ぷかぷか日記

サクラちゃんとコンノさん

  朝、土曜日のパン教室に参加したサクラちゃんのお母さんからびっくりするようなメールが来ました。

 

 サクラちゃんはおしゃべりしません。コンノさんが

「どうしてしゃべらないの?」

と聞くので、

「コンノさんがべちゃべちゃうるさくしゃべるから、しゃべりたくないんだと思うよ」

「ふ〜ん」

といっていましたが、サクラちゃんはそのおしゃべりなコンノさんをしっかり観察していたようです。おしゃべりだけど、どこかあたたかく、優しいお兄さんだと思ったようです。

 みんなで食事したあと、なんとそのサクラちゃんはコンノさんの膝に乗っていた、とお母さんのメールにありました。

 「もともと人懐こいとは言われますが、人の膝の上に乗るのはあまりありません。コンノさんのお人柄が桜の心に響いたんでしょうね。
 コンノさんも嫌がらずに応じてくれて、見ている私が和みました。…」
 
 サクラちゃんはかなり障がいの重いお子さんで、おしゃべりしないので、コミュニケーションを取るのが、慣れないとかなりむつかしいようでした。それでもコンノさんの人柄を短い時間でしっかり見抜き、膝の上にのったというのですから、すごいなぁと思います。膝の上にのるなんて、よほどの安心感がないとなかなかできることではありません。サクラちゃんは言葉ではなく、もっと根源的なところで人を感じる力があるんだと思います。
  サクラちゃんとコンノさんの二人に拍手!です。
  
  手で生地をさわるのがいやで、だんだんこんなふうになりました。

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 コンノさんとオリタさん

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 二人はどこで出会ったのでしょうね。膝に乗っかったところの写真がないのが残念です。

 

みんなでいい一日を作ること

 6月20日、パン教室。今日は始めて参加する二家族も加わって、いつものようにわいわい楽しいパン教室でした。昔、ABCパン教室の講師をやっていたという人もいて、スゴ技も見せてくれました。

 生地作りのスタート

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 スゴ技

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 ツジさんが初めて生地にさわりました。パンの販売部長をやりながら、手にべちゃっとくっつくパン生地にさわるのが嫌いでした。今日はどうしたわけかしっかりさわってこねていました。顔がこわばっていますが…

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パンをこねながらみんな笑顔になれるのがぷかぷかパン教室のいいところ

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今日初めて参加のサクラちゃんは手で生地をさわりたくなくて、腕でさわっていました。これもアリなのが、ぷかぷかパン教室。それぞれがそれぞれのやり方でパンにさわって楽しい時間を過ごせればいいな、と思っています。いい一日を作る、ただそれだけです。

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キヨちゃんは発酵のタイミングが来ても、せっかくこねたパン生地を手放したくなくて、みんなで説得。「これ、今から発酵させないとパンができないんだよ」「いや!」

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甘夏ジャム作り。ジュースを絞ります。

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パン教室を支える手

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この目がいい

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翔(かける)くんは初めての参加でこんなにがんばっていました。

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肉まんの具の計量はとてもシビア

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この笑顔がいい

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まだ焼けないかなぁ

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焼けた!

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いただきまーす

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 みなさん、お疲れ様でした。いい一日でしたね。みんなでいい一日を作ること、パン教室をやることの意味は、ここが一番大切なところかなと思います。

 

 

未来へつながる「しんごっち展」

 伸吾さんが亡くなって一年がたちます。お母さんにとっては本当に辛い日々だったと思います。その辛さの中で、お母さんはひと月ほど前、親子で辛い思いをしている人たちの安らぎの場所「横浜小児ホスピス」を立ち上げるお手伝いを始めました。

 余命宣告を受けながらも、なおもその中で子どもが夢を追い続けられるような、楽しい時間を過ごせるような、そんな環境を作りたい、というお母さんの思いは、伸吾さんの最後の日々を支えたお母さんの思いそのものだったと思います。私はそのことを伸吾さんのお見舞いに行く中で気づかせていただきました。

 いつも楽しいことを追い求めていた伸吾さん、いつもわくわくするような企画を密かに持っていた伸吾さん、それを最後まで支え続けたお母さん、人生の最後で何が大事なのかを、私はお二人から学ばせていただきました。

