ぷかぷか日記

みんなでワークショップ

  • 掘り出し物がいっぱいの市場
     今日「第二回表現の市場」をやります。紺野さんは今年もすばらしい字を書いてくれました。こんな字を書く人とは、一緒に生きていった方が絶対に「得!」だと思います。もう見ただけで、ゆるっとした気持ちになります。何かと窮屈さを感じる世の中にあって、こんな字は私たちを救ってくれます。    「表現の市場」は障がいのある人たちの表現に出会う「市場」です。表現の世界においては、障がいがあるとかないとか論ずること自体、意味がありません。  下の写真のダイちゃんは、たった一人で300人も入る大きなホールを支えています。その彼の姿を見ながら「彼は障害者だ」と言うことにどれほどの意味があるのでしょう。そうやって蔑む世界を、ダイちゃんはバチ一本で超えています。ダイちゃんのバチが創り出す世界の豊かさを前に、障がいがあるとかないとかで人を分けてしまう世界の貧しさをこそ、私たちは思うべきです。   「第二回表現の市場」の字。こんな字は社会を豊かにします。表現の市場はですから、社会を豊かにする市場なのです。さぁ、みなさん、市場をのぞきに来て下さい。掘り出し物がいっぱいありますよ。
  • 本番の舞台では果たして予定している歌を歌ってくれるのでしょうか。
     発表会前の最後の練習。午前中リハーサル室で稽古したあと、ステージで稽古しました。   舞台監督の成沢さんから説明を受けてから舞台へ。   今年もめくりの字がすばらしい! 私たちにはこんなにアートな字は絶対に書けません。こんな字を書く人は街の宝です。   「岩手軽便鉄道の一月」に出てくる木(さわぐるみジュグランダー、くわのきモルスランダーなど)をみんなで作りました。    ぷかぷかのみんなと地域の子ども達大人達で描いた大きなクジラの絵を背景画として飾りました。わんどの部屋に飾っているときはすごい迫力なのですが、舞台にあげたらどうかなと心配していました。でもこうして飾ってみると、なかなかどうして、しっかり存在感を示していました。写真では色がいまいちですが、現物はすばらしい色合いです。   むっつりのお面をつける間、むっつりの「空気」がみんなを覆います。    森三成子さんデザインのむっつり大王の絵を背景に、みんなが一斉に振り向きます。   むっつりに覆われた中、小山さんがお母さんにいつものように電話をします。 小山さんはワークショップの終わったあと、いつもお母さんに電話します。電話口で ♩おひさま〜が りんごの〜 はっぱをとおして ひ〜かる〜♩ って歌っているのを聞いて、なんだかとてもあたたかい気持ちになって、この歌こそが むっつりの世界からみんなを救う、という筋書きを作ったのですが、舞台の上で小山さんが歌ったのは、 ♩つかれた つかれた…♩ というむっつり大王の歌で、みんなのけぞってしまいました。 こんなふうに筋書き通りに行かないところが彼らと一緒にやるワークショップの面白いところ。明日の本番の舞台では果たして予定している歌を歌ってくれるのでしょうか。   明日「表現の市場」です。読売新聞と朝日新聞に紹介されましたので、ひょっとしたら満席になる可能性があります。お早めにお出かけ下さい。 pukapuka-pan.hatenablog.com   この記事、あちこち拡散して下さい。         
  • 希望のある未来を作っていく関係がここに
     第二期「みんなでワークショップ」の6回目。ようやく全体を通して稽古するところまで来ました。  オリジナル創作劇「みんなの《生きる》」は「岩手軽便鉄道の一月」の歌から始まります。歌に出てくる「かわやなぎサリクスランダー」とか「さわぐるみジュグランダー」などの木をみんなで表現します。  辻さんのおだやかな表情!ワークショップはこんな表情でいられる場です。    谷川俊太郎の詩「生きる」をみんなで朗読します。長い詩なので、五つのグループに分けて朗読します。朗読が終わると体で形を作ります。安見ちゃんのピアノがすばらしくいいです。デフパペの善岡さんは手話で詩を表現します。 www.youtube.com    三つの「私たちの《生きる》」の発表です。  