」に来てくれてるんだ、とうれしくなりました。

 2年ほど前の介護認定調査の時、最近どうですか?の質問に、仕事がおもしろくて

「以前はいつもうつむいていましたが、今はまっすぐ前を向いて生きています」

と応えたエミちゃんですが、そのまっすぐに前を向く気持ちが、ひとりでぷかぷかに来ようと決めたエミちゃんを支えているんだろうと思います。

 誰にも頼らず、ひとりで来る、と決めたエミちゃんの決意には、ただ単にぷかぷかにひとりで来る、というだけでなく、これからの人生、どう生きるのか、という決意が見える気がするのです。

 いつも誰かの手助けに頼る人生は、いくら頑張っても手助けの範囲でとどまってしまいます。ひょっとしたらエミちゃんは、そこを突破しようとしたのではないかと思いました。

 5年前、ぷかぷかを立ち上げる前、エミちゃんは作業所でのんびり仕事をしていました。好きな刺繍をしたり、織物をしたりで、なんの不満もなかったはずですが、20代半ばにさしかかり、

「このままのんびりした人生でいいのかな」

と考えていたようです。その頃やっていた陶芸教室で、何度かそんな話を聞きました。そしていよいよぷかぷかを立ち上げる直前、

「なんか今のままじゃぁさびしい気がする」

と、思い切ってその作業所をやめ、ぷかぷかへ来ることにしたのでした。ただ単に仕事場を変わるのではなく、新しい人生に挑戦するような、大変な決意だったと思います。

 いろいろな場面で介護が必要な毎日にありながら、そののんびりした毎日に、こんな人生でいいのかな、と思った、というのですから、エミちゃんという人は、見かけによらず、燃え上がるような思いが渦巻いているのではないかと思いました。

 で、ぷかぷかへ来て、仕事のおもしろさに目覚め、

 「まっすぐに前を向いて生きる」

ような人生の中で、介護の度合いがどんどん減って、人生に自信がついたのだと思います。そんな中で

「もう、人に頼らず、ひとりでぷかぷかに行こう!」

と決意したのではないかと思います。

 昨日みんなの前でさらっと語った

「毎日元気に通ってくることです」

という29歳の抱負には、平凡な言葉でありながら、エミちゃんの密かな決意が込められていたんだと思います。

 その熱い決意にぷかぷかは本気で応えねば、と思ったりしたのでした。

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「表現の市場」見に来た人たちの感想

 昨年やった「表現の市場」を見に来た人たちの感想を載せるのを忘れていました。今年は9月からワークショップをスタートさせ、来年2月14日(日)に「表現の市場」をやります。場所はみどりアートパークホールです。

 

・全員が一生懸命やっていてよかったです。涙が出ました。

・ちょっと見て帰ろうと思ったのですが、おもしろくて、楽しくて席が立てなくなりました。今日の舞台を見てたくさんの人たちが「おもしろい」「楽しい」と思うようになったら、世の中、もう少し生きやすくなると思います。

・みなさん一生懸命取り組んでいて、感動しました。ダンスでは車いすの方が立ち上がって踊り出し、胸が熱くなりました。

・笑顔いっぱいの表現力は素敵でした。

・涙が出ました。ありがとう!

・また家族で見に来たいと思いました。

・表現することを楽しまれ、見ている私もうれしくなりました。今後もこの活動を続けていって欲しいです。

・大変おもしろかった。みなさんすごい出来でした。ありがとう。

・様々な表現がすばらしかったです。

・楽しませていただき、ありがとうございます。みなさまの努力が心に残ります。

・楽しかった。感動しました。

・みなさん、生き生きと表現されていて、すばらしかったです。また来てみたいと思いました。楽しい時間をありがとうございました。

・とてもすばらしい内容で、楽しく拝見させていただきました。今後ともこの市場が長く続くことを楽しみにしております。

・素敵な企画をありがとうございました。

・第1部から第3部まで大変すばらしかったです。どのパフォーマンスも、とっても元気をもらえました。誰もが明るく、明日を生きていこうと思える演技でした。次回も楽しみにしています。