 お母さんがお手伝いをされている「横浜小児ホスピス」の立ち上げの趣意書を紹介したいと思います。ホームページのアドレスも載っていますので、ぜひのぞいてみてください。

 「しんごっち展」が、ただ単に伸吾さんの思い出話や、「いい絵だね」といった話に終わるのではなく、こういう未来への活動につながっていくといいなと思っています。人生の最後の最後まで楽しいこと、わくわくすることを追い求めた伸吾さんは、そのことの大切さを身をもって教えてくれました。お母さんの思いに共感できたのも、伸吾さんがそういう生き方を最後まで見せてくれたおかげです。それがなければ、人生の最後の時まで子どもが夢を追い続けられるような環境を作りたい、というお母さんの言葉は、実感として自分の中に落ちなかっただろうと思います。

 お母さんが「横浜小児ホスピス」の立ち上げのお手伝いを始めたのは、やはり伸吾さんの生き方がお母さんの背中を押したんだと思います。そしてそのお手伝いは、お母さん自身が悲しみに暮れる毎日から、一歩前に踏み出し、希望に向けて生き始めることだったのではないかと思います。

 伸吾さんは仕事の帰り、藤が丘の駅で見た夕焼けがきれいで、すぐに写真を撮り、お母さん宛に「今、夕焼けがきれいだよ」ってメールを送ったそうです。下の写真がそれです。今もどこかで前に向かって生きるメッセージをお母さんに送ってきているのかも知れませんね。

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横浜に小児ホスピスを創りたい

         認定NPO法人スマイルオブキッズ 代表理事 田川 尚登
   イギリスには地域住民の寄付で成り立っている小児ホスピスが現在52か所ありますが、日本ではまだ1か所、大阪に淀川キリスト教病院が運営する施設が存在しているだけです。
  この活動のきっかけですが、1997年幼稚園児であった私の娘(6歳)が頭痛や吐き気を訴えましたが、すぐに診断が出ず、3か所の小児科を経て総合病院で、神経の集まっている脳幹に腫瘍が見つかりました。その時点で余命半年を告げられました。
・・・宣告通りの6年半の一生でした。
   私にとってこの半年の時間に娘を通して大変意味のある経験をさせていただきました。脳腫瘍でも幼児期に発症する悪性の脳幹グリオーマは現在でも治療方法は無く死を待つだけなのです。よって余命時間の使い方が子どもにとっては重要になります。家族との楽しい時間を過ごすことが、また好きなことに時間を費すことが思い出づくりになります。病院で過ごすよりは免疫力が上がり、延命時間が延びるかもしれません。
   私たち家族も娘の意思に従って時間を過ごしてきましたが、娘との旅行後、病院で呼吸が止まってしまいました。呼吸器で一命は取り留めたものの脳死に向かっていきました。主治医や医療スタッフと協議を重ね、呼吸器を外す日にちを決めて関係者に看取られ旅立って行きました。
   それから5年後、彼女の生まれてきた意味がこの一生にあったのではないかと思い、病気や障害のある子どもとそのご家族の支援するためのNPOを立ち上げ、娘がお世話になったこども医療センター近くの病院OBたちと協力し、全国から難病の治療に来られる家族対象の宿泊施設「リラのいえ」を募金を募り、6年前にオープンできました。年間4500名の海外や国内のご家族に利用されています。
   私たちNPOの最終的な夢は家族支援の先に重篤な病気や障害を抱えている子どもの支援です。それは余命の時間などを宣告された子どもたちの生の充実を支援していくことです。決して死を待つまでの時間を過ごすということではなく、楽しい時間の支援をご家族と一緒に考え、共に過ごす「夢の我が家」なのです。子どもが抱く夢を叶えていく施設なのです。
   この夢に一歩近づくための支援が昨年NPOにありました。同じ夢を持っていた元看護師の石川好枝さんのご意志でした。彼女に残された遺産を小児ホスピスに使いたいという夢でした。娘からの体験と石川さんとのご縁で一歩踏み出すことになり、昨年8月横浜小児ホスピス施設準備委員会を発足しました。委員会のメンバーは、多くのホスピスには欠かすことができない専門的な方に参加していただいています。音楽の力を借り、今年1月23日に横浜にある県立音楽堂で旗揚げのチャリティーコンサートを皮切りに5月、7月、8月、12月と音楽家の協力を得たチャリティーコンサートを開催し、社会への広報活動と募金活動を行っていき、3年後に目標額が達成ができれば5年後に施設が開設できるのではないかと考えています。
   小児ホスピスが開設できれば、病院と在宅だけで過ごすのではなくデイサービスの提供と家族と共に安心して過ごせる宿泊、その子どもに合った夢プログラムを提供し、ご家族やきょうだいの精神的ケアなど負担を軽減することで、現在おかれている重篤な子どもたちとご家族のさらなる支援につながります。
   それぞれの子どもたちの生きた証を社会に伝えていきたい。医療が進み出産などで救われる命が増えている現在、命についてもっと真剣に考えていくプログラムを学校教育に取り入れ、このような子どもたちのミッションを生かしていけばもっと子ども達が夢を持ち、その夢が実現できる思いやりのある社会になるのではないでしょうか…。
   夢の一歩を踏み出すことができた石川好枝さんと娘のはるかさんに感謝する気持ちを忘れずに活動を続けていきたいと思います。
   つきましては、この活動に賛同して頂ける方々のお力をお借りすることで社会への周知、併せて募金のお願いをしております。
詳しくは「リラのいえ」を運営するNPO法人スマイルオブキッズのホームページに詳細を載せていますので、そちらをご覧ください。
 