グループ詩の朗読がこんな感じで始まります。 www.youtube.com   グループ詩を元に作った簡単な芝居を発表し、みんなで評価し合います。ワークショップはこういう作業を積み重ねて、少しずつ芝居ができあがっていいます。  この芝居の中では電車の中で車掌が乗客にアイスクリームを配ったりする場面があります。こんなことはふつうはあり得ないのですが、ぷかぷかのメンバーさんと一緒に芝居を作ると、こんな楽しいことが当たり前のように出てきます。実際にこんなことができたら、世界はすっごく楽しくなるだろうなと思うのです。  押し合いへし合いの電車の中、突然車掌が「今日はスペシャルサービスでみなさんにアイスを配ります」とアイスを配り始めたら、なんだかみんなもう笑うしかない、というか、このぎすぎすした社会にあってはこういうとんでもない提案こそが、社会の中でゆるっとした部分、私たちがホッとする部分を作っていくのだと思います。    北海道から駆けつけてくれた森さんとデフパペットシアターの人たちにクジラの頭としっぽを作ってもらいました。だんだんクジラに見えてきました。 潮も吹きます。近所のおじさんことオーヤさんががんばっています。    クジラの楽しい世界の中で「むっつり」が広がり始めます。「むっつり」が広がっていく不気味さをいろんな人の声を拾い集めて編集し、流します。その一つに舞台監督の成沢さんの声を入れます。成沢さんは昔「68/71黒色テント」というラジカルな劇団で役者をやっていました。30年ほど前、障がいのある人たちとの演劇ワークショップの提案を最初に聞いてくれ、今ひとつ納得してない顔でしたが、それでも何度もテントの稽古場まで高崎が話をしに来るので「しょうがねぇなぁ」とかいいながらも、東京の練馬から遠く横浜の瀬谷まできてくれたのが成沢さんと「68/71黒色テント」の仲間達でした。ワークショップの初日に、障がいのある人たちと一緒にワークショップをすることの意味を納得。その続きで今日のワークショップがあります。この人の動きがなければ、今の「みんなでワークショップ」はありませんでした。その成沢さんの声を録音しました。  「もっとねちっこく」とか、「もっと気色悪く」とかいろいろ注文をつけていると「高崎さんやってみたら」と演出の花崎さんにいわれ、突然声の役者をやることに。 www.youtube.com  久しぶりに気合いを入れて声を出したらものすごくすっきりしました。芝居って楽しいなとしみじみ思いました。  これは「むっつり」に感染しない人たちが現れて、「むっつり」がへなへなとしぼんでいくところの台詞ですが、「むっつり」が肥大していく時の台詞は結構怖いものがあります。 「フフフ、すっかりむっつり大王の天下だ。総がかりで金儲けだ。一番儲かるのは戦争だ。もっともっとむっつり、不機嫌、不満、不安をあおって、、、フフフ」  憲法改正するんだと最近やたら息巻いているアベになった気分でした。   午後の通し稽古で私が気合いを入れて読んだら「ひゃ〜、怖い〜」という声がいくつか上がりました。  稽古のあとの感想を言い合うところでは 「高崎さんて、負のオーラが充満してるんじゃないですか」 なんて言った方がいましたが、そうかも知れないと思いました。     「むっつり」に感染しない人たちの一人に紺野さんが登場します。紺野さんはサザエさんの話をし、波平さんに一緒にお風呂に入ろうよ、と迫ります。即興でこの場面を作り、迫られた近所のおじさんことオーヤさんはどう答えていいかわからず、困っていました。   「むっつり」に感染しない人たちに救われた人たちは、こんなに楽しそうに踊ります。これがワークショップで作り上げた場です。障がいがあるとかないとかを超えた、希望のある未来を作っていく関係がここにはあります。 www.youtube.com    ワークショップはあと一回。どんな芝居に仕上がるか、楽しみにしていてください。   2月14日(日) 「表現の市場」の中で発表します。  pukapuka-pan.hatenablog.com    
  • 暴走を始めるともうコントロールがきかなくなる