・とてもすばらしい演劇でした。

・どのグループも精一杯さが伝わる演技でした。デフパペットさんはすばらしかったです。

・とっても楽しくて笑いがいっぱいのステージでした。自由に表現する出演者のみなさんを見ていたらいっしょにやりたくなりました。第2回、第3回と続いて行くといいなと思います。

・みんな明るくて、とてもよかった。どんどん発展して欲しい。

・みなさん、レベルが高く、驚きました。元気と笑顔をもらいました。

・多くの人に見て欲しいです。

・みんな頑張って、キラキラしていました。

・こういうことができる街はすばらしいと思う。

・みなさんの努力、表現力、すばらしい!

・デフパペットシアターのすばらしい表現力に魅せられました。

・心あたたまる演目ばかりで、すごくよかったです。

・心から楽しませていただきました。今後がとても楽しみです。

・まさに表現の市場でした。どの舞台も、障がいのあるなしに関わらず、それぞれの人が一生懸命舞台に立っている姿に感動しました。ありがとうございました。

・よかったです。また見せていただきたいです。

・心がほっこりしました。演劇としてとか、メッセージとか関係なく、みんなといるだけで、そのままで、なんだか癒やされる感じがしました。

・「森は生きている」を見に来ました。地域の人たちといっしょに作っている雰囲気がとてもよかったです。感動して涙が出ました。

・テキトー版「赤ずきん」超おもしろかった。ぷかぷかの「森は生きている」超おもしろかった。たくさん練習したのですね。すばらしかったです。

・とてもおもしろかったです。自由でありながら、全体としてステージが成立しており、ユーモアにあふれ、いい時間でした。個性と多様性あふれるパフォーマンスに、こちらも元気になりました。他者への壁(バリア)が少ない彼らの存在に、現代社会が学ぶことも多いなと思いました。

・みなさんのパワーあふれるパフォーマンスに心打たれました。みんなの楽しそうな笑顔が最高でした。それぞれのすばらしい表現に感動しました。

・照明、音楽、演出、小道具、とっても垢抜けていました。

・どのグループの発表もすばらしかったです。ぜひ続けていただきたいです。みなさんはいろいろ可能性を持っていることをあらためて感じさせていただきました。

・どれもすばらしかったです。来てよかったです。

 

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社会にニーズに合っているからこそ

 昨日「社会のニーズ」のことを書いたら、それを読んだ方からこんなメールが来ました。

 

 「社会のニーズ」とは・・・

 日本という国が、多様性が認められる社会、豊かな地域作り、格差社会の是正、あらゆる差別の解消、効率的ではない真の豊かさとは・・・などと体裁のよいことを並べて立ててはいますが、実際は、弱肉強食社会が加速するのではないかと危惧される社会状況にように感じるこの頃です。

  経済的に生活のために働かざるを得なく、時には自分を偽りながら生活し、あらゆる意味で生きにくさを抱える人たちが少なくありません。人間関係の希薄さも現存し続けると思われます。

  人はいつの時代においても、孤立しては生きていけず人と人とのつながりを求め、

自分を飾ることなく、あるがままの自分を自他ともに認めてほしいと願うのではないでしょか。

 叶うならば、活き活きと働き、ゆったりと生活し幸せに暮らしたいと思っている人は少なからずいるのではないでしょうか。

  そのような「社会のニーズ」がある中で、

 ぷかぷかは、「管理されていない」メンバーさんが活き活き、のびのびと幸せそうに楽しく働いています。気さくに声をかけてくださり、こちらまで幸せ感を分けてもらえます。

  命を大事にし、安心な食材を使い、利潤追求、営利主義ではない、温かい雰囲気の美味しいパン屋さん、そんなお店があることは、少子高齢化が進む地域社会を、真の豊かな地域にしてくれます。