ホームページ
 
 
 
★しんごっち展の会場でも『横浜小児ホスピス』建設への募金箱を置きます。

『ロはロボットのロ』稽古場

 オペラシアターこんにゃく座の出している「オペラの細道」に『ロはロボットのロ』の稽古場の様子が書かれていて、とても面白いので、紹介します。

 

 鄭(ちょん)さん(『ロはロボットのロ』の作者、演出家)の稽古場は高温多湿です。大量の汗と、笑い、叫び、そして涙。何回も何回も繰り返します。理屈は言わないし、言わせません。とにかく役者を動かす。ちょっとでも余裕を見せたが最後「はい、すんません、すんませんね、もっと箒振ってぇ!もっと足つかってぇ!」「演劇に省エネなしね!」「やっぱり芝居はアナログがいいねぇ」と大笑いして、無理難題を課します。

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 鄭さんの稽古場はどんどん変わっていきます。初演の時は「軽井沢に住んでいる作家の先生がこう書いてるけど…」と言いながら、稽古場でその人にあう台詞に代えていくのです。つまり、作家として台本を書いている鄭さんと、演出家として稽古場にいる鄭さんは別人になるらしいのです。毎日の稽古で常にその役者にあう新鮮さを追求していくのです。つまり、一瞬がおもしろくてもだめなのです。本当のおもしろさが追求されます。鄭さんの稽古場は約一ヶ月13時から21時までみっちりやります。鄭さんは決して休みません。

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 この春のシーズン、「ロはロボットのロ」の稽古と同時に、「ネズミの涙」チーム(鄭演出)、「ピノッキオ」チーム(伊藤多恵演出)が稽古しています。三つともに鄭さん、多恵さんが関わっているという恐ろしい状態。いやいやいや、三つとも萩京子作曲の作品です。萩さんも稽古場では音楽監督として大忙しです。

 というわけで、いつもは本公演のみの稽古場にいろいろなチームが入り乱れ、大変にぎやかなことになりました。キャストは微妙にダブルキャストですから、稽古も倍必要ですし、裏方スタッフにネズミ組が入っていたり、めちゃくちゃです。

 でも、大丈夫!鄭さんは逆境に強いのです!すごいものができる予定です。乞うご期待!