     ワークショップの進行役をやっている花崎さん、クジラの人形を作ってくれている森さんと打ち合わせしました。森さんは北海道から今回の人形作りのために来てくれた人形師です。人形を作る人であり、人形を使い、演ずる人であり、人形を使った舞台を作る人です。  今回ワークショップで作った芝居には「みんなの《生きる》」のポジティブな面の象徴として楽しく泳ぎ回るクジラが登場します。  ぷかぷかのメンバーさん、地域の人たちがいっしょに描いた大きなクジラの絵にはみんなの楽しさがぎっしり詰まっていて、それが絵から飛び出したという設定です。 pukapuka-pan.hatenablog.com   そのクジラの頭を森さんがデザインし、デフパペットシアターの人たちが作業場で作ってくれました。   これも森さんの発案なのですが、何に使うかは当日まで内緒です。とても自由度の高い素材で、イメージが自由にふくらみます。     ワークショップでは全員がクジラになって泳ぎ回ったりしましたが、舞台は神奈川県で一番といわれる大きなグランドピアノがかなりの場所を占めるため、みんなでクジラをやるのはかなりむつかしいかなと思っています。  前回のワークショップでは、こんな感じになって、なんだかデモをやっているようでした。これをどうやってクジラに見せるかが、腕の見せ所。あと2回のワークショップの中でみんなで考えます。    クジラをやっている途中で、突然一人ひとりの中のネガティブな部分がうごめきだし、瞬く間に広がっていきます。ネガティブがどんどん、どんどん肥大化し、頂点まで達したとき、仮面をかぶった全員が、ババ〜ン!と振り向きます。オペラ『飢餓陣営』のバナナン大将の歌を歌いながら観客に迫ります。  打ち合わせしながらも怖いなと思ったのは、このネガティブな部分が集まって肥大化するとコントロールできなくなり、暴走し始める、ということです。ナチスドイツがそうでした。ヨーロッパの歴史に詳しい花崎さんによると、最初の頃はヒットラーが人々の不満を利用しようとしたらしい(人々の側からいうと、むっつりにつけ込まれた)のですが、人々のネガティブな部分が肥大化し、暴走を始めるともうコントロールできなくなったというのです。  「一億総活躍社会」などという威勢のいい、それでいて空疎な言葉に、それでも多くの人たちがそれについていこうとしている状況は、このネガティブな部分の肥大化が始まり、暴走が始まっているのではないか、とすら思ったりするのです。  芝居ではネガティブ(むっつり)に感染しないぷかぷかのメンバーさんが登場し、 pukapuka-pan.hatenablog.com 彼らこそがこの暴走(息苦しい社会)を止めるんじゃないか、という思いを、その場面ではこめているのですが、それがどこまで伝えられるか、発表会まであと二回のワークショップが勝負です。    できあがった芝居は2月14日(日)表現の市場で発表します。   大きなチラシ http://www.tokyuensen.com/resource/event/img/2016/1601_042.jpg    
  • 第2回表現の市場
    2月14日(日) みどりアートパークホールで《第2回表現の市場》をやります。 障がいのある人たちの、元気な元気な《表現の市場》です。舞台に立っている人も、舞台を見る人も、みんな元気になる《表現の市場》です。この元気こそが、今日よりも、もっといい明日を創ります。ぜひ見に来てください。一緒に、いい明日を創りましょう。     大きなチラシ http://www.tokyuensen.com/resource/event/img/2016/1601_042.jpg     参加グループを紹介します。   《和太鼓あらじん》  和太鼓あらじんは、2003年から活動しています。仲間と叩く太鼓が大好きです。 今年は横浜市消防局の出初式に出演しました。 ウッキウキステージを披露します。 昨年の舞台   《分教室はっぱ隊》 2008年秋に神奈川県立瀬谷養護学校大和東分教室で結成されたパフォーマンスグループです。現在メンバーは12名です。