 そんな地域で子どもを育てたい、歳を重ねたい、そんな地域に住みたいと思う人は今後、ますます増えてきます。

  まさに、社会が求めるニーズに合っているからこそ、これだけぷかぷかファンが増えているように思っています。

 

  うれしいですね。こんなメールいただくと。これもやっぱりメンバーさんがいたおかげだと思っています。彼らがいたからこそ、こんな「ぷかぷか」ができたのであって、地域の方がここまでおっしゃってくれているのも、彼らが地域をせっせと耕してきたからだと思います。あらためて彼らに感謝!です。

 

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オープンから一週間

2月28日のオープニングイベントは小さなお店の中でワークショップや似顔絵、ガラスペイントなどイベント盛りだくさんで大賑わいでした。
飛び入りで演奏会が始まったり忍者もやってきたり、わたしたちもわくわくした時間を楽しませていただきました。
本当にありがとうございます!!

週が明けてからは、オープンの日は都合が悪かったけれど急いで来ました!という方や早くも二回目のご来店の方々も。

現在も工事進行中のわんどは入り口のドアの取っ手も窓ガラスもなく、トイレの鍵もついていないというとんでもない状態でスタートしましたf^_^;

それでも「ぷかぷからしいね」と笑って受け入れてくださる温かいみなさんとお付き合いできることがとっても嬉しいです。

コトノネさんから“とまどう楽しさ”と評されたぷかぷか遺伝子は
わんどにしっかりと受け継がれています!
(ここまできたら開き直るのみ!)

オープンから一週間、取っ手もつき、トイレは安心して利用できるようになりました笑

訪れる度に新しい発見があるはずです!
二度三度、四度五度のご来店お待ちしております〜♡

(ゆっこ)

「あなたにいて欲しくない」と「あなたにいて欲しい」

 アメリカのボーイング社が「教育、健康福祉、環境、市民活動」に関して助成金を募集していたので、ワークショップの費用を助成してもらおうと申請書作成に取りかかりました。

 申請書に書く項目として「社会のニーズにどのように貢献できるのか」というのがありました。今まで「解決すべき社会的課題」というのは、どの申請書にもありましたが、「社会のニーズ」という言葉は申請書としては初めて見ました。

 要するに「社会が求めている」ということだと思うのですが、ワークショップを社会が求めているかというと、どうもそういう感じではありません。ではどこに「社会のニーズ」を見つければいいのでしょう。

 

 社会はまだまだ障がいのある人たちといい関係が作りきれず、彼らを社会から締め出してしまっています。それは、ストレートにいえば「あなたにいて欲しくない」「あなたは必要ない」「あなたがいると困る」と言ってることになります。ずいぶん失礼ないい方ですが、社会の中に彼らが堂々と働く場所,居場所がないのは、やはり社会がそんな風に彼らのことを思っているからだと思います。

 彼らをそんな風に社会から締め出してしまうのは、社会の大変な損失だと思います。

 「ぷかぷか」は彼らがいることで、豊かな広がりを持ったお店になっています。彼らがいるから、いろいろな物語が生まれています。ホームページやFacebookページで毎日のように様々な物語を発信できるのは、彼らのおかげです。彼らのおかげで生まれる楽しい物語は、お店に関わる人たちだけでなく、社会全体を豊かにしています。彼らが生み出す物語は、今までにない「新しい価値」と呼んでもいいくらいだと思います。

 彼らがいないと、ただのパン屋で、こんな物語は生まれようもありません。彼らを締め出してしまうのは、ですから社会の大変な損失になります。生まれるはずの新しい価値を,見もしないで捨てているようなものです。もったいないというか、「いっしょに生きなきゃ損!」だと私は思っています。

 