                               (岡原真弓) 

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 7月19日(日) 午後2時より、みどりアートパークホールで『ロはロボットのロ』の公演があります。チケットはカフェベーカリーぷかぷか(横浜市緑区霧ヶ丘3丁目25−2−203 電話045−921−0506)もしくはみどりアートパーク(横浜市緑区長津田二丁目1番3号 電話045−986−2411)

 子どもたちにオペラを・ゆめ基金は

http://pukapuka-pan.xsrv.jp/index.php?子どもたちにオペラを・ゆめ基金

 
 子どもたちにオペラをプレゼントする基金がまだまだ不足しています。ぜひご協力ください。

 え? 子どもたちにオペラをプレゼント? おもしろい! のった! という方は下記口座へ寄附を!。

 振替口座は 口座記号 00260-4  口座番号 97844

       加入者名 NPO法人ぷかぷか

 

 

「しんごっち展」やります。その2

 7月11日(土)から7月17日(金)まで、ぷかぷかカフェで「しんごっち展」をやります。昨年5月に脳腫瘍で亡くなった安井伸吾さんの絵画展です。

 お母さんは今、横浜で「小児ホスピス」を立ち上げる活動のお手伝いをなさっています。「余命何ヶ月」と宣告された子どもが、それでも夢を追い続けられるような、そして家族も安心して過ごせるような、そんな「横浜小児ホスピス」を立ち上げるお手伝いをしたいとおっしゃっています。それは伸吾さんと最後の日々を過ごした経験から来ているように思いました。「子どもが最後まで夢を追い続けられるような」という言葉は、まさに伸吾さんの生き方そのものだったように思います。

 私は伸吾さんのお見舞いに行く中で、お母さんの思いにふれることができました。当時の日記を再度載せ、「子どもが最後まで夢を追い続けられるような」場所を作ることの意味を考えてみたいと思います。 

 

2014年3月9日

 昨日(救急搬送の翌々日)の夕方、伸吾さんのお見舞いに行きました。

 伸吾さんは眠っている感じでしたが、声をかけると、うっすらと目を開けました。

 「伸吾さん、タカサキだよ、わかる?伸吾さんの描いた電車でストラップ作ったよ、ちょっと見て」

 というと、

「う、う〜ん」

と、ちらっと見ましたが、また目を閉じてしまいました。

「ねぇ、伸吾さん、このストラップ、伸吾さんの描いた電車で作ったんだよ。ちょっと見てよ」

また、うっすらと目を開け、ストラップを見てくれました。

「すっごくいいストラップだよ、この電車、伸吾さんが描いたんだよ。覚えてる?」

「う、おぼえてる」

といったような気がしましたが、よく聞き取れませんでした。

 一緒に行ったぷかぷかの女性スタッフ二人に交代。

 今度は私の時より目を開けた感じがしましたが、しばらくしてまた目を閉じてしまいました。

 

 木曜日に病院に行き、この状態だと、あと一週間か十日ですね、といわれ、連れて帰る覚悟を決めた、とお母さんはおっしゃっていました。「覚悟」というのは、こういうときにこそ使う、自分にナイフを突きつけるほどの言葉なんだと思いました。

 入院してもいいよ、といわれ、最後の最後まで迷いましたが、自分で最期は家で看取ると決めていたので、連れて帰ってきました、とひとことひとこと噛みしめるようにおっしゃっていました。

 

 お母さんが伸吾さんを家に連れて帰る理由を、伸吾さんのお見舞いに行って、少し納得することができました。

 お母さんのピアノの教え子さんたちが3人ほど介護に入っていて、交代で声をかけたり、お茶飲んだり、おしゃべりしていたりしていて、深刻な雰囲気はありませんでした。私も一緒にお茶を飲み、お菓子をごちそうになってきました。病院に入院していたら、たぶんこんな風にはいかないだろうと思います。

 訪問看護と在宅医療が毎日入り、夜中でも対応してくれるそうです。

 いつもと変わらない温かな家庭的雰囲気の中に伸吾さんはいました。少しずつ元気をなくしてはいますが、温かな雰囲気は、伸吾さんをしっかり支えているように思いました。

 病院を退院してから、調子のいい日は「東急5050系4000番台」のNゲージの模型をバックに入れ、お母さんの友人といっしょにレンタルレイアウト(街の模型の中に鉄道模型を走らせることができるようにレールを設置し、それを時間貸ししている施設)に行き、自分の模型を走らせていたそうです。街の模型の中を自分の電車が走るなんて、すっごく楽しいだろうなと思います。「すごいよ、すごいよ」って伸吾さんの興奮気味の声が聞こえてきそうです。