レパートリーは、母校のそばを流れる境川をテーマにしたラップ、演歌、盆踊りソング、バラードが中心です。そして、チームのモットーは、知る人ぞ知るはっぱ隊の名曲「Yatta!」の一節「君が変われば世界も変わる 丸腰だから最強だ!」です。夢や希望を見出しにくい現代の社会、その一隅にでも元気、笑顔、夢、希望を届けようと日々様々な場所でパフォーマンスを披露しています。  昨年の舞台   《STEP IN THE LIFE》 楽しむことをモットーに、ダンスを通じて様々な出会いときっかけをお届けしています。スクールでは、健常の元気なキッズ、愉快なスペシャルな(障がいのある)仲間達、ダイエットに励むママさんや、健康志向なご婦人等…様々なメンバーが様々な用途に応じて楽しくレッスンに通っております。まだ日の浅いスクールではありますが、コンテスト入賞チームやバックダンサー等を輩出する他、スペシャルな仲間達がテレビ番組で取り上げられたり、横浜市最大のイベントである横浜開港祭のメインステージに公式出演者として参加したりと、注目をあつめております!今日は会場の皆さんにダンスの楽しさを少しでも感じてもらえると嬉しいです。皆さん、一緒に踊りましょうー!! 昨年の舞台   《楽しい自由なえんげきチーム》  ■出しもののタイトル:「山口さんを待ちながら」   ■出しものの紹介: 山口さんは私たちえんげきチームの仲間の一人です。 私たちは山口さんにたくさん話を聞きました。 夏の思い出、情熱的な恋の話、ボランティア活動の話…。 山口さんのことを知りたくていろんな話を聞くけれど、 聞けば聞くほどもっともっと知りたくなるけれど、 本当に山口さんを知ることができるのか? 私たちの劇はそんな山口さんを知りたい気持ちと、「?」の気持ちをベースにしてつくりました。   ■メッセージ 私たち「楽しい自由なえんげきチーム」は、精神障害のある人、支援者、小学生などなど、いろんな人たちが混ぜこぜのチームです。磯子区にあるシャロームの家の作業部屋を稽古場として使わせてもらいながら活動をしています。活動を開始してまだ1年とちょっと。劇を発表するのも今回で2回目。そんな私たちがただただ「楽しく」、「自由に」つくったえんげきです。お楽しみください。       《デフ・パペットシアター・ひとみ》 デフ・パペットシアター・ひとみは、耳の聴こえない人と聴こえる人が、協同して公演活動を行うプロの人形劇団として結成し、神奈川県川崎市を拠点に全国で活動をしています。お互いの感性を活かし合い新しい人形劇の表現に挑戦し、今までに無言劇・手話・音声・生演奏・文字スライド・プラカードを駆使してセリフを表現したもの…など様々な表現方法に試みてきました。 障がいの有無に関わらず、子どもから大人まで楽しめる人形劇創りを目指しています。 これからも私たちの活動が地域の「福祉」と「文化」をつなぎ、広くたくさんの方の心に届くことを願い、意欲的な作品創りを続けていきます。ホームページ http://deaf.puppet.or.jp/index.html 今年もまたぷかぷかのワークショップから参加させていただきました。 ぷかぷか×地域×詩×歌×ピアノ×人形劇・・・どんな舞台が出来上がるのか?! 私たちも楽しみです!ご期待ください! 昨年の舞台   《みんなでワークショップ》  ぷかぷかで働いているメンバーさんと地域の人たちで月一回集まって演劇ワークショップをおこない、6ヶ月かけて作った芝居を発表します。  昨年はオペラシアターこんにゃく座の作品『森は生きている』を6ヶ月かけてぷかぷかふうにアレンジ、歌劇『森は生きている』ぷかぷか版を上演しました。  今年は谷川俊太郎の詩『生きる』を元に、「みんなの《生きる》」という作品を作りました。みんなの大切にしているものが、どのように奪われ、どのように取り戻すか、といったお話です。 pukapuka-pan.xsrv.jp 昨年の舞台 pukapuka-pan.xsrv.jp  
  • hanaちゃんもいっしょに舞台に立ってくれるといいな
