ぷかぷか日記

幸せがほとばしり出るような絵

 ミーちゃんは昔小さな地域作業所で働いていました。ぷかぷかを始める前にやっていたパン教室や陶芸教室に来ていた縁で、ぷかぷかにやってきました。1年くらいたった頃、ケースワーカーさんが様子を見に来て、

「最近はどうですか?」

「まっすぐ前を向いて生きています。以前はずっとうつむいていました」

と答え、ちょっとびっくりしたことがあります。

「まっすぐ前を向いて生きています」なんて、なかなか口にできる言葉ではありません。それがさらっと出てきたのです。それくらいぷかぷかで働くようになってから、人生が生き生きしてきたのだと思います。

 最近描いた絵も、幸せがほとばしり出るような絵でした。こういう絵は、その人自身が幸せでないと描けません。

 

 

 ぷかぷかは就労支援事業所です。建前は就労を目指して仕事をやります。

 でも、この絵を見ていると、何が大事なのかをストレートに教えてくれます。今日、幸せな一日を過ごす、ということです。

私たち自身、それをやっているんだろうか。

奈緒ちゃんのおかげで、私たちは人になれるのかも

 先日の奈緒ちゃんについてのブログは「今までにない新しい未来を奈緒ちゃんは作っているのではないか」という言葉で終わっているので、その「今までにない新しい未来」って、どんな未来なんだろうってちょっと考えてみます。

 

     

 

 その時々に発する奈緒ちゃんの言葉がいつもステキです。場をふっと和ませ、私たちの気持ちを和らげてくれます。奈緒ちゃんがいっぺんに好きになります。

 奈緒ちゃんは場の雰囲気を感じ取るセンサーと、そこで発する言葉のセンスが、なんともすばらしいと思います。私たちにはない素晴らしいチカラを持っています。

 奈緒ちゃんのような人が社会にいることの豊かさを、もっともっとたくさんの人達と共有したいと思うのです。

 

  障害のある人達との関係は、「何かやってあげる」とか「支援する」という関係がほとんどです。「大好きになる」なんて関係は、今までありませんでした。

 ということは、この今までにない関係は、ひょっとしたら、障害のある人たちといっしょに生きる新しい未来を作っていくのではないかと思ったりするのです。

 

 そもそも、障害のある人が好き、という人はあまりいません。どちらかというと

「おつきあいしたくないな」

とか、

「なるべく近寄りたくないな」

と思っている人が多いのではないかと思います。そういうネガティブな思いが今の社会を作っています。

 それならば尚のこと、障害のある人たちのこと「大好きになる」という関係は、ひょっとしたらそこから今までにない何か新しいものが生まれるかも、と思ったりするのです。

 「大好きになる」というのは、純粋に人と人の関係です。そういう思いの時、人は人になれます。

 奈緒ちゃんのおかげで、私たちは人になれるのかも知れません。

地域における精神看護

  看護学校の精神看護学の授業で「地域における精神看護」というテーマで講義をします。ぷかぷかの話の予定でしたが、送られてきた講義スケジュールにはこんなタイトルが入っていました。精神障害の方の勉強はほとんどしたことがないので、どうしようかと思いましたが、断るのももったいないので、そのまま引き受けることにしました。娘が精神を病んでいて、色々大変だったので、そのあたりの話をしようかなと思っています。

 娘は鬱がひどく、調子が悪いと一日中布団をかぶって寝ています。色々やりたいことがあっても、体が動かないので、思いを断念する日々だったと思います。そんな中で何度も不満が爆発し、家の中で大暴れしました。もう手がつけられなくなって、警察に連絡し、夜中に何度かパトカーが来たこともあります。

 家の壁に何カ所も穴が開いています。娘が思うようにならない人生に対し、怒りを思いっきり壁にぶつけました。壁の穴を見るたびに娘のイライラ、欲求不満のすさまじさが見えるようで、とても辛くなります。

 自殺願望もあったので、外に飛び出すたびにかみさんと二人で追いかけました。階段を駆け上ったときは、上から飛び降りるのではないかと、ほんとうにハラハラしました。

 病院も4箇所くらい変えました。でも、何の改善もありませんでした。3年ほど前から中規模の病院に代わり、今はそこの院長先生に見てもらっています。いつも笑顔のやさしい女の先生で、つい昨日も受診した際、娘は彼氏が見つかった話をし、