 病院に入院したままだと、こんなことはできなかったと思います。お母さんはこんないい時間を伸吾さんに持たせたくて、延命のための治療を打ち切り、家に連れて帰ったんだと、あらためて納得したのでした。

  大雪の日、インターコンチネンタルホテルで撮った写真をメールで送ってくれました。その頃から少しずつ悪くなっていたようですが、それでもメールで届いた伸吾さんの表情は、いつもの調子で

「今、すっごく楽しいよ」

って、いってるようでした。ホテルの窓から撮った写真もメールで送ってきたくらいですから、そのときのわくわくした気持ちを伝えたかったんだと思います。これもお母さんが伸吾さんにプレゼントしたすばらしい時間だったんだなぁ、と今思います。

 今はベッドで携帯を持つことも難しい状態ですが、それでも力を振り絞って携帯で何かを撮ろうとしていました、とおばあちゃんが話してくれました。伸吾さんってすごいなぁと思いました。私も年とって動けなくなっても、最後までぷかぷか日記を書き続けようと、伸吾さんの話を聞きながら思いました。

 

 伸吾さんは予断の許さない状態が続いています。でも、みんなに囲まれ、温かな雰囲気の中で、いい時間を過ごしているように思います。  

 

                           (つづく)

 

 

 

 

 

 

  

 

11秒の動画に、人生の楽しみ方が…

 7月11日(土)から7月17日(金)、ぷかぷかカフェで「しんごっち展」をやるのですが、そのしんごっちが作った動画がお母さんから送られてきました。わずか11秒の動画です。わずか11秒ですが、しんごっちがどういう人生を生きていたのかがくっきりとわかる動画です。

www.you

tube.com

 NHKの「ピタゴラスイッチ」はとても面白い番組です。でも、自分であの仕組みを作る人はまれです。「あっ、おもしろい!」と思うことと、「自分で作ってみよう」と思うこととの間には、なかなか越えられない壁があります。それをしんごっちは、いとも簡単に飛び越えます。

 おもしろい、と思うことは、とにかく自分でやってみる、ことがしんごっちの人生の楽しみ方。やってみるだけでなく、それを動画に撮り、自分で「ピタゴラスイッチ」というアナウンスまで入れています。

 ピタゴラスイッチは動くことが楽しいので、完成後、作ったものの記録として動画に撮る人は結構いるのかも知れません。でもそこに「ピタゴラスイッチ」と自分でアナウンスを入れる、というのは、作ったものの記録を一つの「作品」にし、それを楽しもう、という意思が感じられます。ビー玉が転がり、最後に「ピタゴラスイッチ」のアナウンスを入れる、というシナリオがあったのでしょう。これは考えただけでもわくわくするような企画です。

 シナリオがどの段階でできあがったのかは知る由もありません。ピタゴラスイッチを作る前からあったのか、それができてから、あ、こんな動画作ったらもっとおもしろい、と思ったのか。

 いずれにしても、ピタゴラスイッチを考える楽しさ、それを作る楽しさ、完成したものを動画に撮る楽しさ、最後にアナウンスを入れ、作品に仕上げる楽しさ、そしてそれを見る楽しさ、誰かに見せる楽しさ。

 わずか11秒の動画に、しんごっちの人生の楽しみ方が凝縮されているように思うのです。

 

ぷかぷかさんたちが街を耕し続けた結果

  自閉症の4歳の弟に心ない言葉を投げつけた小学生に6歳の兄がすばらしい言葉を投げ返した話がFacebookで流れてきました。

 http://buzz-media.net/moving/5237/

 

 障がいのある人たちは、やはりまわりの世界を豊かにしているのだと思います。だからわずか6歳のお兄ちゃんがこんなすてきな言葉を口にできたのだと思います。大人以上にしっかりこの世界を見ているように思いました。 

 

 ぷかぷかは障がいのある人たちと一緒に生きていきたいと思って始めたお店です。ただただ彼らの人としての魅力に惚れ込んだ、という単純な理由が発端です。でも、ぷかぷかの運営母体となるNPO法人ぷかぷかの設立目的には、そんなことは書けませんから、「障がいのある人たちの社会的生きにくさを解消する」という言葉を持ってきました。街の中にお店を作ることで、街の人たちと彼らとの出会いの機会を作る、というわけです。