     みんなでワークショップの発表会に使われる構成台本には《hana基準》が入っています。 ameblo.jp  朗読するのは、それを書いた花岡さん(hanaちゃんもいっしょに舞台に立ってくれるといいなと思っています。寝っ転がっちゃうかも知れませんが…)。構成台本はワークショップの進行役をやっている演劇デザインギルドの花崎さんが書いたものですが、私がぷかぷか日記で紹介した《hana基準》の話に感銘し、構成台本に入れたというわけです。 「みんなの《生きる》」の一つの世界として、大きなクジラになって(スイミーのイメージです)みんなで自由に楽しそうに泳ぎ回るシーンがあるのですが、その中で花岡さんが《hana基準》を朗読します。 ameblo.jp    《hana基準》はぷかぷかのメッセージでもあるのです。彼らを社会に会わせるのではなく、社会を彼らに合わせていく、という発想です。花岡さんは「世界がhana基準になったら」世界はもっと平和で、豊かで、みんながもっと楽に生きられるといいます。  ぷかぷかに来たお客さんが、心を癒やされ、ぷかぷかのファンになる方が多いのも、メンバーさん達がありのままの自分でいられるぷかぷかの雰囲気に、平和で豊かな世界を感じ、ふっと楽な気持ちになる自分を見つけたのだと思います。そんなふうに《ぷかぷか基準》が広がっていくと、社会はもっともっと暮らしやすくなるのではないかと思うのです。  花岡さんは本気で《hana基準》を世界中に広げたいと思っています。私も本気で《ぷかぷか基準》を社会に広げていきたいと思っています。  3月末に完成するぷかぷかのプロモーションビデオは、その第一歩になると思っています。
  • 『むっつり』の中にもの悲しさが
     谷川俊太郎の詩《生きる》の朗読から始まった今期のワークショップも今回で5回目。「みんなの《生きる》」世界をつぶしてしまうものとして「むっつり大王」を考えたのですが、ワークショップをやる中で、「むっつり大王」は実は自分の中にあることがわかりました。社会の閉塞感とか窮屈さは、実は自分自身が作りだしていることの発見はとても大きいものでした。その「むっつり」をどう乗り越えていけるのか、が今回のワークショップの大きなテーマになりました。 「むっつり」が広がっていく様をワークショップの中でやったとき、その「むっつり」に感染しない人たちがいるんじゃないか、という意見がぽろっと出ました。ぷかぷかのメンバーさん達のことです。  前回のワークショップの記録からその部分を再度記載します。 ★★  終わってからの反省会。「むっつり大王」を消滅させるためには何をすればいいのか、がなかなか見えてきません。クジラを登場させるにしても、それが「むっつり大王」をやっつける魔法の杖になってはワークショップをやってきた意味がなくなります。  「むっつりに感染しない人たちもいるんじゃないか」という意見が出ました。ぷかぷかのメンバーさん達のことです。「むっつり」は様々な不満、欲望から生まれます。慎ましく自分の人生を楽しんでいる彼らには、そういう気持ちがほとんどありません。彼らこそ、この「むっつり」に覆われた世界からみんなを救い出すんじゃないか、というわけです。  ワークショップの中で、いらいらした気分でどうしようもなくなったときや落ち込んだとき、ぷかぷかに行くとなぜか救われた気分になるんです、とおっしゃった方がいました。「ぷかぷかが好き!」という人がどんどん増えているのも、社会の中で生きづらさを感じている人が多いからではないのかという気がします。  「むっつり」がどんどん増えていって、「むっつり大王」がグワァ〜ンと最大限大きくなって暗転した舞台にスポットライトが当たります。そこにはぷかぷかのメンバーさん。  コヤマさんはワークショップが終わると必ずお母さんに電話します。 「もしもし、ショウヘイです、きょうは、♪ おひさまーが りんごのー はっぱをとおして ひーかる おひさまーが りんごのー はっぱのかげをつーくるー ♪ と歌いました。たのしかったです」と、電話口で歌うのです。 ★★  このメッセージを芝居の中で、どう表現するのか、がむつかしいところです。    「むっつり」の感染が広がって、社会全体がどうしようもなく息苦しく、恐ろしくなった時をこんなふうに表現します。  