「ええ、すごいじゃない!」

と喜んでくれたりする先生です。そのおかげで症状はずいぶん落ち着きました。

 でも一番よかったのは、病院よりも、たまたま出かけたボクシングジムとの出会いです。兄に勧められて恐る恐る出かけたのですが、ボカスカ殴ることでストレスが発散できるのか、すっきりした顔で帰ってきます。

  ジムがきっかけで、あらゆる活動が活発になりました。それまでほとんど引きこもり状態で、エネルギーのはさん場所がなかったのですが、それが一気に解放された感じ。

 娘にとっては病院の治療よりも、はるかに効果があった感じがします。ボクシングが精神障害を改善するわけではありません。でもたまりにたまったストレスを発散するにはとてもいい場所だと思います。

 ボクシングジムという地域にある資源によって救われたと思っています。地域と様々な形で関わりを持つこと、そのことが病院に行くこと以上に大事なことのように思います。

 

今までにない新しい未来を

『大好き〜奈緒ちゃんとお母さんの50年』見てきました。

 

 

 「奈緒ちゃんはお母さんが大好き、お母さんは奈緒ちゃんが大好き。50年に及ぶ大好きの記憶」と映画のチラシにありました。

 重いてんかんと知的障がいを持って生まれた奈緒ちゃん。お母さんはほんとうに大変だったと思います。

 それでも日々をいっしょに過ごす中で、奈緒ちゃんのこと、お母さんは大好きになりました。人を大好きにさせるものが奈緒ちゃんにはあります。映画を見てるだけでも、奈緒ちゃんが大好きになります。そういう魅力が奈緒ちゃんにはあります。

  それは奈緒ちゃんの生きるエネルギーそのもののような気がします。それがお母さんを育て、家族を育て、地域社会を育てたのではないかと思います。

 映画『奈緒ちゃん』のチラシに「平凡な家庭の中で、〈障害〉と立ち向かう。西村家の〈ノーマライゼーション〉の実践と言えよう」という感想が載っていましたが、そんな古い福祉的発想のはるか先を奈緒ちゃんは行ってる気がします。

 今までにない新しい未来を奈緒ちゃんは作っているのではないか、そんな気がするのです。

 

 

「いい絵ですね」って、みんなが素直に言えるようになれば

 こういう絵を描く人達こそ大事にしたいと思うのです。こういう絵を描く人達がいること、それが社会の豊かさなんだとみんなが共有できたら、社会はお互いもっと生きやすいものになる気がするのです。

 

     

 

 まぁまぁの暮らしができるニッポンにあって、こんなすばらしい絵を描く人達には、まっとうな給料が払えていません。それはやっぱりニッポンの貧しさだと思います。

 どうしたらいいのか、それをみんなで必死になって考える。

 

 以前見学にきた市会議員が、絵を見て「指導が大変だったでしょう」などといったことがありましたが、指導しないとこういう絵が描けない、という彼らへの思い込みこそが問題だと思うのです。そういった思い込みが社会全体を覆っている気がします。

 これはすごくもったいないと思うのです。宝物を見落としているというか、そんな気がするのです。

 こんな作品を作る人達は社会の宝だと思います。だから大事にしたいし、まっとうな給料も支払いたい。そのためにはどうしたらいいのか、そこをちゃんと考えたいと思うのです。

 

  「いい絵ですね」って、みんなが素直に言えるようになれば、社会はお互いがもっと生きやすく、豊かになっていく気がするのです。何よりもまっとうな給料が払える社会になる気がするのです。

工賃向上

先日、福祉事業所で働く方がぷかぷかの見学にきて、こんな感想を書いていました。

 

「工賃向上に重点をおいていないところにまず驚いた。工賃向上支援員になってからは利用者の工賃を上げることばかり考えていたが、ぷかぷかさんはとにかく利用者本位で、その人らしさを大事にしていた。自分たちもそうしたいが、やはり工賃向上は目指さなければならず、そこの折り合いをどうつけなければならないか、難しいと感じた。」

 

 工賃、つまり給料は少ないよりは多い方がいいとは思います。でも「多くなった給料で何を買い、何を実現するか」「そのことは自分の幸せにつながるのか。」といった問いこそ大事だと思うのです。でも、そういったことはどうもはっきりないというか、後回しのようです。