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 以前にも書きましたが、ワークショップは彼らに対して「あなたにいて欲しい」「あなたが必要」「あなたがいないと困る」といった関係を自然に作ってきました。社会が作りきれなかった関係を、いとも簡単に作ってしまったのです。

 関係を作っただけでなく、その関係の中で何ができるのかを芝居の形で具体的にお客さんの前で発表しました。それは、彼らがいたからこそ創り出すことのできた「新しい価値」を提案できたと言い換えてもいいでしょう。新しい価値は新しい文化と言ってもいいと思います。文化は社会を豊かにします。

https://www.youtube.com/watch?v=xYB810A84eQ

 

 社会の損失を防ぎ、新しい価値を創り出し、社会を豊かにすることは「社会のニーズ」といっていいのではないかと思うのですが、どうでしょうか?

 ぜひご意見お聞かせください。

   pukapuka@ked.biglobe.ne.jp

 

 

 

 

そのことをどこまで信頼し抜くか

 ぷかぷかを立ち上げたとき、講師を呼んで接客の勉強をみんなでやったことがあります。普通のお店ならどこでもやっている接客でしたが、それを障がいのある人たちがやるのは、かなりむつかしい気がしました。何よりも、なんかおもしろくないというか、彼らの、せっかくの持ち味が生かせない気がしました。彼らの持ち味が生かせなければ、彼らが接客する意味がありません。

 彼らの持ち味を生かす、ということは、こちらがとやかく言わずに、彼らに任す、ということです。言い換えれば「管理しない」と言うことです。

 前回のブログで紹介した「おいしいかい!?」なんて言う言葉も、管理していない環境だからこそ、ぽろっと出てきたのだと思います。普通はお客さんに向かってこんな言葉は使いません。

 でも、そのとき、厨房にいたトシヤンはお客さんがあんまりおいしそうに食べてるので、なんだかうれしくなって、ついカーテンをシャッとあけ、ニカーッと笑いながら

「おいしいかい!?」

なんて言ったんだろうと思います。聞いたお客さんも、

「え?!」

とか思いながらも、トシヤンの投げかけた言葉の、なんとも言えないおかしさ、あたたかさに、クスッとしながら、負けずに大きな声で

「おいしいです!」

って、応えたんだろうと思います。トシヤンは、そうだろうといわんばかりに

「フフ〜ン」

と笑い、カーテンを閉めたようです。

 その余韻の中で、お客さんは

「また来よう」

って思ったというのですから、おもしろいですね。この一瞬のやりとりで、ぷかぷかのウィルスに感染してしまったとお客さんは言ってました。

 

 こういう思ってもみない、全く想定外の、楽しい、あたたかな出会いは、管理された空間からは絶対に生まれません。

 もちろんこの一瞬のやりとりがいつもうまくいくとは限りません。事実カフェのお客さんで利用者さんの言葉に不愉快な思いをしてクレームをつけた方もいます。でも、だからやはり管理が必要だ、というのではなく、そういったリスクを抱え込みながらも,なお、彼らの持ち味を生かすお店、彼らの持ち味にふれ、お客さんの心がキュ〜ンとあたたまるようなお店にしたいと思うのです。

 

 福祉事業所が運営するお店に行ったお客さんが、

「ぷかぷかに来ると、なんだかホッとする」

とおっしゃってましたが、管理されたお店は、お客さんにとっても息苦しいのだと思います。

「なんだかホッとする」

という言葉こそ大事にしたいと思うのです。そういう空間を彼らは自然に作り出してくれます。

 そのことをどこまで信頼し抜くか、だと思います。

 

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おいしいかい!?