仮面をかぶったみんなが一斉に振り返ります。ここからオペラ『飢餓陣営』(宮澤賢治作、林光作曲、黒テントの赤い教室「オペラの学校」)のなかのバナナン大将の歌の一節を歌うのですが、そのイントロの最初のピアノの音で一斉に振り返ったときの迫力、恐ろしさはすごいものでした。そのまま舞台の前まで歩き、お客さんに迫ります。      ピアニストのあみちゃんが気合いを入れて指導してくれました。 どこかもの悲しさの漂ういい歌です。「むっつり」の広がる世界は恐ろしいのですが、その一方で、一人ひとりに中にはどこかもの悲しさが漂っているのではないかと思いました。その部分があるからこそ、「むっつり」に感染しない人たちに共感するのだと思いました。 [http://] ww.youtube.com   [http://] w.youtube.com    「むっつり」に感染しない人たちに共感し、人々が自分を取り戻す、というところが、芝居として今ひとつうまく表現できてない気がしていて、本番まであと2回のワークショップで、どこまで作りきることができるか、いちばん苦しくて、いちばん楽しいときです。      全体の流れとしてはこんなふうになります。    谷川俊太郎の詩『生きる』の朗読は、エリックサティのピアノをバックに一人一行ずつ読み進めます。   一行読んだら、次の人に詩を渡し、体で形を作ります。次の人はその形につながる形を作ります。そうやってできたのがこれ。  たとえば辻さんを出発点にこんなことができるということと。これがワークショップのおもしろいところです。   ひととおり通して発表したので、全体のイメージがみんなで共有できました。むっつり大王の世界からみんなを救い出すぷかぷかのメンバーさん達の台詞がうまくお客さん達に届くかどうか、そこがいちばんの勝負所です。     読売新聞の方が取材に来ていました。 なんともとんちんかんなやりとりに、みんな笑ってしまいました。どんな記事になるのでしょうね。    ワークショップの発表会は2月14日(日)『表現の市場』の中でやります。ぜひ来て下さい。    
  • むっつりに感染しない人たち
     今期のワークショップは谷川俊太郎の詩《生きる》をモデルに、参加者一人ひとりが自分の《生きる》をテーマにした詩を作り、その詩をみんなの詩としてまとめ、それを芝居の形にするドラトラ(詩劇)の方法を取り入れました。  それぞれの《生きる》が見えたりしておもしろかったのですが、一人ひとりの詩をみんなの詩としてまとめる段階で、どうしても言葉のやりとりが多くなり、ぷかぷかのメンバーさんがそのやりとりの中には入れない場面が生じました。抽象的な議論はメンバーさんの苦手とするところです。  言葉ではなく、体で表現しながら先へ進んでいこう、という試みを今回のワークショップではやりました。歌も、歌の場面を想像し、体で表現してみました。 1,歌を体で表現 《つまさききらきら》は 地面に写った葉っぱの影の上を飛ぶ歌です。床の上にガムテープで葉っぱの影を描き、その上を飛びながら歌ってみました。   《岩手軽便鉄道の一月》は宮澤賢治作詞、林光作曲の歌で、キラキラ光る凍った木々の立ち並ぶ雪原をのどかに走る蒸気機関車の軽便鉄道です。「かがみをつるし」という表現がいかにも宮澤賢治の世界で、歌っていると鏡のようにキラキラ光る雪原の風景が目に浮かびます。  クルミの木ジュグランダーのジュグランダーとか、かわやなぎサリックスランダーのサリックスランダーはクルミや柳の学名から宮澤賢治が作った造語のようです。それを体で表現してみました。「クルミの木ジュグランダー」とか「かわやなぎサリックスランダー」っていいながら、ぱっと体で表現すれば、それが「クルミの木ジュグランダー」になり「かわやなぎサリックスランダー」になるところが芝居のおもしろいところです。  これが「クルミの木ジュグランダー」 これが「かわやなぎサリックスランダー」  ね、そんなふうに見えるでしょ。   2,誰かに届ける朗読  谷川修太郎の詩「生きる」の朗読は、一人ずつ順番に一行ずつ読んだのですが、今回は次の読み手を自分で選びました。この詩の読み手をあなたに引き継いで欲しい、と。