 5年たった今、ぷかぷかは「彼らの社会的生きにくさを解消する」といったことだけでなく、何よりも「街の人たちを豊かにしている」ということに気がつきました。一番はっきりそれを思ったのは映画『ぷかぷか』の上映会での感想でした。

 

pukapuka-pan.hatenablog.com

 

 ぷかぷかが街にあることで街が豊かになるって、こんなことは設立当初、全く予想していませんでした。これこそぷかぷかさんたちが毎日ぷかぷかで働くことで街を耕し続けた結果だろうと思います。彼らにあらためて拍手!です。

 

 6歳のお兄ちゃんが発したような言葉を私たちも持ちたいと思うのです。みんながそんな言葉を自分のものにすれば、社会はもっともっとすてきになると思います。

 

歌のワークショップ やりました。

 オペラシアターこんにゃく座の歌役者井村タカオさん、飯野薫さん、ピアニストの湯田亜希さんをお招きして歌のワークショップをやりました。参加したのは地域の大人の方たちや子どもたち、それにぷかぷかのメンバーさん、総勢30人くらいでした。

 最初に井村さんと飯野さんが『僕たちのオペラハウス』を歌いました。舞台に立って歌っているのを聞くのと違って、リハーサル室という狭い部屋で聞くと、やっぱりすごい迫力でした。ピアノも前日の夜調律をやってもらったせいか、ものすごくきれいな音でした。なんといってもピアニストがすばらしくよかったです。7月19日の本番公演の時も同じピアニストが弾きます。

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 今まで書き忘れていましたが、こんにゃく座のオペラはピアノ一台で進行していきます。ピアノ一台でこれだけ多彩な世界を表現できるということです。うれしい時も哀しい時も、火事場の緊張感も、人々の安堵感も、未来への希望もすべてピアノ一台で表現します。

 

 オペラシアターこんにゃく座の由来でもある「こんにゃく体操」をみんなでやりました。硬くなった身体をやわらかくほぐしていきます。

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 オペラは台詞が歌になっています。こんにゃく座の初期の作品『あまんじゃくとうりこひめ』を使って、台詞でお話を進行した場合とそれを歌にした場合の違いを実際にやってもらいました。

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 歌で表現すると作品の肌触り、広がり、深さといったものが、台詞だけの場合と全く違っていて、こんにゃく座がオペラにこだわって作品を創り続けている理由が少し見えた気がしました。

 これに引き続いて、ちょっとした挨拶、自己紹介を歌でやってみる、というのをみんなでやりました。このあたりになるとぷかぷかのメンバーさんの独断場という感じでした。

 ふだんはおとなしいのぼさんはすばらしいバリトンで自己紹介しました。

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 タクミさんはどうしても一人でやりたいと一人でがんばっていました。

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 ヨッシーと辻さんは打ち合わせもほとんどなしで、どんどんお話と歌が出てくる感じでした。すばらしいクリエイターです。

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 テトのパン屋でパンを作っているところの歌です。

www.youtube.com

 ここは鳴り物を鳴らしながらみんなで歌う予定でしたが、歌がちょっとむつかしいので、今回は手拍子だけでした。次回はぜひみんなでいっしょに歌いたいと思います。

 

 『ココのアリア』は飯野薫さんがソロを聴かせてくれました。心にしみる歌でした。次回はぜひみんなで歌いたいと思っています。

 

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 最後に『ロはロボットのロ』のテーマソングでもある『テトのパンは あ』をみんなで歌いました。これは次回のワークショップも入れてぜひみんなで覚えたい歌です。

www.youtube.com

 

 次回の「歌のワークショップ」は 7月4日(土)です。午後1時〜3時、みどりアートパークリハーサル室です。申し込みはpukapuka@ked.biglobe.ne.jp もしくは045-453-8511 NPO法人ぷかぷか事務所。

♪ ふんわりやわらかな白い生地のパン

 6月13日(土) 歌のワークショップではパン工場の歌を鳴り物を鳴らしながら歌役者さんといっしょに楽しく歌います。(午後1時〜3時、みどりアートパークリハーサル室)