 ぷかぷかのウィルスに感染した、という人がいました。

 

 子供2人を連れてカフェでランチを食べていました。お客さんは私の家族と他に

もう一組だったかと思います。

 お天気も良く明るくゆったりとした空気の中で

「おいしいねー」

「もう1回チョコパンとチーズのパンおかわりしたい」

などと子供と話をしていました。

 そしたら厨房の小窓のカーテンが急にシャッ!と開き、ニコニコ笑顔にマスクの方が

「おいしいかい!?」

と聞いてきました。

 一瞬何が起こったのかわかりませんでしたが、とっさに

「美味しいです!」

と負けじと大きな声で答えました。

 その方は、そうだろうと言わんばかりにニコニコのまま

「フフ〜ン」

と笑い、カーテンを閉めました。

  多分10秒程のできごとでしたが、この思ってもみない楽しいやりとりで、また食べに来ようと思いました。

 ぷかぷかウィルスに感染したのは、多分この時だと思います。

 

 

 これがきっかけでその方はぷかぷかパン教室に来るようになり、

いろいろお話をし、今はスタッフのひとりとして毎日楽しく働いています。

 「ウィルス」という言い方がいいですね。そうとしかいいようのないものが

「ぷかぷか」にはあるんだと思います。

 「ぷかぷかのファンです」とおっしゃるお客さんが最近増えていますが、

こういう方も多分ウィルスに感染したのではないかと思います。

 

 にしても、「おいしいかい!?」のひとことで、お客さんの心をわしづかみにしてしまうなんて、超人的接客だと思いました。

 

「おいしいかい!?」

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社会を変えられる、と信じる

 3月1日、日本財団であったコミュニティフォーラム2015「社会を変える、強くあたたかい組織の秘訣」に参加してきました。

 各地で活発に活動しているNPO法人の方の話をいろいろ聞いたのですが、印象に残ったのは

「社会を変えられる、と信じられるか」

という言葉でした。

 NPO法人の設立目的は様々な社会的課題を解決することにあります。そのことがほんとうに実現できる、と信じてはじめてNPO法人を立ち上げることができるのだと思います。

 実際、私自身、社会を変え、未来を自分で創っていくことができる、と信じたからNPO法人ぷかぷかを立ち上げることができたと思っています。「障がいのある人たちの社会的生きにくさを解消し、お互いが生きやすい社会を創っていく」という壮大な目標を法人の設立目的にしたのも、事業を開始するために退職金をすべて使ってしまったのも、そんな風に社会を変えていけると信じたからです。社会を変えることで、障がいのある人たちが、彼らを取り巻く地域の人たちみんなが、お互い気持ちよく生きていける、と信じたからです。

 あれから5年。ぷかぷかの周辺の社会は明らかに変わってきました。最初の頃、利用者さんの声がうるさいの、ウロウロすると目障りだの、と様々な苦情が寄せられ、もう心が折れそうになったこともたびたびありました。

 それでも「この社会は変えられる」と信じ続け、ぷかぷかの活動を続けてきました。その結果、「ぷかぷかのファンです」と自己紹介してくれるお客さんがたくさんできたり、区役所の外販で売り上げが10倍に伸びたり、しんぶん配布中に迷子になってしまった利用者さんに地域の方がやさしく声をかけてくれたり、少しずつですが地域社会は変わってきました。

  子どもの誕生会のあと、利用者さんといっしょに写真を撮らせて下さい、とおっしゃったお客さんがいました。そうして撮った写真がこれです。今、この写真の赤ちゃんは3歳になり、先日アート屋わんどのオープニングに来てくれました。一家3人の似顔絵をヨッシーに描いてもらいました。2月28日のブログにその写真が載っています。

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 「自分の手で社会を変えられるか」という問いに対し、「そんなことできるわけがない」と思っている限り、社会は何も変わりません。でも、「社会を変えられる」と「信じ続ける」、「こうありたい」「こんなことができるんじゃないか」「こんなことができるといいな」と「思い続ける」ことで、ぷかぷかの周りの社会は、ほんの少しですが、変わってきました。

 

 「信じ続けること」「思い続けること」というのは、一つの大きな「力」になるんだと思います。その力が地域社会を少しずつ変えてきたんだと思います。

 

 

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