「生きる」の世界を誰かに引き継ぐ、ということをみんなで共有した気がしました。 www.youtube.com   3,クジラになる  みんなの大切にしたいことをことごとく破壊してしまう「むっつり大王」は実は自分の中にあったことを前回のワークショップで見つけました。その「むっつり大王」問題を解決するために「ぷかぷか」で作った段ボール製のクジラがどこかで使えるんじゃないか、という案が出ました。  そのクジラをワークショップ会場のみどりアートパークまで持ってこようとしたのですが、大きすぎで、ぷかぷかが持っている一番大きなワゴン車にも入らないことがわかって断念。それで今回はわんどのワークショップで描いた大きなクジラの絵を持ってきて、クジラの登場するDVDを見ました。クジラの鳴き声が聞こえます。  みんなでクジラの形を作りました、   みんなでクジラや魚になって海を泳ぎました。ツジさんがクジラの鳴き声をやっています。 www.youtube.com  この体験はとても好評でした。   4,大切にしたいこと  みんなで作った詩をもう一度取り出し、グル−プ毎に大切にしたいことを三つ取り出して、それを簡単な芝居にしました。  野球をやったあと、家に帰ってカレーライスを食べて早く寝たい、という作品がありました。それが大切にしたいこと、というあたりがメンバーさんならではの発想。ふつうの人ばかりのグループでは、こういうことは絶対といっていいくらい出てきません。 www.youtube.com    電車に乗りたい、アイスクリームが食べたい、という作品もありました。車掌がアイスクリームを販売していました。   5,むっつりが広がる  「むっつり大王」は自分の中にいる、という発見から、「むっつり」の感情がどんなふうに広がっていくかをやってみました。「むっつりの階段」をやりながら、そのむっつりを外に広げてみました。 「むっつり」がどんどん広がって、恐ろしいくらいでした。   仮面をかぶって「むっつりの言葉」を言ってみました。 www.youtube.com     6,むっつりに感染しない人たち  終わってからの反省会。「むっつり大王」を消滅させるためには何をすればいいのか、がなかなか見えてきません。クジラを登場させるにしても、それが「むっつり大王」をやっつける魔法の杖になってはワークショップをやってきた意味がなくなります。  「むっつりに感染しない人たちもいるんじゃないか」という意見が出ました。ぷかぷかのメンバーさん達のことです。「むっつり」は様々な不満、欲望から生まれます。慎ましく自分の人生を楽しんでいる彼らには、そういう気持ちがほとんどありません。彼らこそ、この「むっつり」に覆われた世界からみんなを救い出すんじゃないか、というわけです。  ワークショップの中で、いらいらした気分でどうしようもなくなったときや落ち込んだとき、ぷかぷかに行くとなぜか救われた気分になるんです、とおっしゃった方がいました。「ぷかぷかが好き!」という人がどんどん増えているのも、社会の中で生きづらさを感じている人が多いからではないのかという気がします。  「むっつり」がどんどん増えていって、「むっつり大王」がグワァ〜ンと最大限大きくなって暗転した舞台にスポットライトが当たります。そこにはぷかぷかのメンバーさん。  コヤマさんはワークショップが終わると必ずお母さんに電話します。 「もしもし、ショウヘイです、きょうは、♪ おひさまーが りんごのー はっぱをとおして ひーかる おひさまーが りんごのー はっぱのかげをつーくるー ♪ と歌いました。たのしかったです」と、電話口で歌うのです。  スポットライトの中で、こんなエピソードをやれたら、と思っています。      
  • 悩むおじさん−2  とても深いところを揺すぶられ…