 

ママモンロー  仕事はじめ(台詞)
              ふんわりやわらかな白い生地のパンはできたかい?
テト            はい、ママモンロー。ふんわりやわらかな白い生地のパンに
                くるみをたっぷりかけました。
ママモンロー   なんて香ばしい匂い。
パンロボたち    すっぱくて甘いクランベリーパン
                  紫色のブルーベリーパン
                  かりかり焦げた黒砂糖パン
                  はちみつパン ミルクパン コーンパン
                  ふんわりやわらかな白い生地のパンがパンパンできあがり

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 すっごく楽しい歌です。こんにゃく座のオペラがいっぺんに好きになります。

 歌のワークショップ、まだ少し空きがありますので、どうぞ来てください。鳴り物を持ってきてください。

 問い合わせ pukapuka@ked.biglobe.ne.jp     045-453-8511 NPO法人ぷかぷか事務所

 

 

しんごっち展やります

 昨年5月に脳腫瘍のため亡くなった「しんごっち」こと、安井伸吾さんの絵の展覧会をやります。期間は7月11日(土)〜7月17日(金)、会場は「ぷかぷかカフェ」です。

 今日、お母さんとお会いして、いろいろ打ち合わせしました。しんごっちが使っていたiphoneを持ってきて、中に残されている画像を見せてくれました。

 電車とか、食事とか、風景とか、いろいろあって、しばし思い出話にふけったのですが、びっくりするような動画がありました。

 何かが入っている箱を開けていく動画です。パッケージが少しずつほどかれて、何が出てくるんだろう、と見ている方がわくわくするような動画です。ところがこの動画、よく見ると、病院のベッドで撮ったものでした。しんごっちの足が少し写っていて、足首に病院のラベル(患者番号を書き込んだもの)が見えました。何のことはない、脳腫瘍の大手術を終え、まだ入院している頃に撮ったものでした。

 脳腫瘍は完全には取りきれず、多少余命が伸びた、という時期です。そんな状況に自分がおかれたら、精神的にかなり追い込まれ、何かをする気力があるだろうかと思ってしまうのですが、しんごっちは狭いベッドの上で動画を撮ったのです。しかも見る人がわくわくするような動画です。

 私なら、多分自分を保つのに精一杯になるだろうと思われる状況の中で、なおも生きる楽しさを見つけ、しかも人を喜ばせようとしているのですから、本当にびっくりしました。

 

 しんごっちは、生きる楽しさを、めいっぱい追い求めた人だと思っています。何度かブログに書きましたが、給料が出ると横浜川崎間の1区間だけのグリーン車の切符を買い、8分間の至福の旅を味わっていました。給料のほぼ十分の一を、その8分間のために使っていました。しんごっちの生きる美学のようなものを感じました。グリーン車ですから、さぞかし豪華な旅をするのかと思っていたら、テーブルの上にはコンビニで買ったおにぎりとお茶のペットボトルが置いてあって、実に慎ましい旅でした。そんな旅に大満足している自分を撮った動画もありました。

 しんごっちのiphoneには私の好きなジオラマの写真が入っています。バスと、人と、家。妙にリアルで、それでいて、これはうそだよ、っていってるような、実にうまい写真です。模型をどういう角度で撮ればこういい写真が撮れるかを計算し尽くしたような写真です。しかもこれをiphoneで撮ったというのですから、すごい!としか言いようがありません。

 家で作ったジオラマで、お母さんに言わせると、ものすごくちゃっちいジオラマだそうです。でもしんごっちの撮った写真には、わくわくするような物語があります。その、ちゃっちいジオラマにも、なおも楽しい物語を見つけ出し、それを写真に表現したしんごっちは、本当に生きる喜びを大切にした人だと思います。

 今度計画している「しんごっち展」は、ですから、ただ単に絵の展覧会ではなく、「重度知的障害者」と言われながらも、私たちの何倍も濃い時間を生き抜いた、しんごっちの生き方が感じられるような展覧会にしたいと思っています。とてもむつかしい企画ですが、しんごっちの生き方に少しでも近づきたくて、精一杯トライしたいと思います。

 

 

 

 

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