 ぷかぷかが始まった当初、「工賃向上」なんて言葉に初めて出会い(確か障害支援課あたりからの要請)、福祉事業所はそういうものを目指さないといけないんだと思い、結構頑張ったこともありました。でも、どう頑張ってもパンの売り上げなんてたかが知れています。

 その頃経営上のアドバイスを色々いただいた経営アドバイザーの方と二人して朝6時からパン屋に入り、たまたま入った大量注文をさばいたことがあります。でも、終わったあと、あれだけ頑張って売り上げはたったこれだけ、と二人してがっかりしたことがあります。

 こんなところに力を入れるよりも、ぷかぷかさん達が充実した日々を過ごすこと、お互い「いい一日だったね」って言い合えるような日々を創り出すこと、それが大事じゃないか、ってその時気がつきました。それが今のぷかぷかの雰囲気を作っています。

 

 

きっとあなたの人生を豊かにします

 毎日新聞の記者さんがやっている大学の社会福祉の授業で、今年もzoomでぷかぷかの話をすることになりました。

 「ぷかぷかの魅力について」と、「どうやったらぷかぷかみたいな福祉作業所ができるのか」のお話をしてほしいという依頼でした。

 ぷかぷかの魅力を自分で語るのはなかなかむつかしいのですが、強いていえば、障がいのある人達が毎日楽しく働いていること、彼らとおつきあいする毎日が楽しいこと、といったことになるでしょうか。

 ぷかぷかはみんなで「いい一日をつくろう」というのが大きな目標です。ですから障がいのある人達も、まわりの私たちも楽しい毎日を送っている、というのは当たり前のことです。でも、福祉の世界では「楽しい毎日を送っている」なんて、あまり語られませんね。

 やはり福祉の世界では、障がいのある人達を「支援する」ということが大きな目的になっているからでしょうか。

 

 授業を受ける学生さんには、どこかで障がいのある人達と出会ってほしいと思っています。支援するとかではなく、人として相手に出会ってほしい。そうすれば今までにない新しい気づきが生まれます。

 昔、私自身は養護学校で障がいのある子ども達と出会いました。子ども達は言葉がしゃべれないとか、着替えができないとか、うんこの始末も自分でできないとか、できないことだらけでした。でも毎日おつきあいしていると、そんなできないことを超えてしまうような人としての魅力を持っていることに気がつきました。

 こんなステキな子どもたちがいたんだ!

という気づき。この気づきは、私の人生にとって、ものすごく大きなものでした。それまでは、なにかができることはいいことだ、みたいに思っていましたが、そうじゃないところで生きている子どもたちがいて、しかもずっとそばにいっしょにいたいような魅力を持っていた。

 世界の見方が変わりましたね。

 

 障がいのある人達との出会いは、きっとあなたの人生を豊かにします。そんなことを学生さん達に伝えたいです。

 

「hanaちゃんの家」をみんなでつくろうよ

 hanaちゃんとお母さんがぷかぷかにごはんを食べに来たので、久しぶりに色々お話ししました。

 hanaちゃんはこの4月から支援学校の高等部に行きます。で、卒業後の行き先をすぐに探さないと、先々困ってしまうとお母さんはお話しされていました。hanaちゃんは重度障がいのお子さんで、学校の終わった後の放課後デイサービスも、面倒見るのが大変だからと、一箇所では預かってくれず、毎日違うデイサービスに行くそうです。そんな苦労をしているので、卒業後の行き先の心配を今からされているようでした。

 ま、それも大事なことかも知れませんが、それと並行して、hanaちゃんが気持ちよく毎日過ごせる場所をお母さん自身が作る、ということを考えてもいいんじゃないか、と提案しました。どこかいいところを探したり、誰かにまかすのではなく、自分で作る。

 なんといってもhanaちゃんのこといちばんわかっているのはお母さんです。そうであれば、お母さんが作るのがいちばんいいのではないかと思います。

 この「自分で作る」ということをなかなかみんな思いつかないし、「そんなの無理無理」とはじめから逃げてしまう人が多いです。

 でもトライすることがやはり大事だと思います。トライしてだめなら、どうしてだめなのかを考えればいいし、たとえ失敗しても、そこから得るものは大きいです。何もしないよりは、とにかくやってみた方がいいのです。

 「hanaちゃんの家」をみんなでつくろうよ、って呼びかければ、hanaちゃんのファンはきっと集まってきます。みんなでわいわい楽しみながらできたらいいな。

ずいぶんお姉さんになりました。

 

お母さんの幸せそうな顔! 

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