     近所の悩むおじさんことオーヤさんがワークショップの感想を送ってきました。 pukapuka-pan.hatenablog.com  発表会の直前のワークショップに仕事が休めなくて参加できないかもと言っていたオーヤさん、仕事が忙しいのにワークショップがますますおもしろくなって、更に悩みが深くなったようです。 ●●●  今回、チームに分かれて「挨拶を無視される」「さいふを落とした」「こまっている」の芝居をすることや、皆でむっつり大王のお面を作り嫌なことを言うことを初めてやりました。 芝居では、それぞれのテーマについて、どのような場面を表現するかを皆で考え発表しました。「さいふを落とした」という芝居では、実際はもっと焦りそうだけど、思ったことを表現できない、もどかしさがありましたが、ヨッシーが穴を掘って財布をさがす芝居をしたときは、驚きとともに、笑えました。こんなことは思いつかないし、できないという感じです。  芝居を通し、普段の生活では、考えないことや感じないことを経験することができました。 芝居の面白さってこんなところにあるのかと思いました。  むっつり大王では、各々がイメージするむっつり顏のお面を作り、かぶって嫌なことを言いました。お面をかぶるだけで、普段言えないことを言えたことに驚きました。  むっつり大王が登場する劇は、どんなことになるか予想できませんが、面白くなりそうです。 非常に楽しみです。 ●●●  発表会直前のワークショップ、オーヤさんはどうするのかなぁ、と楽しみにしています。仕事を取るのか、ワークショップを取るのか、まじめなサラリーマン人生を送ってきたオーヤさんにとっては、人生の大きな分かれ目と言っていいほどのこれは出来事になると思います。  私の話を聞いて、なんだかおもしろそうって思ってワークショップに参加したのですが、まさか自分の人生とこういう形で向き合うことになるとは思ってもみなかったのではないかと思います。でもね、こういうことがあるから、ワークショップはおもしろいんですよ。それだけワークショップでやっていることは、人間にとって、とても深いところを揺さぶるのだと思います。  ちょっとだけですが、新しい人生が始まるのか、それとも今まで通りの人生なのか。どちらが正しいというものでもありません。大事なことは思いっきり悩むこと。悩んで悩んで悩みきって欲しいなと思います。
  • なんだか面白い、特別なお兄さんお姉さんたち
    ぽんちゃんから再び娘さんがワークショップに参加する理由についてメールがありました。   ●●● 昨日ははっきりとは書かなかったのですが 娘に「障がい」や「障がい者」という言葉を使ったこともないし 教えたことがありません。   カフェベーカリーぷかぷかで働く人たち=ぷかぷかさん   私は娘にメンバーさんたちのことをそう伝えているし、 娘もそのまま認識しているはずです。   「障がい」という言葉や概念を知らない娘にとって メンバーさんたちは、他の大人たちとどこも違わないのだと思います。   それどころか、自分が出逢った大人たちよりも なんだか面白い、特別なお兄さんお姉さんたちだと思っているのではないでしょうか。   以前、ぷかぷか5周年イベントで辻さんの歌を聞いたことがあります。   歯磨きしながら歌う姿がおもしろくて仕方がなかったようで、 家でもよく「歌のお兄さん」の話をしていました。   そして、しばらく後のパン教室に参加した時に、試食の時間、辻さんが娘の隣にすわって来ました。 その瞬間、娘はこっそりと、すごーく、嬉しそうな顔をしたのです。   それは、例えば「有名人が偶然隣の席に座ってきた」ときのような びっくりやら嬉しいやら、恥ずかしいやら、何とも言えない感覚というか…   端から見ると、そんな感じに見えました。   娘にとってメンバーさんたちは、テレビに出ている人たちに近いような存在なのかもしれません。 よく子ども番組に出てくる、歌のお兄さんやお姉さんのような。   ああ、だから、そんな憧れで大すきな人たちとワークショップでたくさん触れ合えて 距離が近づいて、それで嬉しいのかもしれませんね。   娘がワークショップを楽しみにしている理由は、きっとひとつではないのかもしれません。   これからの娘がメンバーさんたちとどういう関係を築いていくのか、楽しみです。 また次回、娘と一緒に参加させていただきます。  
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